番外.欲張り令嬢の記録⑧
ブックマークありがとうございます。一気に減ってちょっとメゲてたので励みになります(*´Д`)
目が覚めると自室のベッドの上だった。
「エリザベス!目が覚めたのね、良かった」
「お嬢様お気が付かれたのですね」
横を向くとベッドの側で母と私付きのメイドが付き添っていた。
「私は…?」
確か父に殴られた後、外に放り出された筈だ。
身体が酷く重い。頭もボンヤリする。
「あなたは一晩中外に出された後、高熱を出して一週間ずっと寝こんでたのよ」
「お医者様からも「覚悟した方がいい」と言われて、ずっと心配してたんですよ」
どうやら私は生死の境をさまよっていたようだ。
起き上がろうとしたが、体が重くて動かない。首がわずかに上がっただけだった。
「無理をしちゃだめよ、もう少し寝てなさい」
母の言葉に従って再び瞼を閉じた。
次に目が覚めたのは翌日の昼だった。
「お嬢様お気が付かれましたか、起きられます?」
今度は母はおらずマリー1人だった。
「えぇ大丈夫よ」
今度は体が動かせる。とはいえ本調子でないのでゆっくり起き上がりながら聞く。
「お母様は?」
「昨日お嬢様が気が付かれたので、一息つかれてお部屋に戻られました」
「そう」
起き上がって何気に部屋を見渡すとずいぶん物が減っていた。
「…ずいぶん物が減ってるわね」
マリーが気まずそうに眼をそらす。
「私が倒れた後何があったか詳しく教えて頂戴」
「…はい」
そうして聞き出した内容に私は眩暈がした。
翌朝熱を出して倒れてる私を使用人が発見し、屋敷中大騒ぎになった。
さすがの父も慌てて医者を呼んだが、その医者から「覚悟した方がいい」と言われ父もアイビーも顔色を変えた。さらに医者から「痣や傷がいくつもある、虐待があったのではないか」と問われて父は「ちょっとした躾だ、妹を泥棒呼ばわりするからだ」と開き直り、アイビーは「こんな大ごとになるとは思わなかった、ちょっと貰っただけだ」と動転して自ら盗みを告白した。それを聞いた父が激怒しその場でアイビーを殴った後「エリザベスが全快するまで部屋から出るな」と謹慎を言い渡した。
が、アイビーがそれで反省するはずもなく、3日経って私が峠を越えたと聞くと「見舞いに行きたい」と言って許可をとり、私の部屋に押しかけて「お姉様が軟弱でうっかり死にかけたせいで私がお父様に怒られた、慰謝料として貰っていく」と部屋の中の物をごっそり持って行ったそうだ。それも1度でなく見舞いと称して目ぼしい物が無くなるまでやって来た。そして父も私の部屋に日参するアイビーの様子だけ見て「反省しているようだから」と謹慎を解き、結局アイビーの罰は父に一発殴られるのと3日の謹慎だけで終わった。それだけでなくアイビーの取り巻き達も私が危なかった時「どうせ助からないんだから、死人に物なんて不要だろ」「次期当主の側近の自分達に逆らったらアイビー様に言いつけて酷い目に合わせるぞ」と言って私の物を持ち去ったそうだ。
そこまで聞いて私は嗤いが出てきた。
「事実を訴えた被害者の私が散々殴られて薄着で放り出されて死にかけて、盗みを働いた加害者のアイビーがちょっと殴られて謹慎3日だけとはね」
つくづく人を馬鹿にした話だ。
「お嬢様申し訳ありません、私達がアイビー様達をを止められなかったばっかりに…今からでも旦那様に訴えて取り返してもらいましょうか?」
マリーの言葉に少し考える。
「…アイビーに謹慎を命じた後お父様はどうしてたの?」
「…お仕事が忙しいからと執務室に閉じこもっておいでです」
マリーが言うには当初「アイビーがすべて悪い」と開き直ってたが、母を始め屋敷中の人間が無言で非難の眼差しと冷淡な対応をしていた為、さすがに後ろめたいのか「仕事が忙しい」と称して執務室に篭もっているらしい。
「………」
無言で少し考える。
「どうしますかお嬢様?」
「アイビーの件は私から折を見て言うわ」
「分かりました」
ちょっとがっかりした顔でマリーが答える。
いつものように泣き寝入りすると思ったのだろう。
(冗談じゃない)
ここまでされて誰が泣き寝入りなどするものか、逆に利用して思い知らせてやる。
そう決意してるとマリーが何か言いたそうにしてるのに気づいた。
「どうしたの、何か聞きたい事でも?」
尋ねると少し迷った後口を開いた。
「あの、本当にアイビー様が次期当主になってしまうんでしょうか?前々から使用人たちの間でどちらが当主になるのか問題になっているのですが…」
「あぁ」
マリーが言ってるのは食事の際の席順の事だろう。
貴族の食卓は通常当主が上座に座り、当主の左側から正妻、側室、右側が次期当主、その他の兄弟達と序列順に座っていくのが慣例だ。数年前までは私が父の隣だったがアイビーが強請った結果、現在その位置はアイビーが座り、私はアイビーの下座になっている。日頃の父の態度もあり、アイビーが当主になってしまうんじゃないかと皆不安になっているのだろう。
「そうね。それも今回ハッキリさせましょう。心配しないで頂戴」
そう言うとマリーもホッとした顔をする。
そこに部屋がノックされ母と父付きのメイドが入って来た。
「エリザベス、起き上がって大丈夫なの?具合は平気?」
入るなり母が心配してくる。
「大丈夫です、ありがとうお母様。それでその花束は何?」
母に笑顔で返すと父付きのメイドの方に目をやる。
「旦那様からお嬢様への回復祝いです」
(なるほど回復祝いという名の謝罪の品か)
あくまで謝る気はなく、花束を贈ってうやむやにしようという事か。
メイドが花束を差し出してくるが、私は受け取らなかった。
「エリザベス?」
母が不思議そうな顔をする。
「そんな不愉快な物いりません。父には話があるから私の部屋まで来るよう伝えて頂戴、私から来いと言うようだったら、「誰かさんのお陰で体調が完全じゃないから」と伝えて頂戴」
「分かりました」
メイドが花束を持ったまま一礼して部屋を出ていく。
それを見送ると母が不安そうに声をかけてくる。
「ねぇエリザベス貴方の気持ちは分かるけど、どうか穏便にしてちょうだい。お父様を怒らせて追い出されたら…」
その言葉に少し苛立ちながら母に向き直る。
「お母様私は死にかけたんですよ?怒って当然だと思いますが」
「それは分かってるけど、言ってもお父様とアイビーには言っても通じないから貴方が…」
「それは分かってます!」
母の言葉を遮る。
母の言いたい事も気持ちも分かる、だが少しくらいは怒ったり反撃しても許される筈だ。
母が私を愛してくれてるのは確かだし波風立てたくない気持ちも分かるが、いつも私の気持ちを後回しにしてくるのが今は酷く苛立つ。
「でも今回は少しは反省してもらわないと困ります!ご心配なさらずとも引き際は弁えてます、大事にはしません」
そう言うと母は少しホッとした顔をした。
「そう…それならいいわ。申し訳ないけどよろしくね」
「はい…疲れたのでもう休んでいいですか?」
「そうねごめんなさい。ゆっくり休んで頂戴」
そう言って母は退室していった。
ちょっとだけざまぁ。令嬢ちょっと反抗期。




