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斬影  作者: 霧崎 射駒
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第二話 友 前編

 放置してすいませんでした。ワイズが優先なので、更新が遅くなりますが、よろしくお願いします。




現在、俺は六限目の日本史を受けている。先生が黒板に書いたものをそのままノートに書き写す。それはいつもと変わらない。変わらないのだが。

 


  『我々の祖先は、この土の容器を使っていたのだな。』



  俺の斜め後ろには、じっと教科書に載っている縄文土器を見る、紺の着物を着た半透明で幽霊みたいな男がいた。

 

 昨日、クラスメイトが変化した化け物から俺を助けてくれた俺の前世、劉、兄貴だ。


 あの騒動の後、土屋は元に戻ったが、土屋と奈美にあの時の記憶はなかった。土屋の様子を見ると、邪鬼化した時の記憶はない、というより意識がなかったようだった。土屋は起きると俺と奈美を見て驚き、戸惑いながらも海王寺のことを話してくれた。どうやら海王寺は、入学早々から土屋をいじめていたらしい。


 俺は、これを解決するために協力をすることを約束した。どうにも放っておけなかった。


 奈美の場合、頭を打ったのが原因のようだ。でっかいたんこぶができてたな。起きて普通に土屋の話を聞いていたから、大丈夫そうだ。奈美を土屋に協力するらしい。


 そして、俺達を助けてくれた兄貴は・・・

 

『うむ、この高い建物はなんだ?どうやって入るんだ?』





今度は、高床式倉庫の写真を見ながら、ぶつぶつとつぶやきながら、考え始めた。


 兄貴は朝からこんな感じで授業を熱心に聞いている。俺は、今日一日、気になって仕方なかった。しかも俺以外の人間には、見えないし聞こえない。はっきり言ってつらい。


  『つらい?大丈夫か?龍斗。』


 ああ、そうだった。兄貴には、俺が思っていることが筒抜けだったな。


  『俺とお前は、ひとつの魂だ。俺にお前の心の声が聞こえて当然だ。』


  兄貴は、俺の前世。つまり、ひとつの魂であり、同一人物だ。兄貴いわく、俺と同じ魂である兄貴は、俺の思っていることや感情、記憶などが分かるらしい。だから、声を出さなくても会話可能だ。


 でもさ、何で俺は兄貴の思っていることなんて、分からないぞ。


  『それは、お前が俺のことをまだ理解していないからだ。』


 何だよ、それ。それって不公平じゃないか。


 そういって、俺は頬杖を付いて、黒板に目線を戻すと、先生がチョークを置くのが見えた。


おお!授業終わりか!!なんか、今日疲れたよ。


  「起立!礼!ありがとうございました!!」


 日直の号令も終わり、俺は、リュックに荷物を入れていく。兄貴は、それをじっと待ってくれている。


  『龍斗、今日はこのまま帰るのか?』


 んー、昨日は、バレー部の練習試合があって、部活なかったんだよな。今日は、部活に行くんだ。


 兄貴は、腕を組んで、眉間にあるしわを更に深めた。

  

  『ぶかつ?ばれーぼーる?よく分からんな。』


 あー、江戸時代の人には、分からないもんな。兄貴、部活って言うのは、学校で色々な分野の遊びとか芸術とか・・うまく説明できない!


 じっと俺を見て兄貴はため息。


  『無理に説明しなくていい。その部活というのに行くのだろ?なら、見て解釈する。』


 見て解釈するって、すごく不安なんだけど。とりあえず、体育館に・・・


 俺は、リュックを持って、そのまま教室を出ようと体を出入り口に向ける。

 

  「龍斗!先輩が呼んでるわよ!!」

 

  「よう、龍ちゃん!迎えにきたで!!」

 

 

 俺を呼んだ奈美の横にこの学校の制服の下にパーカーを着て、鞄を肩に掛けた男子生徒が入り口に腕をもたれさせて、俺に向かって手をひらひらとさせていた。

 

 兄貴は彼を見て、驚いた表情をしていた。



  『京輔キョウスケ?』



 そう呟いた兄貴は、なんだか懐かしむような表情になっている。

 

 あの、兄貴?どうしたんだ?



  『いや、なんでもない。それより龍斗、あの男はお前を呼んでいるようなんだが、彼はいったい誰なんだ?』


  うん、声がなんだか苦々しい。兄貴の様子がおかしい。

 

 俺は再びその男子生徒を見る。

 

 肩まで伸びた茶髪ははねていて、いかにもチャラ男のような髪型。垂れ目でにやりと笑うキザだが、やさしそうな顔立ちをしている。



 えっと、彼の名前は、犬飼(イヌカイ) 梗哉(キョウヤ)

 


 零兄の友達で俺が所属しているバスケ部の部長だ。そういえば先輩、関西弁しゃべるけど、どこ出身何だろ?


  『犬飼 梗哉。』


 兄貴が先輩の名前を確認するかのように呟く。


 そんな兄貴を気にしながら、取りあえず俺は駆け足で犬飼先輩の元へとかけってった。 

 

  「犬飼先輩!ちょうど体育館に行こうとしていたとこなんです。」


  「うん、昨日は練習出来ひんかったからな。その分、ビシビシいくで!」


 そういいながら、先輩は俺の肩をポンッと叩いた。


 ん?奈美なんで納得した感じの顔をしてるんだ?


  「今朝、あんたがご機嫌だったのはそれだったのね。でもその後は、なんだか顔色が悪くなっていたけど。」


  「え!?龍ちゃん、具合悪いん?悪いんやったら、無理せんくってもいいんやで?」


 先輩は驚いた顔で俺を見る。そのまま両肩をつかんで、俺の顔色を見てきた。俺が顔色が悪いのは、今日一日兄貴と授業を受けていたからで、決して何処も悪くないんだよな。一応、誤解されないように言おう。


  「あー、別に身体的には大丈夫ですよ。なんだか、精神的に疲れちゃって。」


  『それは、俺への嫌味なのか?』


 え!?嫌味じゃないよ!?ただ慣れてなくて。


  「精神的というても、ホンマに大丈夫なん?」


  「ほんとにだいじょうぶです!というか、練習させてください!」


 犬飼先輩は、俺を怪訝そうにじっと見て、んー?といいながら、何やら考えているようだった。


 あれ?先輩の顔がいつになく真剣なんだけど?


 先輩が普段、見せないような目がぎらりと光らせたような目。俺は思わず、後ろに引き下がる。なんだか、怖い感じがする。そんなに心配してくれてるのかな?


  「まあ、そんにゆうなら、大丈夫そうや。」


 よかった!部活には参加できるみたい。でも、なんだったんだろ?


 そう思って見てみると、犬飼先輩はいつものやわらかい顔に戻って、奈美の顔を見ていた。

  

  「あ。そうや奈美ちゃん、ワイが部活終わったあと、時間あらへん?」


 先輩は、奈美に声を掛けながら、ニカッと笑い、徐々に近づいてく。奈美は少し戸惑っているようだ。


 奈美、少し顔赤いな。そういや先輩イケメンだよな。それで赤いのか?


  「え、ええ、風紀委員の仕事が終わったら、何も予定はありませんけど。」


  「そんなら、ちょっと付いてきてほしいとこがあるんやけど!?」


 あ。先輩の頭に本が落ちた。でもここに本棚なんてないぞ?と思ったら先輩の後ろに人影がその本を持っていた。どうやら、その人が先輩を叩いたようだ。


  「はあ、間に合ってよかった。」


 その人物は制服をきっちりと着こなし、手に革鞄を持っていて、癖のある波打った黒髪に眼鏡をかけている。


  なんでこんなとこにこの人がいるんだ!?図書室に直行してるはずなのに!?


  「本田先輩、何でここに?」


  「委員会の仕事で書類を貼りに来たんだ。このクラスの委員が休んでてさ。」

  

  でもいきなり本で目の前にいる人を叩かれたら、誰でも驚く。兄貴も奈美を唖然してる。


 この人の名は、本田ホンダ 拓馬タクマ


 この学校の図書委員長。犬飼先輩と同じ二年。真面目で優等生だが、何もないときは犬飼先輩と一緒にいる。


  「いっで!?拓ちゃん、なにするん!?」

 

 しゃがんでいた犬飼先輩は立ち上がって、本田先輩に反論した。

 

  「君の犠牲者が増えそうだったからね。これで制裁を与えただけだよ。」


 そういって本田先輩は涼しい顔で犬飼先輩を叩いた本をひらひらと振ってみせた。その本を見ながら言葉に疑問を感じた奈美が顔を歪めた。


  「あの犠牲者ってなんですか?まさか私のことじゃないですよね。」

  

  「そのまさかだよ。こいつナンパ好きで女好き。というか恋愛好きでね。男女構わず落として、付き合ってるの。」

 

  そういえば、先輩にはそんな噂があったな。


 兄貴はなんだかあきれてるみたいだし。奈美はどん引きのようだ。


  『いらんところまで似てるのか。』

 

 似てる?先輩が兄貴の知り合いの誰かに似てるのかな?でも兄貴に今、知り合いなんていないはず。そう考えると生前なのかな。先からの様子から見て、兄貴と関係が深い人なのかも。


 ふと奈美を見ると怖い顔して俺を睨んでいる。


 「ちょっと龍斗!なんでこのこと教えてくれなっなっかたのよ!?」


 「俺も知らなかったんだよ!!だから、そんなに睨まないでくれ!」


 『知ってなかったか?』


 兄貴!これはいいわけだし、奈美に知ってるなんて言ってないからいいんだよ!!奈美!!目線が痛いからやめたくれ!!!だめだ、奈美に睨まれるとなんか悪い感じしかしない。早くこの状況を脱しなければ!!


 「あああああの!本田先輩、ちなみに犬飼先輩は何人と付き合ってるんですか?」


 「男も含めて10人。」


 じゅっじゅじゅじゅ10人!?多いよ!!漫画じゃないんだし、しかも男の人もいるの!?というか同姓と付き合ってるなんて、先輩ゲイなの!?


 「ちゃうわ!八人や!!」


 「それでも多いですよ!!??」

 

  胸張って言うことじゃないですよね!?


 女好きだってのは知ってたけど、まさか男ともしかも八人とんでもない人だ。奈美と兄貴もそれを聞いて冷めた目で先輩を見てる。


 「最低。」


 『最低だ。』


 「その通り最低だよ。」


 「なんや!皆してそないなこと言わんといて!」

  

 犬飼先輩に向かう三つの冷たい目線。ひとつは見えてないから突き刺さっているか分からないが、それらが犬飼先輩に突き刺さる。本田先輩は泣きまねをするようなしぐさで叫ぶ犬飼先輩に苛付いたのか、更に追い討ちを掛けた。



 「そんなことって、君がやってるのは、人間として最低なことだよ。君は人類最低の手本だと思うけど。」


 「拓ちゃん、ひどい!!そこまで言うことないで!!」


 そういわれた犬飼先輩はとうとう本気で涙目になってしまった。本田先輩はそれを見てあきれたようにため息。


 「じゃあ、僕はこれで失礼させてもらうよ。橘君と間谷さん、そこの放っておいていいから。構ってると君達がおくれちゃうよ。」


 

 本田先輩はそういうと教室の奥へと進んでいった。変な空気に取り残された俺と奈美と犬飼先輩。何かしないとどうにもならないので、俺は先輩の肩を叩く。



 「とりあえず、部活行きましょ。」


 

 うん、そうやね返事をする犬飼先輩。



 さすがに言いすぎましたと謝る奈美。



 ほっとけと言われただろうという兄貴。


 

 それも見るとなんだか昨日のことが嘘と思えた。





 




 斬影 第二話 「友」





 

 



 






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