12.帰る道
コツコツと靴が鳴る。その沈黙に耐えかねてか莉丁亜は口を開いた。
「体調…大丈夫なの?」
「アズバがなぜ莉丁亜を私の元に連れてきたか、分かるか?」
「…?ううん…」
「そうか。…昔私には双子の神、双神となる片割れの神がいた。その子は私の双子の妹でリティアと言ってね。」
「この前言ってた対になる神のこと…?私と同じ名前…?ちょっと発音違うけど。」
「そう、だからだろうな。…もしかしたら私が死にゆくのを止められるんじゃないか、と。知らないとは思うが、私は陰の気を持つ神でリティアは私とは反対に陽の気を持つ神だ。…無論、私の中に少しは陽の気があるがもともとが陰の気が多くて、それを逆に陽の気が多いリティアといることで釣り合わせていた。」
少し言葉を切り、
「それがリティアが死んでバランスが崩れてだな…陰の気が多ければ器にあまりあるチカラになるわけで。
…要するに、強くて身を滅ぼすってわけだ。」
「そんな…ディリアは、死ぬ、の?」
そのリティアさんって言う少女が…そんな神が死んだ様に。
…神さまなのに…?…。
そう不思議そうに莉丁亜が言葉を紡ぐ。
「ん?あぁ…、そうだな…人は死んだら、こちらにくるが、神々にもそんないく場所はあるのだろうかな。」
もしあるならば、リティアにまた逢えるのか。
それならば、もう良いと思ったのか。
…命が終わるのも、全て。
「着いたぞ。」
「うん。…そう、なんだけど。」
「どうした?ー大丈夫、まだ当分は死ねない。心配しなくていい。」
「そ、っか。…止められないの?」
「無理だー心配してくれるとは…嬉しいな、ふっ…じゃ、またな。」
それに、このまま死ぬわけにもいかない理由もある。
踵を返したディリアは一つ息を吐く。
…怯えさせるには、あまりに可哀想だったのだ。
莉丁亜に言えなかった事がある。
陰の気で狂った神はただ単に身を滅ぼして死ぬのではない。
陰の気に呑まれた神の行く先は決まっている…。
ー強く禍々しい心壊れた災いの神になるのだー
死んだ神の居場所など、知らない。知らないままで良い。
たとえリティアがそこにいたとして、逢う事はきっと、叶わない。叶ってはならない。
行き着くとこなど、せいぜい地獄とも呼ぶに釣り合うべき所なのだから。