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番外.欲張り令嬢の記録②

「はぁ…」

ため息をつく。

5歳の誕生日以降、私の誕生日は私経由でのアイビーへのプレゼント贈呈日になった。部屋の飾りも用意される料理も全てアイビーのための物。文句を言えば父に「大人げない」と殴られ、「私の誕生日じゃなくてアイビーのプレゼント贈呈日でしょう」と皮肉を言えばアイビーが「まるで私がお姉様の物を取ってるみたいじゃない、酷い!」とヒステリーを起こし、「妹を虐めるな!」とやはり父に殴られる…昔は楽しかった誕生日が今ではすっかり憂鬱だ。

「どうしたのエリザベス。ため息をついて」

母がベッドの上から心配そうに声をかける。

1か月後に控えた誕生日の準備で少しずつ屋敷内が慌ただしくなってきたが、それを見るのが嫌で母の部屋に逃げこんだ。

ベッドの傍に座りこんだまま母を見上げる。

「もうすぐ私の誕生日だから…」

「楽しみで待ちきれないのかしら?」

母が楽しそうに言う。

「私の誕生日なんて名ばかりで実際はアイビーのプレゼント贈呈日でしょう」

そう言うと母が顔を曇らせた。

「ごめんなさい…何もできなくて」

「仕方ありません、この家で父に逆らえるものはいませんから…お母様私は生まれてきた意味があったのでしょうか?それともアイビーに奪われるのが私の生まれてきた意味なのでしょうか?」

俯きながら弱音を吐く。

父もアイビーも渡さない私が悪い、物に執着する私が強欲だという。

そうかもしれない私が悪いのかもしれないと思う自分と、そんなことない人の物を奪うアイビーが悪いと思う自分がいてどちらが正しいのかわからなくなる。

昔父も母も「誕生日は生まれてきた事を感謝する日、無事に生まれた事を喜び祝う日」だと言っていた…では祝ってもらえない自分は誕生を望まれていないのではないか?生まれてくる意味が無いのではないか?そんな風に思えてならない。

「バカなこと言うんじゃありません!私は貴方が生まれてきてくれてとても嬉しく思ってるわ」

「すみません…」

泣きそうな母の顔を見て反省する。

「全くアイビーは数週間後には自分の誕生日だというのに、エリザベスの物までとってどうしようというのかしら……そうだわ!」

突然母が何かを閃いたように顔を輝かせる。

「お母様?」

「良い事を思いついたわ、今夜の晩餐の時に言うわね」

上機嫌になった母に首をかしげながらも部屋を後にした。



「あなた1か月後のエリザベスの誕生日ですけど、今年はアイビーと合同でやってみてはどうでしょうか?」

「何?」

「「お母様?」」

晩餐の時に母が思いがけない提案をしてきた。

「昨年までは内輪で祝ってましたが、今年から他家の方達をお呼びするでしょう?でも2人は日が近いですし続けざまでは準備もいらっしゃる方達も大変でしょう?だからまとめてやってみてはいかがでしょう?」

「フム確かにそうだな、2人はどうだ」

父が乗り気になる。

確かに分家や交流のある方の中には離れた領地に暮らす方もいる。私とアイビーの誕生日の為に行ったり来たり、もしくは自領を離れて我が家の近くに留まるというのもかなりの負担だし、5大家の招待を無視するなど論外だ。

「私は構いませんが…」

そう言ってアイビーに目を向ける。

「私も良いです」

意外な事にアイビーも承知した。

「では今年の2人の誕生日は共同で行うとしよう。今年は他家の方達も来るのだから2人共ちゃんと準備しておくように」

「「はい」」

合同ならプレゼントを渡すのも同時だ。アイビーもプレゼントを奪ったり我儘は言えないだろう。

数年ぶりに誕生日が楽しみになった。

だが翌日すぐに期待が破られた。



「お姉様ここにいたの探したわよ…何してるの」

翌日誕生日の料理について料理長と打ち合わせをしているところにアイビーがやって来た。

手に何か本のような物を持っている。

「何って…誕生日に出す料理について相談してたのよ」

途端アイビーが目を吊り上げて癇癪を起こし始めた。

「はぁ!?何勝手にやってんのよ!私の誕生日よ!!」

「勝手にって…昨日お父様が言ってたじゃない、今年は2人合同で行うって。貴方も承知したじゃない」

するとアイビーはフンと鼻を鳴らすと腕組みして言ってきた。

「あんなのお父様の手前適当に言っただけに決まってるじゃない!お姉様のくせに何調子に乗ってるのよ、いいこと?勘違いしてるようだからハッキリ言っておくわね!お父様の手前合同という事にしてあげてるけどメインは私!お姉様はおまけ!お情けで祝ってあげてるんだから感謝して身の程をわきまえなさいよ!!」

あまりの言い様に唖然としてると「じゃあこれ」とアイビーが何か押し付けてきた。

「何?」

渡された物を見ると招待客のリストのようだ。今回招待されるのは分家や両親と交流のある人の他に私やアイビーと顔馴染みの人も入る。とはいえ私とアイビーでは交流を持ってる人も互いに違う。どうやらアイビーが個人的に交流を持っている人のリストのようだ。

「私用の招待客のリストよ。招待状を書くのに必要でしょう?じゃあね」

そう言って踵を返すアイビーを慌てて引き留める。

「ちょっと待って!貴方用の招待客リストって…」

「何って招待状を書くのに必要でしょう?そんなことも分からないの?頭悪いわね」

呼び止められたアイビーが嫌そうに振り向いて言う。内心腹が立つが抑えて聞く。

「私に渡してどうするの?普通招待状は招待主が書くものでしょう?」

「お姉様って本当にバカね、お姉様に書かせるために渡したのよ。『合同』なんだから当然でしょう?わざわざ探してリストを持ってきてあげたんだから感謝してよね。じゃあね」

「待ちなさい!代筆なんて失礼でしょう?第一私も自分の分を書かなきゃいけなくて忙しいのよ」

「私だって遊ぶのに忙しいのよ!人間息抜きは必要でしょう?そんなに忙しいなら自分の分を書かなければいいじゃない!」

よくもまぁここまで言えるものだ

再び唖然としてると納得したと思ったのかさらにとんでもないことを言ってきた。

「お姉様が素直に受けないせいで余計な時間を取られたわ、お詫びとしてそのブローチを貰うわね」

そう言って無理矢理ブローチを奪い取る。

「じゃあね、ちゃんと招待状書いといてよ。遅れたりミスしたら更にお詫びをもらうからね」

そう言って立ち去った。


「あ、あの…」

しばし唖然としてると横から声がかかった。

見るとすっかり存在を忘れてた料理長がいた。

「あぁ…ごめんなさい。見苦しいものを見せてしまって」

疲れながらも謝ると料理長が慌ててかぶりを振る。

「とんでもありません!あの、ところで料理は…」

「アイビーと相談して頂戴。私が口を出すとまた癇癪を起こすでしょうから…」

「分かりました、あの…あんまりお気になさらないで下さい」

料理長が慰めの言葉を口にするが正直耳に入らなかった。







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