破天荒令嬢レイラの転生物語
『小説家になろう』での初めての投稿です。
よろしくお願いします!
今までいろんな悪役令嬢モノを読み漁り、ちょっとこんなのもいいかな?と書いてみました。
時間がなかったので即興でしかも短いですが楽しんでくれると嬉しいです。
ふっと目を開けるとそこは見知らぬ世界だった。
「レイラ・フィール!お前との婚約を破棄する!!!」
ん?
目がチカチカするほどの豪華絢爛な広間にこれまた目が痛いほどの真っ白な軍服のようなタキシードのような服を着た煌びやかな長身の青年がピンクのドレスを着た少女を抱き寄せ、私に向かって指を突きつけては演劇舞台のヒーローのようにポージング決めつつ言い放つ。
いや、目に痛いよ、その純白。
あまりの目の痛さにシパシパ瞬きをしつつ、目をこする。
なんか睫毛が長いな。
それにプリプリの肌。
いやん、もちもち!
若さ溢れる遠き日の張りと潤い。
自分の頬を両手で挟んでそのもちもち感をしみじみ感じつつ、自分がどこにいるのか理解し始めてきた。
・・・ってゆーか、これって!!
「悪役令嬢の鉄板!婚約破棄の現場っ!?」
周りを見渡すといるわいるわ。
高そうなドレスやら羽根付き扇やらタキシードやらを着た若い男の子と女の子たち。
皆、好奇心丸出しでこちらに注目している。
見た感じ、十六歳か十七歳か。
あきらかに日本人じゃない顔ぶれ。
そしてその中心地。
私の目の前にいる、1人の女の子を侍らせた青年とその周りにいる色とりどりの髪の色をした若い男の子たち。
たぶん王子とか宰相の息子とか騎士団長の息子とかそんな感じだろう。
みな、顔が気持ち悪いくらい整ってて、そして苦労したことなさそう・・。
彼らに一瞥しつつ、私はぽかんとした顔で見てる王子(らしき)にくっついてる女の子に目を向ける。
うん。
たぶんヒロイン。
「ちょっと来て!」
しゅたたと私は女の子の傍に素早く近づくとそのまま彼女の腕を取り、人目の薄い隅っこに連れて行く。
「あなた、ヒロイン?これって断罪イベントよね?なんてゲーム?この後の展開って知ってる?」
「は?」
矢継ぎ早でひそひそと質問され、ヒロインは戸惑ってる。
「おい、こらっ。リーリアに何をするんだ!」
後ろから文句をつけながら王子(たぶんそう)がツカツカと近づく。
それに反応して私は半眼にしながら振り返る。
「あ゛?」
ビクッと王子(ま、それでいいか)は私のガンつけに一瞬怯み・・・それでも気を取り直して近づいてくる。
若干怖じ気付いた感がある険しい顔で。
「いいかげんにしろ、俺の我慢にも限界が・・・」
「-------邪魔するんじゃないよ・・・この若造が」
低く漏れた言葉とともに私は音も立てず滑るように王子の懐に近づくと胸ぐらを掴んで顔をこっちに引き寄せる。
うん。目に痛すぎる照明から少し影になる。
目がチカチカしてたのがなくなった。
一方、いきなり首を落とされ、前屈みになる王子は眼前に迫った鷹のような鋭い眼光を間近で浴び付けられ硬直する。
婚約者であり、幼なじみであり、将来の王妃となるための教育を施された生粋の令嬢。
金髪碧眼で光の王子と讃えられたアルディオール王国の王太子であるシュガール・デ・アルディオールと並んでも見劣りしない豊かな深紅の髪は王家縁の定番ヘアとして有名なドリル。
まだ若干十七歳だというのに大人っぽく化粧を施されているが、素顔でもため息をつくほどの美貌の持ち主。
しかもデコルテが大きく開いたドレスから強調された胸の谷間。
細い腰。
次期王妃となるに相応しいとされるまさに完璧なる婚約者の名はレイラ・フィール。
そんな完璧さと将来を決めつけられている事に嫌気がさしていたシュガール王子に突如現れた庶民の少女、リーリアはこの婚約者には持ってない煌めきを持っていた。
家柄も生活環境も全く違う王立学園の特待生として入学してきた彼女は貴族の子息子女のみが通う学園の格差社会に馴染むことが出来ず、それでも明るく健気に孤軍奮闘してきた。
そんな守ってやりたくなるような少女に王子の婚約者であるレイラは突っかかってきた。
それこそ、いじめかと思うほど・・・。
だが・・これは・・・?
「アンタ、今邪魔なの。わかる?私は今、人生の瀬戸際なわけ。それに、さ。いっつも思うんだけど普通婚約者がいるのに他のオンナとベタベタ、ベタベタ…………。浮気してんの、そっちじゃねーか・・・悪役令嬢・・・なってみてよっくわかったけどまさか自分がなってみるとここまで腹が立つものだとは思わなかったわ。・・・と、も、か、く」
こいつは誰だ?
レイラ・・じゃないのか?
そう、シュガールは思った。
・・・瞬間。
「むっ、むむむむむむっっっ!!!!!」
いきなりヘッドロックを決められた!
「い、い、か、い?尻軽王子。いくら親同士が決めた婚約者でも情ってもんはあるんだよ」
「グググ・・や・・やめろ・・・」
「しかもこちとら王妃教育とやらで一番楽しかっただろう時期を潰されてんのよ」
「く、くる・・やめ・・」
「こっちの状況がわかるまで大人しくしてなよ?・・・いいかい?ボウヤ」
「わ・・わかっ・・・」
抵抗してた力が抜けた事で外してやった。
そのまま崩れ落ちる王子。
そのまんま、寝てな。
すぐ終わるよ。
「さぁ~て、ヒロインちゃん。話、聞かせてくれるよね?」
にっこり笑いながらヒロインの方を振り向くと、真っ青な顔でブンブンと首を縦に振られた。
「あ、あなた・・・も、転生、者?」
「そう。しかもついさっき。だからさ、教えてほしいんだ。ここはどんなゲームの世界?私はどんな最後になるの?」
ヒロインの名前はリーリア。
庶民らしい。
彼女も転生者。
ま、そうだよね。鉄板だよね。
「ここは・・たぶん『光のアルディオール』・・だと思う」
「『光アル』ね。あ、じゃあ、アレ、シュガールとかいう名前?」
「そ、そう」
「じゃあ私は当て馬のレイラ・フィールかぁ~。あら、前の名前と同じじゃん」
「え・・あ、あなたって・・・」
「知ってる?あの、元女子レスラーで恐妻で有名な古沢れいら」
「ふっ、ふるさわ、れいら・・っさんっっっ!!!!!」
パチン☆とウインクしてサムズアップしといた。
「何をしているのですかっ、姉上っ!!!」
驚いたまんまで固まってしまったヒロインことリーリアから大体のあらましを聞いた私は後ろからズカズカとやってくる一団に気づいた。
王子の取り巻きたちだ。
一番先頭には我が弟・・に、なるのか。ユリアーノ・フィールがいた。
「王子にこのような振る舞い!リーリアの件もありましたがこれで姉上がどれだけ性悪な人物なのか分かりましたね」
・・・なんだと?この愚弟・・・。
「ユッ、ユリアーノ様っ、ダメですっ、そのような物言い・・・」
「リーリア、姉上に何を言われたんだ?そのように青ざめて。かわいそうに。どれだけ彼女を傷つければ気が済むんだ?」
リーリアがユリアーノから私を庇うように前へ出てきたが、憤慨して目の色が変わっているユリアーノを止められず横にずらされる。
おうおう。
我が愚弟、ユリアーノに、薄緑の流れるようなさらさらヘアを毛先だけまとめて肩に垂らした優男、宰相の子息マルカ・エイド。
ガッチリした体格の騎士団長の息子スティーブ・ヤン。蒼い短髪。
紅茶のような茶髪をおかっぱにした子犬のような印象の小柄な少年ツバミルク・スィート。
・・・たしか魔法省の重鎮の息子だったような気がするけど、この世界には魔法があるんだよね。
それにしてもこの子の名前だけ、妙にヘンというか、変わってるな。
作者も名前考えるのメンドクサくなったんだろうね。
んで、ユリアーノが赤色の髪だから、王子・公爵の子息・宰相の子息・騎士団長の息子・魔法省の息子という分かり易い攻略対象。
ちなみに髪の色はそれぞれ適した魔法属性に関係している設定。
だから私もかなり強い炎属性の魔法が使える。
「炎」
愚弟の足下に火を軽く放つ。
それに驚いた面々が歩みを止める。
「なっ、なんて非常識なっ!? 卒業パーティの会場でっ!?」
卒業パーティに衆人環視のもと、わざわざ婚約破棄言い渡されるのはいいわけ?
はんっ!と居丈高に腕を組み、見下すようにカラフル軍団を見る。
いやぁ~、このカラダ、めっちゃ胸あるぅ~。
なによ、この弾力。
腕に胸が乗るよ!
ぽよんぽよんっ。
ちらりと目線を下にむけるとシミ一つない乳白色の二つの膨らみが!
谷間、深っ!
しかも普通これだけ色白だと血管が薄く見えるのにきれいな肌。
そして垂れ下がる深紅のドリル・・・。
ああ、悪役令嬢定番ヘアか・・・。
これ、やめよ。
「ユリアーノ。あなたには心底情けなく思いますわ」
令嬢であるのを思い出したので言葉使いをそれらしくする。
あからさまにがっかりしたように言うとすぐさま「何?」と反応する男。
なんだろ、この舞台感。
いつのまにかスポットライトが私とカラフル軍団に当てられている。
ああ、このライトの熱。
これを浴びて、人々の熱のこもった期待するような眼差しを一心に受けていると・・・・こう・・・女子プロとして名を馳せたあの時代を思い出す。
結婚して引退して、結婚した相手がお笑い芸能人であったから彼とともにバラエティー番組に出演してその恐妻ぶりに人気が出て、旦那よりも売れてしまった。
その時も好き勝手してきたけど、このどんどん高まる高揚感。
思わずニタリと獲物を前にした肉食獣の笑みになってくる。
その顔を見たカラフル軍団がズサッと後ずさる。
本能だろうなぁ~。
くふふ・・・ガキ共・・・調子ぬかしてんじゃねーぞ!
「ユリアーノ!あなたは何をお父様から学んできたのです?他のみなさま方もそうですわっ。あなたたちはそれぞれ婚約者がいらっしゃるのに、いくらリーリアさんが保護欲をそそるヒロイン・・・?・・ま、いっか。だとしても、他の女性にうつつを抜かすなど紳士にあるまじき行為!わたくしはリーリアさんを虐めたりなどしておりません。婚約者のある殿方と必要以上に接するのは如何なものかと問うただけです」
「し、しかし、服を破いたり所持物を隠したり、階段から突き落としたり・・」
「まぁ!そんなことをわたくし、いたしましたの?・・・リーリアさん?」
確認を取るために彼女にすこぉしニッコリしながら振り向くと、彼女はブルブルと両手と首を振って否定する。
「れっ、れいら様がそんなことするわけないですっ!私はシュガール・・」
名前を言おうとしたのでさらに笑みを深くすると「王子様に!」と言い直した。
「王子様にそう言おうとしました!でも、王子様もみなさまも『レイラが悪い』と息込まれて・・・」
「だ、そうですよ」
カラフル軍団に向き直してニッコリ微笑む。
なんか後ろで何やら逆らっちゃダメぇ~とかお願いだから穏便に!とか小さく聞こえるけど、カラフル軍団もそれを見て反論するのを躊躇ってる。
そこへカラフル軍団の足下に転がっていたシュガール王子が目を覚ました。
「いたた・・・なんなんだ、一体・・・」
身体を辛そうに起こした彼は私を見上げるなり悲鳴を上げた。
「こっ、こいつ、誰だっ!!」
人を指さすもんじゃないよ、ボウヤ。
礼儀がなってないね〜。
私は自分でも惚れ惚れするくらい優美な足運びで王子の元へ近づきふわりとスカートを膨らませしゃがみこんだ。
ビクッと身を引く王子。
「大丈夫ですか?」とか優しく言いながら戸惑うその手を取り、立ち上がらせながら耳元で囁く。
「あとで折檻だからな。この浮気者」
この台詞はモテる容姿でもないくせに女にだらしない夫によく言っていたモノ。
これを聞いた男は面白いくらい顔を青ざめさせ恐怖の面になる。
ククク。
ゲームの展開めちゃくちゃにしちまったが、これもまた余興の一つ。
人生はエンターテイナー。
どこで何をしても私は私。
古沢れいら。
そしてレイラ・フィール公爵令嬢。
この世間様を知らないボンボンボウヤたちを躾ていきますか!
〈完〉
いかがでしたでしょうか?
かなり気に入ってます。このレイラの性格。
評判良ければもうちょっと設定起こして連載とか出来たらいいな。
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