8.街道
あの神殿に行った日から一週間後。
私の仮の家となった喫茶店の窓から白神町の街並みを見る。
ちなみに、真の鑑の室で教えてもらえなかった為、まだ私がなぜ秤見(蘭娥によると生前の生き様などあれこれ見るために在り、秤見される側が意識の無いときにされるため、秤見されたことを覚えてないらしい)で異常と判断されたのかはわからない。
ディリアから聞いた話では、魂…が何か違和感を感じた、と秤師が言ったらしい。
神の場では蘭娥が我らのー神々の血が濃く流れていて同胞と言ってもいい。とも言っていた。
(後で聞いたが、同胞とは言えど、はっきりした事が分からないので神だと断言はできないらしい。)
…それを鵜呑みにするのならばこう言うのは恐れ多いが、私は神、または神に近い者なのだろうか。
(私って本当は何なんだろ…?)
そう感じずにはいられなかった。
幾ら考えても…私は白子袖莉丁亜と言うただ交通事故で死んだ一般人だとしか思えない。
それはさておき。
あの後神殿を後にした私達は、集まりに行っていた蘭娥と合流して白神町にある喫茶店へ入り、蘭娥の知り合いだと言うこの店のマスターの女性に会った。こげ茶髪と鋭い黒い瞳、着ている黒のエプロンは無地で実用性の高いもの。…部屋全体はコーヒーの香りでそれがほわほわと鼻腔をくすぐる。
「ー全く、礼儀知らずなのかい。ええい、お前さんは?騒がしく大勢で来るなんてねぇ…迷惑な事。」
「…あー、いつも済まないなマスター。」
仕方ないねぇーとマスターは板切れを蘭娥に向かって放った。
それを見事受けとった蘭娥に向けて莉丁亜は小さく拍手した。
板切れには閉店と書かれている。
「貸切にしてあげようじゃないの。懐かしい顔もある事だし…」
「済まない。」
そう言って蘭娥は立ち上がって店の外へ板切れをかけに行く。
「元気にしてたのかいディリア?」
蘭娥を目だけで追っ掛けていたディリアはマスターから急にに目を向けられて居心地悪そうに返事を返した。
「ええ、ご無沙汰してましたマスター……。」
「全くだねぇー」
はぁーとため息をつかしてしまった。
「…」
「…」
「…」
…沈黙が重い、ここは私が何か言うべきか?そう思うディリアは、しかし沈黙を破れないでいた。
「…むかしから、変わらないねぇー」
沈黙を初めに破いたのはマスターだった。で、と続けたマスターは莉丁亜を見た。…怖い。
「誰…この子も私らの仲間かい?で、そんな子を何故此処にねぇ?」
で、では話を繋げれないくらいに話題が、変わった気がしたがまぁいい。
問題はその後。
「…いや。えっとー。おい、蘭娥説明しろ。」
板切れを引っ掛けてから戻ってきた蘭娥をズルズル引きずって捕まえる。
「あー、その子、秤見に引っかかってるから白神町に留めないとなぁ〜〜、…ってな理由でこの子居候させて欲しいなぁ…と。ハハハ…あはは?」
『ーっ⁉︎』
二人分の声が響く。この二人と言うのはもちろんマスターと莉丁亜だ。
「そう言う事だ。…よろしく頼むマスター」
「…ディリアまで、それはどう言う事なのかしらねぇ…えぇ?第一神の場のある館…天神館にだって沢山の室があるじゃないかぃ。そこで泊まるのが、筋ってものだよ?」
「いや…。莉丁亜はどうやら神に近い血を持ってるらしく、それに関する記憶が無いものだからそれを取り戻すなら下神界の方が都合がいいーと。」
マスターは少し目を見開く。
「この子がそんなんだって!…驚きだねぇ。いいよ、泊めてあげようじゃないか。…まぁ、店の手伝いをしてくれるなら、だがな?」
どうやらマスターの方針は『働かざる者食うべからず』らしい…。




