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番外.欲張り令嬢の記録⑮

もはやどっちが本編かわからない…

コツコツ。

部屋の前を通る足音を、息をひそめながら聞く。

決して音を立てないよう、居るのを気づかれないよう、メイドと共に身じろぎもせず通り過ぎるのを待つ。

やがてアイビーが通り過ぎると、部屋にいる全員がホッと息をつく。

「ふぅ…」

「行きましたね」

「えぇ…」

父にアイビーのねだり癖が発覚した後は大変だった。

母は精神的に不安定になり、頻繁にヒステリーを起こしてアイビーと取っ組み合いをしたり、暴れて部屋中の物を壊したり、「死にたい」と泣き叫んだりするようになった。

その度に私やメイドが宥めて落ち着かせるが、正直こちらも泣きたいし暴れたい。

アイビーは相変わらずで、父の留守を狙っては母の元へ行き物を奪おうとする。大抵は「父に言いつける」とメイドに言われて追い返されるが、そうするとこちらにやって来て、愚痴をこぼしていくのだ。

勉強中だろうが、お構いなしで押しかけてきて迷惑だが「ちょっとだけだし、いいじゃない」と言って押し切ってくる。

父に訴えても「実際愚痴をこぼすだけだろう。何か取られたわけじゃないし、それくらいいいじゃないか」と取り合ってもらえない。

確かに物はとられないが、こちらにも予定があるのだ。押しかけて居座られるのは困る。

確かに最初は10分ほどの物だったが、だんだん伸びて今では3~4時間居座っていく。

追い返そうとすると「人が苦しんでるのに聞いてくれないなんて酷い!」「最初はいいって言ったじゃない嘘つき!」と言って暴れて物を壊したり、父に泣きついてこちらが叱られる。

きちんと相手をしなかったり、嫌そうな顔や態度をすると「ちゃんと話を聞いてよ!」と癇癪を起こして暴れたり、「人に対してその態度は何だ、慰謝料払え。なければ借金してでも金を作れ」と言ってくる。

考えるだけで胃が痛くなってきた…メイドに頼んでいつもの薬を貰う。

「はぁ…」

「薬もだいぶ減りましたね、また先生に貰ってきましょうか?」

メイドが心配そうにこちらを伺う。

「えぇお願い」

最近では胃痛だけでなく、呼吸ができなくなる時もあった。医師からは「原因を取り除かない限り、これ以上どうしようもない」と言われたが、アイビーと縁を切れない以上現状維持しかない。



「アイビーの縁談だが、また断られた」

「そうですか」

翌日父に呼び出されて行くと、開口1番言われた。

内心そうだろうなと思う。

あの後父は自分の教育が間違っていた事を内心認めてはいるようだが、自尊心に障るらしく決して口に出して認めることはなかった。「ただアイビーの教育が悪かった」とだけ言い、アイビーを他家に嫁がせようとしたが、これも上手くいかなかった…アイビーが「自分を追い出すのか!」と癇癪を起こしたのである。

仕方なく婚約だけでもと相手を探したが、ここでもアイビーが口をはさんできた。

曰く公爵令嬢で才色兼備な自分の相手なら最低でも侯爵以上で、資産も容姿もそれなりでないと嫌だと言って来たのだ。

そんなできた相手が顔と身分だけの素行の悪い令嬢を引き取るものか。

この前良い機会だからとアイビーが今まで社交界でやって来た事を伝えたのだが、私と母が上手く収めたせいで騒ぎになっていないから、普通に縁談が成立すると思っている。

(バカバカしい)

騒動にはなってなくても、水面下で噂にはなっている。

もし成立するとしたら、女性の家族をもたない家か噂が耳に入ってない家だが、そんな家はまずないし、仮にあったとしてもメイドは必ずいる。運よく成立したとしても、すぐ本性が出て破棄されるだろう。

「そうですか、じゃない。どうすればいいのだ、このままでは…」

「修道院に入れるしかないですね」

気の毒だが他に手はない。寄付金をたっぷりつければ引き受けるだろう。

もちろん気の毒というのは相手の修道院の事だ。


「しかしそれはアイビーが可哀想だ…まだ若いのに」

机の上で頭を抱えていた父が顔を上げて言う。

「では他に何か良い案が?」

「………」

私の言葉に父が黙りこむ。

図星をさされたり反論できないと黙りこむのは父の癖だ。

「良い案がない以上仕方ありませんね。引き取ってくれる修道院を…」

「ま、待て。アイビーを再教育しよう、そうすれば…」

慌てて父が提案する。

(アレが再教育で直るものか)

そもそも本人がやるかどうか。

内心そう思うがもう反論するのも疲れたので、態度に出さず了承する。

「分かりました」

「よしそうしよう。アイビーが更生するまで苦労するだろうが、そこはお前が大人になって我慢しなさい。フォローは頼んだぞ」

「…可能な限りは。では失礼します」

そう言って退室する。

内心ため息をつきながら自室には戻らず、そのまま王宮の書庫へ向かう。

もはや自室も安全な場所でなく、今はとにかく1人になりたかった。



そこで私は天使に会った





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