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番外.欲張り令嬢の記録⑨

たくさんブックマークありがとうございます<(_ _)>長めです。

夕食は自室で取り、大分夜も更けてそろそろ寝ようかと思った頃父がやって来た。

「来たぞ、調子はどうだ」

部屋に入るなり、横柄な態度でベッドの側の椅子に腰かける。

その態度に少し苛立つが、ここからの話は冷静にならなければいけない。何とか堪える。

「お陰様で生死の境を彷徨わせていただきました」

私の皮肉に父が少し眉をしかめたが、反論はない。どうやら少しは悪いと思ってるようだ。

夜遅くに来たのも私に会うのが気まずく、人目が無い時間を選んだようだ。

「お呼び立てして申し訳ありません、見ての通りまだベッドから降りられませんので」

「そのようだな。まぁ助かったのは良かった。ところで話というのは…」

「もちろん今回の事です。お父様はどうお考えなのですか」

「今回は悪かったな。だがアイビーも反省しているようだし許してやりなさい」

「それだけですか」

「何が言いたい」

「私は真実を言ったにもかかわらず、一方的に殴られ薄着の状態で水をかけられ、雪空の中放り出されて死にかけたのですよ?それに対して花束1つとそんな言葉で済ませるおつもりですか、と言っているのです」

指摘すると父が気まずそうにそっぽを向いた。

「ならばどうすれば気が済むのだ」

「まず1つ目、私の部屋に鍵をつける許可を下さい。また盗まれてはたまりませんから」

そう言うと父が渋面で向き直る。

「アイビーも反省した、もうこんなことは起きないだろう。根に持ってないで許してやりなさい」

「…お父様、周りをよく見渡して下さい」

私の言葉に父が不可解そうにしながらも部屋を見渡す。

「……ずいぶん物が少ないな。部屋に飾ってあった絵画もあったはずだが、どうしたんだ?」

「アイビーが私が臥せっている間に「お姉様のせいで怒られた慰謝料だ」と持って行った結果です。あの子は少しも反省してません、また同じことを繰り返すでしょう」

私が言うと父が怒りで顔を歪める。

「何!?アイビーの奴め、1度ならず2度までも親の顔に泥を塗りおって!分かった許可しよう」

「ありがとうございます。それで2つ目ですが…」

「まだあるのか」

「今のは今後の対応策で当然の処置です。それで2つ目、今回の詫びとして王宮の書庫に出入りする許可証を下さい、そして皆の前で『次期当主にふさわしい知識を身に着ける為』と宣言して下さい」

「何!?」

「ですから私が次期当主だと大勢の前で宣言して下さいと言いました」

私の言葉に父が当惑する。

「そんな事をしなくてもお前が次期当主だ。アイビーに務まらないのは分かりきってるし、次期当主としての教育もお前にのみ受けさせている」

「ですがハッキリ周囲に宣言した事は1度もありませんね。…良い機会だから言いますが、社交界でお父様が何と言われてるかご存知ですか?」

「…何だ?」

「『公爵はアイビー嬢を溺愛するあまり傀儡になっている』『次期公爵はアイビー嬢だ』『真の公爵当主はアイビー嬢だ』」

「何だと!」

父がいきり立つ。

「夜も遅いので大声を出さないで下さい」

注意すると父も渋々椅子に座り直す。

「本当なのか?そんな話聞いたことないぞ」

「本人に向かって『娘の傀儡だ』なんて言う方はいません、でも『娘を溺愛している』とか『娘に甘い』位は言われてるのではありませんか?」

「むぅ…」

私の言葉に父も考えこむ。心当たりがあるようだ。

実は半分は嘘だ。

実際の噂は「公爵はアイビー嬢を溺愛している」「次期当主はアイビー嬢かもしれない」だ。

父にはこの際ハッキリとさせて貰いたいし、この先もアイビーは必ず何か問題を起こすだろう。屋敷を出ることが叶わないなら、せめて可能な限り離れていたい。

誇張しているがあながち外れてもいないし、バレないだろう。

「分かった。快気祝いのパーティを開く。その時に快気祝いとして皆の前で贈ろう」

「はい、あとその際アイビーが許可証をねだっても断固として断って下さい」

「もちろんだ。最近アイビーは我儘が目に余る、ここらでどちらが上かはっきりさせねば」

「ありがとうございます」

しおらしく頭を下げると父が立ち上がった。

「では話は終わりだな。私はもう行く、まだ本調子ではないのだからゆっくり休みなさい」

「はいお休みなさいませ」

「あぁお休み」

そうして父は部屋を出た。



一月後、私は回復し、それに合わせて快気祝いのパーティが行われることになった。

身内だけ集めたささやかなガーデンパーティだが、付き合いのある貴族も何人か来ており、次期当主をハッキリさせるには充分だった。

「悪いわねぇ、お姉様」

いつの間にかアイビーが横に来てニヤニヤと笑っている。

「何の事かしら?」

「今日のパーティは私も出るから。お姉様の快気祝いのパーティなのに、私が目立っちゃうでしょう?きっと会場中が私に注目して、お姉様には見向きもしないでしょうから。まぁ私はこんなに可愛いし、仕方ないわねぇ。恨むなら陰気な性格と地味に産んだお母様を恨んでね」

言いたい事だけ言ってさっさと会場に入っていく。

(相変わらずおめでたい頭と性格をしてること)

内心嘲笑いながら会場に入って行った。


「エリザベス様ご回復おめでとうございます」

「お元気になられて本当に良かったですわ」

「ありがとうございます」

遠縁や付き合いのある方達と代わる代わる挨拶を受ける。

一段落したところで父が許可証を渡してくる。

「エリザベス、私から快気祝いだ。前に言っていた王宮書庫の閲覧許可証だ。」

「ありがとうございます」

一礼して受け取る。

「これからも次期当主として励みなさい」

「はい」

父と私のやり取りに招待客がざわつく。

「公爵がエリザベス嬢を次期当主と言ったぞ」

「やはり次期当主はエリザベス嬢か」

「アイビー嬢じゃなかったのね」

周囲の反応を小気味よく見ながら微笑んでいると、離れた場所で取り巻き達と一緒にいたアイビーが駆け寄って来た。

「お姉様ばかり狡いわ!お父様私にも頂戴!」

アイビーの言葉に父も私も顔を顰める。

「アイビー、これはエリザベスの快気祝いだ。そもそも許可証の意味を分かっているのか?」

父の言葉にアイビーは能天気に返す。

「もちろんわかってるわ!それを持ってれば誰でもお城に入れるんでしょう?私もお城に行ってみたいわぁ。お父様がくれないならお姉様のをちょうだい!」

(やっぱりわかってない)

頭が痛い。

王宮に誰でも入れるなら警護の意味が無い、そのための許可証だ。いわば「入城しても問題ない人物である」という保証でもある。当然書面には私の名前が書かれており、私以外は使えない。新たに貰うにしてもアイビーが「入城しても問題ない人物」になるなど、太陽が西から昇るくらいあり得ない。

「アイビー、これは私専用の許可証だからあなたにあげても使えないわよ」

そう言うとプクッと頬を膨らませて言う。

「じゃあお姉様について行くわ!それならいいでしょう。」

「同行は許されないわ。第一あなたが城に行って何をするというの?本に興味などないでしょう?」

「もちろんないわ、あんな古臭くて退屈な物。でもお城に行けるなら行ってみたいわ、入ればこっちのものだもの。あちこち見てみたいわ、もしかしたら王子様に会って見染められちゃうかも、キャッ!」

そこまで言うと照れたように両手で顔を隠す。

はぁとため息をつく。

毎度の事ながら馬鹿すぎて会話する気力がどんどん無くなっていく…しかし止めなければアイビーが問題を起こした時、我が家の責任になるのだ。

するとさっきから黙っていた父が口をはさんできた。

「いい加減にしないかアイビー、王城は関係者と「入っても問題ない」と認められた者以外立ち入り禁止だ。仮に入れたとして問題が起きたらどうするつもりだ」

(仮にどころか入ったら必ず問題を起こすだろう)

なんせ王城だ。王族や上級貴族、場合によっては他国の王族貴族もいる…人の物に目が無く、皆が自分の思い通りに動いて当然と思ってるアイビーにとっては、絶好の狩場だ。

「その時はお姉様が責任を取ればいいわ、だって姉なんだもの。妹を助けるのは当然でしょう?」

「はぁ?」

思わず声に怒りがこもる。

(これ以上アイビーの尻拭いなど冗談じゃない!)

招待客達もあまりの言い分に唖然としている。

しかし私が口を開くより父の方が早かった。

「いい加減にしろ!!」

父が拳でアイビーを殴った。

「何度親に恥をかかせれば気が済むのだ!次期当主のエリザベスが王城に通って研鑽を重ねるのは、当然の事で狡いとかいう問題ではない!当主は私、次期当主はエリザベスでお前はただの公爵令嬢だ、立場をわきまえろ!それで不満があるというなら出ていけ、当主に従えないものなど必要ない!!」

会場中が静まり返った。

私もアイビーも客たちも身じろぎも出来ず、父を見ていた。

ただ父の荒い息だけが聞こえた。

「う…」

やがてアイビーが泣き出した。

「酷いわお父様、いつもいつもお姉様ばかりひいきして~~」

ひたすらわんわんと泣き続ける妹。

ここまで来てもまだ自分が悪いと思わず、悲劇のヒロインぶるとは大した頭と面の皮だ。


さすがに父もウンザリした顔で使用人にアイビーを部屋に戻させた。






本編より長くなりそう…

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