7.神殿
ごめんなさい、神殿の中に入ってから唐突にそう言って、莉丁亜は話を続けた。
「さっきのは悪かったよね。ディリアにだって色々事情があるのに…ごめんなさい。」
あれから、ディリアに連れられて神殿内…神殿に隣接して建てられた建物を歩きまわっていた。
大きな廊下に白くどっしりとした…やけに静かな大理石の階段。
石像やホコリを被ったレリーフの石版、布をかけられた絵画や薄く汚れたガラス細工が置かれどことなく、見捨てられた様な宝物庫。
ただただ、何も無いと思われた祭壇には忘れられた様にひっそり置かれたピンク色の花…私の様な神に頼んだところで、どうしょうも無いものを、そうぽつり呟く神は毎日毎日祈りにくる少女がいるのだと語った。
礼拝堂は人の気無く信者など、とうにいない様に思われた。
「…さっき?」
ディリアは謝られる言われがわからず暫し考えた。
(うー、アレか?…神殿があまりにさびれていて、惨めさにいたたまれなくなったか…?)
いや、だからと言って謝られる神って…もしそうなら本当、申し訳ない。
かと言って他に何かあっただろうか。
わからないまま思った事を告げると莉丁亜は…物凄くビミョーな顔付きをした。
「私、そんな事おもってないから…神殿だってほっ、ほら掃除すればいいだけだし…。」
…この反応を見る限り、莉丁亜も少なくとも少しはこの神殿のさびれ様にいたたまれなくなってたらしい、ーそう思ったのは私の気のせいか?…いや多分気のせいではないな。
ディリアは少しだけ喉の奥で笑った。
「あのねっ!そうじゃ無くて…えっと、さっき私が『…わざわざ、哀しいこと言わなきゃいいのに。』って言った後から機嫌悪くなったから、何かディリアが気に触る事言ったのかな…って。」
ディリアはそれを聞いて、ああそう言えばそんな事を莉丁亜が言ったのを聞いた気もするー正直なところ、気にしてもいなかった。
フッと笑ったディリアを莉丁亜は見上げる。
「それは君のせいでは無いよ。…昔の嫌な事、思い出してしまっただけさ。」
ディリアは続ける。
「昔、ああ…真の鑑の室で話したか…私には対となる神がいた。私は、私達は…双神だった…。幸せな日々だったさ。あの子は身体は弱かったけど、人に優しくて…この神殿にも人が沢山祈りに来ていた。年に一度、白神町に降りてお互いにプレゼントをしあったりしたな…宝物庫のガラス細工なんてのは私があの子にあげたものだよ。
ガラスの中の光の煌きが綺麗って言ってね。
だが、幸せなんてものは永遠ではない。ある時から、段々あの子は弱っていってね…死んだ、と言う表現が神に対しても正しいのか…事実消えてしまった。失った幸せ、それをあの彫刻が思い出させるから…。」
泣くなんてのは神の矜持が許さない…けどー




