ブクマ200件突破記念感謝SS『王宮図書室の天使』
ブックマーク件数200件突破記念感謝SS
エストアールは、親の仲により父親と共に王宮に呼び出されていた。
五歳の彼女は、幼いながらもここがとても大切な場所だと理解して大人しく、そして少し不安げに俯いていた。
伯爵家の令嬢として、王宮に来ているのなら顔を上げて堂々としていなければならないのに、落ち着かないこの場所はエストアールには辛い場所だった。
「エストアール、今日は王太子殿下のグランツ様とお会いするんだよ」
「……グランツさま?」
手を繋いでいた父は、小さなエストアールの前にしゃがみこんで、不安げにしている彼女の頭をぽんと撫でた。
大きくて、立派な父の手が大好きなエストアールは、それだけで落ち着かない気持ちが少し和らいだ気がした。
王宮に入るなり、一室に招かれたシュトアール親子は国王とエストアールと同じ背丈の少年と顔を合わせた。
国王の側にいるのであるからこの少年が王太子だろうと分かると、父シュトアール伯爵は膝をついて胸に手を当て恭しく挨拶をした。
「グランツ王太子殿下、お会い出来て光栄です。大変大きくなられましたね」
国王と幼馴染であるシュトアール伯爵は、赤子の時の彼しか知らない為、そう挨拶をすると、グランツと呼ばれた王太子は向き直って頷いた。
「ありがとう」
人見知りをするようで、それだけ返す。
彼の小さな手は、国王の手を握っていて幼さが垣間見えるのが愛らしく感じた。
そして、そのシュトアール伯爵の隣に立つエストアールも胸に手を当てて片手でドレスの裾を持ち上げて稚拙ながら挨拶をする。
「はじめまして、はくしゃく家のむすめ、エストアール・シュトアールです」
「エストアール……」
グランツは、呆然とそのエストアールの姿を見つめている。
顔を上げたエストアールは、グランツと目が合い、そして少し頬を赤らめて、シュトアール伯爵に抱きついた。
「ははは、エストアールは恥ずかしがり屋で申し訳ございません。よろしければ仲良くしていただけると嬉しいです」
「……うん」
幼いグランツは、一つ年下のエストアールに少し頬を染めながら手を差し出した。
それを見たエストアールは、父から離れてその手を見つめる。
「よろしく。スティって呼んでいい?」
「は、はい! かまいませんわ」
まだまだ言葉遣いの練習中だったエストアールは、最近褒められた貴族の娘の言葉遣いで返事をした。
差し出されたグランツの小さな手を取って、二人は部屋を出ていくと、それを国王と伯爵は微笑ましげに見送ると、近くにいた使用人に二人の様子を見てくるように指示した。
手を繋いで、幼い二人には異常に広く感じる大きな廊下を歩いていると、エストアールはその手をじっと見つめて歩く。
その視線に気づいたグランツは、その手を見たあとに眉を下げた。
「……手をつなぐの、いや?」
「ち、ちがいます! そうではなく……」
人見知りのグランツは、勇気をだして手を差し伸べたつもりだったが、もしかして嫌々だったのではないかと不安になった。
悲しげにしているグランツに慌ててそれを否定したあと、言いにくそうにその手を握り返す。
「おとこの子と、手をつなぐの……はじめてで……もうしわけございません」
「あぁ……そうなんだ」
エストアールの、照れ臭そうにはにかんだ顔にグランツは小さな胸をときめかせながら更に手を引いて歩き出した。
「スティ、本はすき?」
「はい、おやしきでよんだりしますわ」
「よかった。じゃあ、お気に入りの本があるから、いっしょに本をよもう」
外に出て使用人達に心配をさせてしまうだろうという気遣いで、一番安全な図書室へと連れて行った。
国王の指示で見守っている使用人達に気付かないまま……。
二人は図書室に入ると、自分専用の本棚へ案内し、ずらりと並んだ本棚を見せると、エストアールは目をキラキラと輝かせた。
少し猫目なエストアールの目は、嬉しさと興奮で見開かれて瞳が宝石のように輝く。
「とても、すごい数ですね」
「うん、ちちうえが本がすきだと話したら、たくさんよういしてくれた」
「私が、よんでもいいのですか?」
グランツの為に用意させた本を自分が読んでいいのかと不安げに見つめると、先程の嬉しそうな顔が消えてしまったと同じように悲しそうな顔になる。
「もちろん、よみたい物えらんで来て。いっしょによもう」
「っ! はい!」
嬉嬉として小走りで本棚に近寄り、並ぶ本をゆっくりタイトルを眺めては開いてを繰り返た。
そのうち、気に入った本を手に取ると、グランツの所へ戻り、大きなソファに腰掛けて一緒にくっついて読んだ。
「エストアール、そろそろ――おや?」
「これは……」
帰りの刻限に迎えに来たシュトアール伯爵と、様子を一緒に見に来た国王は、ソファで寄り添って眠る小さな天使に笑みを零した。
その後、エストアールは、時折王宮へ行ってはグランツと読書をするのが楽しみになった。
結構前に200行ったらまたなにか書きます的なことを行っていたので、短いですが知り合いに「グランツとエストアールの話が見たい」と言うリクエストも頂いておりこれにしました。
二人の出会いは結構意図的なもので、国王、辺境伯、伯爵の三人は幼馴染だけど、シャルティエとグランツを引き合わせなかったのは、単純に住むところが遠いからっていうのもあります。
あと、フェリチタ辺境伯のところにはシャルティエの娘一人しかいないので、嫁がせるようなことがあれば辺境伯を継ぐ人間を後々心配してたというのもありますね。
作中、シャルティエもクリストファーに嫁いで実家は大丈夫か的な事を案じていました笑
将来的には、男の容姿を受け入れて継がせるか、元貴族のフランチェスカ家をベルンリアで手伝わせているから、様子を見てどうするか……みたいな事も考えましたが、そこはうやむやにしておいて良いかと放置しています(´Д`)
話が戻るんですけど、グランツは人見知り+王族なのだから毅然としていなければいけないっていう教育を受けたばかりのため、エストアールを子供なりにエスコートしたり気を利かせたり一生懸命頑張って遊んでたのです笑
この頃はクリストファーも未熟児で生まれて体も弱かったんじゃないかなと思いまだ安定していないから、なかなか外に出られない状態が続いて友達にすらなっていないかなーと考えています。
なので
グランツとエストアールが知り合い、次にクリストファーが加わり、三人とシュトアール伯爵の付き添いで最後に辺境地のベルンリア領に旅行を兼ねてきてシャルティエと仲良くなった流れになります。
そのうち、シャルティエが皆と知り合った幼少期の話も書こうと思います。
次は300ですかね……?いえ、行かなくてもきっと書くと思うのでご心配なさらず!!
それでは、ブクマ200件超えありがとうございます!
これからも頑張ってまいります!(*_ _)




