最終話.二人で歩む未来
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「ふぅ…」
椅子に腰かけて一息つく。
今日は王太子の就任式、そして私との婚約発表の日だ。
お母様がクスクスと笑う。
「さすがの貴方も緊張しているようね」
「それはしますわ、待ち望んだ日ですもの」
「ルイス王子が申し込まれてから1年近く経ったものね」
困ったように母が笑う。
そうあれから1年以上経った。
当初は喪が明けてからすぐ発表する予定だったが、思わぬ問題が浮き上がった。
――アイビーが取り上げた品々だ。
通常は処分するものだが物の中にはお気に入りや形見の品が入ってるので捨てたり売り払ったりできない。かといって無理やりとはいえ貰った形になってるものを返却すれば相手の顔を潰すことになる。返却希望の人だけ返せば返されなかった人たちに不満が残る。
悩んだ結果『形見分け』という形で返却することにした。
被害にあった方達に向けてそれとなく手紙で書いて知らせた結果、物に思い入れのある貴族令嬢が「お悔やみを言いに来た」という名目で我が家を訪れては奪われた物を引き取っていった。
ちなみに物に思い入れのない方達は代わりに公爵家の物を形見分けとして持っていかれた。
「それにしてもまさかお前とルイス殿下がお付き合いしてるとは…」
父は未だに私とルイスの事を納得していないようだ。
「お父様何度も言いましたがお互い身内を亡くした者同士話をしている内に仲良くなったのですわ」
「いやそれは聞いているがそれまであまり接点がなかったからいまいち実感がわかなくてな…」
「数時間後には嫌でも実感がわきますわ」
いい加減納得してほしい。
「いや反対してるわけではないが…本当に公爵家と掛け持ちする気なのか?」
「えぇ」
もうアイビーに次期公爵の座を奪われる心配はないが出来れば手に入れたい。
将来私がルイスの子を2人以上産んだら王位を継げなかった子に安定した立場を贈ってやりたい。
「まぁお前がやれるならそれでもいいが…」
「とはいえ王妃教育がありますから当分お父様に頑張ってもらう事になりますが…」
困り顔の父に母が茶々を入れる。
「あらあら楽隠居はまだ先ですね」
「勝手に引退させるな、儂はまだ現役だ」
渋面で答える父に2人で笑った。
コンコン。
ノックの音がしたので「どうぞ」と言う。
「失礼するよ」
入ってきたのはルイスだった。
慌てて両親とともに礼を執る。
「今は公式じゃないからいいよ。いずれ家族になるんだし」
その言葉にホッとした空気で礼を解く。
「ルイス様何か御用でしょうか?」
「うんちょっと2人で話したくてね…」
そう言って両親を見る。
察した父母は一礼すると退出していった。
「どうしたんですか?」
立太子は目前だ。
「うんドレス綺麗だね、とても似合ってる」
「ありがとうございます」
「無事にこの日を迎えられたのも君のお陰だ。改めてお礼を言っておこうと思ってね…ありがとう」
「いいえ」
返事を返しながらも内心不思議に思う。
わざわざ式直前に来るような用件じゃない。
「それで今度は僕が君の願いを叶えたいと思ってね…何がいい?」
「え?」
「君の願いを叶えたいんだ、今じゃないと聞けない気がしてね…何が欲しい?僕に何を望む?」
「……何でも聞いて下さるのですか?」
「可能な限りはね」
彼の言葉に少し考える。
(私が今一番望むこと…)
「それでは…私が死ぬまで私を特別に想って下さい」
私の言葉に彼がキョトンとする。
「それが君の望み?」
「はい」
「ふーんそっかぁ『一番に想ってほしい』でも『特別扱いしてほしい』でもなく、ね…」
ニヤリと笑いながらこちらを見てくる。
「はい」
真剣な顔で返すと彼は笑い出した。
「あははははは!やっぱり君って面白いね。普通は一番や特別扱いを望むものだよ?」
「普通である必要があるのですか?」
首をかしげると彼はさらに笑った。
ひとしきり笑った後彼は私を抱きよせる。
「いいよ。君の望み通り…君が死ぬまで特別に想うよ」
「はい」
(これが私の望み)
私は人を信じきれない。今想いあっていてもこの先も変わらない保証はない。
だからもし私を特別に想えなくなった時は――私が気づかぬよう終わらせてほしい。
「さぁそろそろ時間だ、行こう」
「はい」
私は彼の手を取り共に進む。
私と彼が作った未来だ―――
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