11. かの神の隠れ家
(*ー*内のみアズバ目線)
*ーーーー*
「待って…!」
「…追いかけて来たのか、息切れしてるな。」
足を止めた彼女は神でも人間でも無いそれゆえに、神を恐れてまた、あぁ目の前にいる少女…人間はなんて脆いのかと思うのだ。
ーこれぐらいを走るだけで息切れとは。
*ーーーー*
「あっ、あの」
「で?」
なんとも表情をうつさない彼女の顔に、やっと追いついた莉丁亜は言葉を詰まらす。
「で?って…。えっと、そのー?」
ディリアにはよくしてもらったという恩がある。…何よりそのディリアの使者を無視できなかった。
ポツリ、ぼそぼそ彼女は話す。そういえば自己紹介さえしていなかったな、と。
「着いてくるなら来い。…俺の名前はアズバ*レザンル*アルザスと言う。呼び捨てで構わない…よろしく」
莉丁亜は彼女…アズバに並び歩く。
「あ…はい。えっと、アル?で良いの?」
アズバ*レザンル*アルザスとは余りに長い名前だ最後のアルザスを短くとってアル。
…アズバは少し目を見張ったのだが、それは一瞬の事だったので莉丁亜が気づいた筈もなく、ましてやその理由など知らない。
「…ああ、アルでいい」
ディリアの使者…アズバは昔自分をアルと呼んだ少女を懐かしく思い返していた。
一方の莉丁亜は、先ほどから歩いて来た道に並び建つ家が白である事を気にしていた。
そういえば『仄香』のある通りから一、二本ずれた通りにさっきはいったなと莉丁亜は思った。
(なんでだろ…?)
「あれは、白神町の中央部の通りの道に面する家が白と決められているだけだ。白い服装も然り。白は穢れのない色で神のいる町に相応しい色だと言う事だ」
不器用ではあったがアルはどうやら親切にも教えようとしているらしい。
そういえばディリアが話していた事だ。
「へー、そうだったんだ…。アル、今からディリアの所いくんだよね?こっち側、神殿の道じゃないんじゃ…」
なんだかそんなような事をディリアも言っていたようなと思いながらまた尋ねる。
「…戯け、必ずしもディリア様が神殿にいるわけじゃない。…今から行くのはディリア様の隠れ家だ…、着いたぞ」
「あ、うん。」
見上げた建物は二階建てのオレンジ色の屋根の家。…いや、どう見ても普通の家だ。ってか、仮にも神様の隠れ家ならもっとこうー特殊なとこが欲しいなと思うんだよね。
「お帰り。アズバ…?」
中に入ってすぐディリアの声がした。
アルの後ろをついて行くと廊下からリビングへと移り変わり、そこには椅子に座ったディリアがいた。
アズバの後ろから顔をひょっこり覗かせた莉丁亜に、驚いたディリアだったがそれは一瞬の事で、直ぐに険しい顔をお供に口を開いた。
「連れて来いと言った覚えは無いが。アズバ何故連れて来た?」
「…ああ、俺もそう聞いた覚えはない。安心しろ、ボケは始まってなかったぞ。」
冷やりと静かに怒るディリアとニヤリと笑うアズバ。
(あれ、アルってディリアの使者なんだよね?それにしてはなんだかディリアに対しての物言いが…まぁ、いっか。)
莉丁亜はそんな違和感をさっさと忘れるとディリア達の会話に耳を傾けてる。
「…それは私が一言も連れて来いと言ってないことへの証明と取っていいんだな?…莉丁亜、もう帰るんだ。」
うん、すぐ帰ろう。今すぐ帰ろう…こんな怖い雰囲気のとこには居づらい。
「あっ、帰ります…ってあ、帰る道がわからない…。」
「…」
「…」
「はぁーっ、送ってく…なんだアズバ、どけ。」
「…体調は治ったのか。」
その言葉に莉丁亜は首を捻る。え?ディリア体調悪かったの…?そんな風には見えないけど…。
「全く…、大丈夫さ。コレは治しようも無い事…」
「大丈夫には見えないが。」
「…。おいで莉丁亜」
ディリアは話を強制的に打ち切った。