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1.突然の婚約破棄

不定期更新です

「グローリア公爵夫妻およびエリザベス=グローリア嬢。実は今日そなたたちを呼んだのは他でもない、第1王子ヘンリーとエリザベス嬢の婚約を破棄しエリザベス嬢の妹アイビーと婚約したいとヘンリーから申し出があったのだが…」

突然王城から呼び出され両親と3人駆け付けたところいきなり国王から婚約破棄の申し出を言い渡された。

「「は?」」

「…そうですか」

俯きながら気づかれないようそっとため息をつく。困惑する両親には悪いがこうなることはわかっていた。

アイビーが前からヘンリー王子に色目を使ってたのは周知の事実だしヘンリー王子も父譲りの黒髪青目の私よりも母譲りの金髪緑目の華やかな妹の方を気に入っていてよく自分のところに呼びつけていた。今朝も姿を見なかったから王子のところに泊まっていたのだろう。


顔を上げると壇上に申し訳なさそうな顔の王とその傍らにいるヘンリー王子の母にして側妃のアナスタシア様、それと勝ち誇った顔のこの国の第一王子にして私の婚約者ヘンリー王子と同じく勝ち誇った顔の実妹アイビーがいた。

「その…エリザベス嬢も当事者だし嫌なら嫌と言ってくれて構わない、そのうえで話し合いを…」

決まり悪いのか王が控えめに提案するが、それをヘンリー様が遮る。

「この俺がそう言っているのだから反論など許さん!どうせ政略結婚だしどのみちグローリア家と縁を結ぶのだからどちらでも構わないだろう」

「きゃあっ!ヘンリー様かっこいい!」

「どうせあなたみたいな地味な娘、貰い手がないのだから破棄されようと一緒でしょう?」

王の発言を遮りヘンリー王子が勝手に発言しアイビーが茶々を入れアナスタシア様が賛同する…王の眉間にさらにしわが寄った。

「そんなあんまりです!エリザベスはどうなるのですか!?」

「アイビー!お前姉の婚約者に言い寄るなんて恥を知れ!」

普段から妹を甘やかしてる両親もさすがにこれには立腹したようだった…手遅れだけど。

今更怒るくらいならもっと早く妹をしつけてほしかった。


「何だと!?次期国王の俺に逆らう気か!アイビーの親と思って甘い顔してればいい気になりやがって、おい衛兵こいつらを牢屋に…」

「いい加減にせぬかバカ者!!!!」

今度はヘンリー王子の発言を遮って王が怒鳴る。自分が決めた婚約に逆らったばかりか先ほどからの言動に我慢の限界に来たようだ。

「王族に逆らうのが牢屋行きならお前はどうなのだ!?儂が決めたエリザベス嬢との婚約に逆らったお前は!!」

「ち、父上…」

「可愛い息子と思えばこそ本来あり得ない公爵家との婚約破棄と再婚約を交渉しているのだぞ!?これ以上勝手を言うようであれば王家から追い出すぞ!!」

ヘンリー王子は先ほどの態度が嘘のように震えていた。寄り添うアイビーとアナスタシア妃も真っ青になっていた。

はぁ、とため息をつくと王はこちらに向き直った。

「申し訳ないなエリザベス嬢…これは提案だがどうしても破棄が嫌というならそなたを正妃にしてアイビー嬢を側妃に…」

「そんな!妾なんて嫌よお姉様が妾になればいいじゃない!」

「俺も嫌だぞ!こんな地味な性悪女を妃にするなんて!」

またも国王の発言を遮って2人がわめく。今度は国王だけでなくアナスタシア様も睨んできた。側妃と妾は全く別だ怒りもするだろう。

それにしても性悪女とは…まぁどうせアイビーが取り入る為にでたらめな悪口を吹きこんだのだろうが。



「いえ国王陛下、婚約破棄は受け入れます。その代わりお願いがございます…お父様たちにも」

「フム言ってみなさい、可能な限り聞き届けよう」

「すまないエリザベス。アイビーの育て方を間違えた」

「可哀想に…あなたの気が済むなら何でも言ってちょうだい」

父と母が涙目になって謝罪する。

「政略結婚とはいえ婚約を破棄されて私は大変傷ついております。この状態でアイビーとヘンリー様が睦まじくする姿を見るのは大変辛いのでアイビーを我が家から絶縁しアイビーと私たち一家が顔を合わせないようにしていただきたいのです…今後一切私達と関わりがないように」

「何?」

思いがけない言葉に王が驚く。

「あぁいいぞ。お前みたいな地味女と縁続きになるのもうっとうしいからな」

またもヘンリー王子が勝手に了承する。

「ヘンリー勝手に決めるものではありません!グローリア家の後ろ盾を得られなくなるという事ですよ!?」

アナスタシア妃が焦る。それもそうだ。

現在王太子の座は空席でヘンリー王子ともう1人正妃の子である第2王子が候補に挙がっている。

今のところヘンリー王子がアナスタシア様の後押しもあり有力候補となっているが確定ではない。本人の器量と支持する貴族家で決まる。我が国には5大家と呼ばれる最も力ある5つの貴族家があり、うち2つはヘンリー王子派、もう2つが第2王子派、そして残る1つが5大家の中で唯一中立を保っていた我が公爵家だ。

私との婚約もグローリア家の後ろ盾を得て王太子の座に就くためのものだが、絶縁されたアイビーでは意味がない。

「いいではありませんか。グローリア家の後ろ盾を得られないのは残念ですが、第2王子のルイスはまだ婚約者もいない。アイビーをどこか有力な家の養女にさせればこちらの勝ちです」

「まぁ…そうね。5大家ほどでなくても有力貴族はいっぱいいるし…王家と縁続きになれるならどこも喜んで養女に迎えるだろうし…」

「そうそう。むしろ慰謝料払わなくていい分大助かりですよ」

「わぁ!楽しみね」

3人は私達を置いて盛り上がっている。

「ゴホン!改めて聞くがエリザベス嬢、本当に良いのか?」

国王が場を取り繕うように最終確認をする。

「はい。ただ口約束だと不安なのでしっかり書面で取り決めたいと思います」

「あぁいいぞ。地味なお前にしては気が利いているじゃないか」

王子が言うとアイビーも尻馬に乗る。

「ホント。お姉さまみたいなのにも取柄くらいはあったのね」

「…アイビー、お前は本当にそれでいいのか?」

「もう私達と家族ではなくなるのよ?」

両親が最後に確認してくるが当の本人はどこ吹く風だ。

「なぁに?美人で可愛い娘が惜しくなった?でも残念ね老後の世話はそこの地味なお姉様にしてもらうといいわ。私は愛にのみ生きるわ、家族がいなくても愛さえあれば生きていけるもの」

あまりの言い様におかしくなってフッと笑うと気づいたアイビーがこちらを向いた。

「なぁにお姉様?」

「おめでとうアイビー愛にのみ生きるって素晴らしいわね。せいぜい頑張って頂戴」

「ありがとうお姉様。私が正妃になったらお姉様にもお目溢ししてあげるわね」

上手くいってよほど気分がいいのか珍しく私に微笑んで言ってきた。

「いいえ結構よ」

どうせ口先だけだ。

「そう?無欲ね。まぁいいわ」

話してるうちに破棄と絶縁の書類が出来上がりそれぞれ署名する。


こうして私の婚約破棄は成立した。







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