プロローグ2
肩までかかる黒髪に、ところどころまばらに茶色がかったロングヘア。それにあわせて、まゆにも薄く茶色のライナーをいれている。唇には白いグロスが塗られていて、照明に照らされてまばゆく光っている。
白地にネイビー色のラインを貴重とした縞模様のシルエットのワンピースはこれでもかというくらい香奈恵にマッチしていた。
いつもと変わらない香奈恵のよそゆき姿がそこにはあった。
そのことがかえって翔の悲しみを一層ふくらませた。
笑ってたかと思われた香奈恵は突然神妙なおももちになり、そしてしゃべりだした。
翔はかたずをのみこんだ。
「翔。私はある男に脅迫されていました。そのことで精神的においつめられたの。今から話すことはしんじつです。私がなぜ自殺したのかあなたに知ってほしくてこのビデオレターを送ります。あっ、安心してね。両親には別途、別の手紙をおくってあるから。翔が、これからはなすこととか内容とか伝えなくていいから。ってか、知られたくないの、両親に・・・・・・」
彼女の顔が悲しみにかわり言葉がつまる。その後、目もとに光るものがあるのを翔はみのがさなかった。
それは彼女のながす涙だった。
「私は・・・・・・、私はね・・・・・・その男とのみだらな行為をしている姿を隠し撮りされて・・・・・・。その動画をSNSで公開すると言われ、いやいやその男のなかばいいなりになっていたの。でも限界。終わりにすることに決めたの」
香奈恵は少し深呼吸をした。
翔には香奈恵がそうすることで、自身の気持ちやモチベーションやそこにいるためのあり方を、なにかととのえているようにもみえた。
そしてしばらくして彼女の口から続きが語られた。その視線はまっすぐと画面をとおして、翔の瞳をまっすぐとみつめてくる。
まるでそこに翔が存在するかのように。