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プロローグ3


「それでね。私が自殺する理由をあなたにはなします」

 そういって、また呼吸を整えたあと、香奈恵はゆっくりと口を開きはじめた。彼女の悲しそうな顔がより一層悲しくなった。

「細かいことをならべれば色々あるのは事実よ。でも最大の原因はマスターテープが見つからないの。テープが見つからないの。どうしても見つからないの。一生懸命探したけど駄目だった。あのテープの内容が公開されたらと思うと・・・・・・私、たえたれないよ。それで私は死を選ぶ決断をしました。どうしても私たえたれないの。私アイドルになりたいの。だからあのテープの内容が公開されるくらいなら死んだほうがましなの。ごめんね。翔。私、あなたとのピクニックに行く約束を、守れなかった。本当にごめんね」

 香奈恵はゆっくりと深呼吸して呼吸を整えてあらためてしゃべりだす。

「翔。・・・・・・これだけは信じてほしい。けっしてあなたのせいではないということを。それじゃいうね。私は・・・・・・妊娠してるの。あの人の子ども。だから私あんな人の子どもなんて・・・・・・生みたくない」

 いつのまにかそっとやさしくお腹をおさえていたのにとつぜんそのてをいきおいよくはなしその顔はきょうきに変貌した。「・・・・・・それにね。私・・・・・・感じないの。あの人とじゃないと感じないの。・・・・・・辛い。辛いわ。それが 一番辛い・・・・・・。なんで他の人とは私。感じないんだろうって。自分で自分のことがやになるの。もうほんとにってやになるの」

 香奈恵は、と画面から目を離して後ろを振り向いた。おれはおれまでそうする必要がないと、わかっているのに体をうしろにむけた。そうせざるおえなかった。

 そしてもう一度正面に向き直り、後ろを向いてかがんでいる近付いて手を伸ばそうとした。カチッと無機質な音がして、それが画面の中なんだと、指先の衝撃すら忘れて、素で無力感に襲われる。

 くやしさが虫のようにかけめぐってくる。「ちきしょー」というが言葉にすらなっていない。香奈恵の背中とその横に置いてあるー香奈恵のお気に入りなのであろうー革のセカンドバックが目にうつる。「んっ」何か違和感を感じるが、そのまはなく、香奈恵が画面に向き直り、あらためてしゃべりだす。翔はあらためて集中した。

「あとね・・・・・・祖母の介護も、もう疲れてしまったしね」

 香奈恵の目にはもはや涙なんてなかった。何かふっきれたようにもみてとれる。そして理路整然と続きを話し出す。

 この時、いっしゅの男への殺意が芽生えるのを翔は感じ取った。思わず、両手に握りこぶしを作る。無意識だった。

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