12.突きつけられた現実
ブックマーク、評価ありがとうございます<(_ _)>
第一王子と元妹追放の知らせを聞いてから数日後、部屋でくつろいでいると件の2人がやって来たとメイドが知らせに来た。
顔も見たくないが放置するわけにもいかず仕方なく向かう。
屋敷の前で2人と執事が「入れろ」「帰れ」と押し問答してるのが見えた。メイド達も周りでオロオロしている。駆けつけてすぐに執事と交代する。下がらせようとしたが数歩後ろでメイド達と共に控える。
「御機嫌ようラッセル領主とご婚約者様。何の御用かしら?」
「やっと出てきたか。今日からここに住む、早く案内しろ」
「そうよいつまで人を立たせてる気?揃いも揃って相変わらず鈍くさいわね」
人の顔を見るなり理不尽を言い立てる。
「ご冗談を。何故私達が絶縁したあなた方を迎え入れなくてはなりませんの?」
不思議そうに小首を傾げて言うと予想通りというか理解不能な言葉が返ってきた。
「陰気なだけじゃなく頭まで悪い女だな。アイビーはこの家の娘で俺はアイビーの婚約者なんだから公爵家が面倒みるのは当然だろう」
全く理解不能だがさも当然というように腕組みをして胸を張っている。
「お断りします。さっさとお帰り下さい」
私の物言いに2人が憤慨する。
「何だと!?エリザベスのくせに生意気だぞ!」
「そうよお姉様!お姉様みたいな無能な地味女はこちらの言う事をはいはい聞いて言う通りに動いてればいいのよ」
私は怒りをこらえながら笑顔で反論する。
「逆に聞きたいけど何故私が貴方達を迎えなければならないの?散々人を見下し、罵倒し、暴力をふるい、物をたかり、尻拭いをさせてきた挙句、婚約破棄をして私を裏切った貴方達に?」
「「うっ!!」」
さすがに言い返せないようで2人は顔をそらす。
「ねぇヘンリー殿?貴方だったら自分を見下し、罵倒し、暴力をふるった挙句、裏切って不貞を働いておきながら謝罪もなく当然顔で『助けろ』と言う元婚約者を助けたいと思いますか?」
「………」
ヘンリーは顔を背けたまま答えない。
もう1人の方にも声をかける。
「ねぇアイビー嬢?貴方だったら人を見下して優越感に浸ったり、物をたかったり盗んだり、尻拭いを押し付け奴隷のように扱った挙句婚約者まで奪った相手を助けたいと思うかしら?」
「………」
こちらも答えない。
まぁ答えを求めてるわけでもないし、答えられない事自体が答えだ。
「そういう訳で貴方達を助ける理由も意志もありません。お帰りなさい」
そう言って追い返そうとすると必死で引き留めようとする。
「ま、待って!確かにそういう事もあったけど私だってお姉様を助けたことがあるわ!」
「そ、そうだ俺だって!」
(嗤わせてくれる)
内心嘲笑しながらも表には一切出さず不思議そうに首を傾げる。
「あらどんな事?」
「え、えーと…」
「公爵家の跡継ぎの座を譲ってあげたわ!」
「はぁ?」
アイビーから思わぬ返答が返ってきた。それに便乗してヘンリーも声を上げる。
「そ、そうだ。それに俺も王子の婚約者として散々良い思いをさせてやっただろう」
(良い思い?散々我儘放題言って人を振り回した挙句、機嫌が悪い時憂さ晴らしに理由つけて暴力振るうのが?)
この2人の頭の中は本当にどうなってるのか。
呆れかえって言葉をなくしてると図星を指されたと思ったのかさらに言い募ってくる。
「本来ならより優秀でお父様達に愛されてる私の方が後を継ぐべきだったのよ?それでも他に取り柄のないお姉様が可哀想だから大人しく譲ってあげたのよ」
「そうだアイビーと俺に感謝しろ!」
あまりの言い草に我慢できなくなる。
「フッ!アハハハハハハハ」
「なっ!」
「何がおかしい!」
2人が憤慨する。使用人達も驚いた顔をするが気にせず笑い続ける。ひとしきり笑って落ち着いたところで向き直る。
「ねぇアイビー嬢。いつあなたが私よりお父様達に愛されてるというのかしら?」
「そ、そんなのわかりきってるじゃない、お父様もお母様もいつも私の意見を優先させてたわ」
アイビーの発言にかつての状況を思い出す。
「あぁ確かに貴方が私の物をねだるたびに2人とも『譲ってやれ』と言っていたわね」
「そうよそれが…」
あえてアイビーの反論を遮って続ける。
「でもそれがどうして貴方が私より愛されてる証拠になるの?」
「え?」
予想外の事を言われてアイビーがキョトンとした顔をする。
「だって貴方譲らないといつも癇癪起こして暴れて酷い騒ぎを起こしてたじゃない。おまけにこちらが譲るまで何時間、何日でも粘り続けたり脅してきたり…皆貴方にウンザリして関わり合いになりたくないから『譲ってやれ』と言っていたのよ」
「え…」
「確かに貴方は私よりも勉強ができてたけどそれが何だというの?貴族は体面が第一なのよ?貴方のようなあちこちでたかりまくってて評判の悪い娘が跡継ぎになれるわけないでしょう?初めから私が跡継ぎに決まってたのよ」
「そんな…嘘よ」
「じゃあどうして貴方の令嬢教育は最低限だけで後はどれだけサボっても黙認されてたの?どうして最低限しかパーティに連れてって貰えないの?どうしてパーティで誰からもダンスに誘われないの?どうしてお茶会を開いても身分の低い貴族令嬢しか来てくれないの?どうして公爵令嬢だった頃身分の高い友人がいなかったの?ねぇどうして?」
「それは…それは…」
答えられないアイビーにとどめを刺す。
「都合のいい思いこみをする前にハッキリ言ってあげるわね?お父様もお母様も勿論私も他の貴族令嬢子息も家の使用人達も皆貴方を嫌がって関わりたくないと思ってるの。貴方を愛してる者なんかいない、貴方に関わりたがるのは見た目に惹かれたヘンリー殿と公爵令嬢にくっついて甘い汁を吸いたい下級貴族だけよ」
「………」
アイビーは無言でその場に頽れた。




