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ブクマ400件突破記念感謝SS『〝せかうる〟の原作世界に紛れ込んでしまったようです/前編』



「ふぁ……、おはようスティ……」


いつも通りの朝に目を覚まし、ベッドの上で体を伸ばしながらあくびをする。いつものように、先に目を覚ましているであろう幼馴染で親友のスティことエストアールへ声を掛けようと隣のベッドを見やると、そこには人の影もなかった。


「そういや、王宮に行っちゃったんだよね」


先日、スティの懐妊による出産の準備をするために、学園を休学して王宮へと移り住んでしまった。その事をつい忘れて、いつもの習慣が抜けず挨拶をしてしまっては寂しい気持ちをしている。

渋々ベッドから降りて身支度を済ませると、がちゃりと音を立てて浴室から出て来た人物に目を疑った。


「あら? シャルどうしたのかしら?」

「……え?」


学園へ向かう準備を済ませたスティが、なに食わぬ顔でこちらを見ていた。そして、開口一番の言葉で、若干口調が違うように思える。


「えっと……」

「のんびりしていると遅刻するわよ」


寝起きで自分は夢でも見ているのだろうかと、一度目をこすって改めてスティの姿を見るが、とくに何か特別変化があるわけではないが、少し表情がきつく見える気がする。

スティはたしかに王宮に行ってしまったのは間違いないのだ、そういう事はこれは夢だと言うことはわかる。だが、こんな彼女を知らない。少しトゲのあるような口調で喋る所を知っているのは、ゲームのエストアールだ。


「す、スティ……?」


ゲーム上のシャルティエが、エストアールにどんな風に話をかけていたかはいまいち分からなかったため当たり障りなく、とりあえず愛称を呼んでみる。すると、不思議そうに首を傾げてこちらに歩み寄ってきた。


「シャル、貴女体調でも悪いの? それとも幼い頃の夢で見たのかしら?」

「え?」

「貴女、この学園に入ってからエストアール様って呼んでたじゃない。……まぁ、幼馴染なんだもの、スティって呼ばれるのは嫌いじゃないわ。そのまま敬語も外して欲しいわね」

「う、うん……わかった」


いつも通り話せそうだと、確認が取れてホッとした。

スティがこの調子だと、恐らくクルエラやジャスティンも他人になってしまっているかのせいが出てきて不思議な気持ちになっていた。


「さ、早く準備して行くわよ。グランツ様が、外でお待ちになっているに決まっているわ。あの編入生に、婚約者を取られてはいけないのよ!」

「そ、そうだね……!」


慌てて身支度を済ませて、私を置いていくこともなくむしろ手伝ってくれた彼女はゲームの世界でもシャルティエといい関係を築いていたようだ。ライバルキャラの話というのはなかなか見れないため、ファンディスクの世界に来た気分になって容易く受け入れてしまった。





学生寮を出ると、グラムとクリス様がこちらに気付いて同時に振り返って手を振ってくれる。習慣というか、身に染み付いた癖で手を挙げかけたがすぐに我慢してぺこりと頭を下げた。


「おはようございます。グランツ様。お兄様も」

「おはよう」

「おはよう、スティ。シャルも」

「おはようございます」


私はファンディスクに迷い込んだファンだと言い聞かせながら、無駄に目立たぬように簡単に挨拶を済ませると、歩き出した彼らの後ろをまるでストーカーのようについて歩く。

スティは、グラムにぴったりでクリス様もそれを微笑ましげに見ている。ゲームの世界でも、どれだけ高飛車な態度をとっていてもクリス様はスティの味方をしていた。だから、この光景をは割とわかっていたという感覚だ。


――一応、私もこのメンバーの中の幼馴染の一人なんだけど、この世界ではきっと目立たないスティの引き立て役になっているな……。


「そういえば、聞いてくださいな! シャルが、今日懐かしい夢を見たようで、私のことをスティと呼んでくださったのです!」

「そうなのか?」

「……へ?」


スティが、お嬢様口調なことに気付いて頭の中で違和感と戦っていると、一人の世界に入っていたばっかりに、突然話の矛先がこちらに向いていたことに気づかず、間抜けな声が出た。その瞬間、一気に視線が集中する。


「えっと……、ごめんなさい。話聞いていませんでした……」

「やっぱり、体調が悪いの?」

「そういうわけでは」

「さっきみたいにスティって呼んでちょうだい?」


なんだか急に目立って、恥ずかしくなってしまう。とりあえずスティを、今までのように呼べば満足するのだろうか、この高飛車なスティを刺激したらどうなるかわからないからこそ言うこと聞いておいたほうが良さそうだと判断して、丸眼鏡を外して見上げた。


「スティ……? なんだか恥ずかしい……」


言われて人の名を呼ぶのは、なんだか照れくさく感じて顔が赤くなってしまった。周りの反応を見たくなくて、ふと視線を下げてしまうと、スティに力強く抱きしめられた。


「わぁっ!」

「シャル、貴女ってそんなに可愛いことが出来る子だったのね!」

「えぇっと……!?」

「そういえば、シャルは目が悪かったのか?」

「い、いえ。顔を隠すために……」


突然クリス様にも絡まれ出して、今日一日みんなの様子を観察していようと思っていた予定はすっかり崩れ去ってしまった。




学園に到着すると、他の生徒たちがスティ達に視線が集中する。学園の有名人だから余計だろう、いろんな意味で目立って困る。

通学中に、スティの取り巻き達が少しずつ集まりだして私と横に並んで歩いていると、雰囲気が変わっただのといろいろ言われてしまい、苦笑いで適当に流すしかないと上手く誤魔化した。


「おはようございます。グランツ様、今日もお元気そうですね」

「おはよう、クルエラ」


金色の髪の女子生徒、そしてこのゲームのヒロインであるクルエラはふわりと微笑み、グラムに挨拶をすると、スティがむっとした表情をする。こんな表情、私が転生してから一度だって見たことがない。

珍しいものを見れた気持ちで浮かれていると、クルエラはクリス様の方を向いて意味ありげに微笑んで軽く挨拶をした。ちらりと表情を盗み見ると、にこりと笑って会釈をしていた。


――これは、逆ハーレムルートとか? だとすると、ゲーム通りならスティは最後断罪されて国外に追放されてしまうなぁ……。


夢の中とは言え、親友が辛い目に遭う場面は見たくはないのが本音だが、だからと言ってここで変に出しゃばってしまうとややこしいことになるだろう。

どうせ夢の中なら、原作通りの展開を見守ろうと思う。


「でも、この世界はねじ曲がった方なのか、それとも本来の原作の方なのか……」

「シャル? 何の話?」

「え!? あ、あはは……ごめんね。昨日読んでいた本の内容が気になって……」

「あら、そうなの? 考え事していたら転ぶわよ。ちょっと鈍臭いところがあるから気を付けてちょうだい」

「は、はい!」


グラムとクルエラのやり取りのせいで、こちらに八つ当たられてしまった。

そりゃ婚約者が、編入したばかりの女子にとられたら気に入らないのは当然だ。そこで、これはおそらく原作の世界だということがわかった。

スティもグラムも、二人は幼い頃に両思いになっているから今はすれ違いを起こしているのだろう。


「す、スティ? えぇっと、グランツ様はきっと……あぁ、そう! スティが、クルエラ様に突っかかっている事を誤解をされているのかも……」

「誤解……? 私は、当たり前のことを言っているだけなのよ? どうして誤解をするのかしら?」

「だから、そのぉ……。スティの圧が強すぎて、クルエラ様がおびえているのかなぁと……」

「なんですって!?」

「ひぃ!」


つい、漫画みたいなビビり方をしてしまった。原作のスティはなかなか、話が通じないようで、これは一筋縄で行かないかもしれない。しかし前述の通り、余計なことをせず事の顛末を見守ると決めた建前、これ以上は変に助言ができない。

素直に取り巻きらしく、クルエラにクレームでも投げかけておこう。


「ちょっと! クルエラ様!?」

「は、はい! えーと、フェリチタ辺境伯の……」

「ご存知でしたか、ありがとうございます。私の事は、シャルティエで結構です。ところで、王太子殿下に気軽にお話をされるのは婚約者のエストアール様へ失礼ではありませんか?」

「あ……、すみません……。おはようございます。エストアール様」


少し強めに注意をすると、しゅんと落ち込んだ様子で頭を下げてスティへ挨拶をする。まさか自分に挨拶をされると思わなかったのか、スティは動揺気味にたじろぎながら顔をぷいっと背いた。


「おはようございます。クルエラ様、別に私の事が見えていなかったのであればそうおっしゃればいいのではなくて?」

「い、いいえ! そんな事は!」


――やばーい! すごいお嬢様だ!! すごい! ライバル令嬢っぽい! 今のところ悪役じゃないけど!


内心はしゃぎまくっている私をよそに繰り広げられる光景は、そこそこ世知辛いものになってきていた。


「エストアール、お前はクルエラにそういう態度でしか接する事が出来ないのか? もっと優しくしてやれないのか?」

「そ、それは……。クルエラ様が、グランツ様にベタベタと……」


グラムに強く注意されるスティは、おろおろと今にも泣きそうな顔をしているが、強く言い返せないのかカバンからセンスを取り出して顔をパタパタとはためかせながら目をそらした。


「失礼しますわ! いくわよシャル!」

「は、はい!」


この場から逃げたい気持ちでいっぱいになったスティは、私を引きずるように連れ出した。去り際に、私はちらりとクリス様をみると、こちらを一切見ていなかった。


――なんだかさみしいな……。




つづく

400ブクマまで行くとは思わなくて(というか、思ったより速いペースでビビっています;)超特急で書いてしまったので、またのちのち校正しようと思います。


いつかやりたかったネタです笑


スティがいまいちお嬢様口調にならなくてちょっと書きながらもやっとしてしまってます…。

身内には崩した口調で話している設定に引っ張られすぎていますね…。


次回は450ブクマまでには用意できるように頑張ります!


本当にブックマーク登録数400件ありがとうございます!(*_ _)


誤字脱字報告などもいつもありがとうございます!

未熟ではございますが今後も何卒よろしくお願いいたします。

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