番外.欲張り令嬢の記録①
こちらはエリザベス視点での過去~本編終了くらいまでの話です。公爵とアイビー(+ヘンリー)が大活躍するのでほぼ不快な展開ですご注意。
子供の頃から父に「年上は年下を守り、年下は年上に従うものだ」と言い聞かせられた。
幼い私にとって親は「絶対」で「正しいもの」で「無条件に愛し守ってくれるもの」だと思っていた。
―――愚かな子供の幻想だった。
「お姉様それなぁに?」
1つ下の妹が私の持っているオルゴールを指さして言う。
今日は私の5歳の誕生日。
まだ幼いという事もあり家族と使用人だけのささやかなものだったが、皆笑顔でお祝いしてくれた。ケーキを切り分けて食べた後両親からプレゼントをもらった。中身は前から欲しがっていたオルゴールだった。
両親は私に公爵令嬢にふさわしい豪華な物を与えてくれるが、私はもっと可愛らしいものが好きだった。だから誕生日にかこつけて欲しい物をねだった。
「これはオルゴールよ。前から欲しかったからお父様達におねだりしたの」
そう言って螺子を少しだけ回して曲を聴かせる。
「お姉様それちょうだい」
曲が終わった途端妹が言い出した。
「嫌よ、せっかくお父様にいただいたのに。」
とても可愛くて気に入ったのだ、絶対に嫌だと思った。
胸に抱えこむと妹が癇癪を起こした。
「何よ、ちょっと貰うくらい良いじゃない!」
無理矢理オルゴールを奪おうとする。私も奪われまいと必死で引っ張る。
結果オルゴールは床に落ちて壊れてしまった。
ショックで泣いていると両親がやって来た。
事情を説明すると父はアイビーを軽く注意した後「物ぐらいでいちいち泣くんじゃない、直せば済む話だ。そもそもお前は姉なのだから妹に譲ってやるべきだろう」と言い母も「気持ちは分かるけど我慢しなさい」と言うだけだった。
(私がアイビーの物に興味を持った時は『人の物を欲しがるんじゃない』と叱った癖に)
そもそもアイビーは普段から「1歳くらい大して差はない」と何かにつけて私と対等でいたがり、両親もそれを許してた。なのに都合の良い時だけ「年上だ」「年下だ」というのか。
ささいなものだが初めて両親に対して不信を抱いた。
結局オルゴールは直らず父も「諦めろ、そもそも妹に譲ってやらないお前が悪い」というだけで特にアイビーを叱ることはなかった。アイビーも「お姉様が大人しく渡していれば床に落ちて壊れることもなかった、自業自得だ」と言うだけで全く反省しなかった。悲しむ私を母が慰めてくれたけど少しも心は晴れなかった。
その後も事あるごとに父は「姉だから譲りなさい」と言い、逆らえば「我儘言うな!」と私を殴りアイビーには全く怒らず、結果としてアイビーは「家族、特に私相手なら何をやっても許される」と増長することになった。
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