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88クルエラ視点

2019/08/30 校正+加筆

 


 クリストファー様にエスコートされたシャルに話をかけると、いつもと違う雰囲気の彼女についつい同じ女なのに見惚れてしまった。

 すぐに持ち直して軽く挨拶だけ済ませると、二人の時間を楽しんで貰うためにジャスティンとその場を離れた。


「前髪の位置を変えるだけで、あんなに雰囲気が変わるとは思わなかったわね」

「本当! 私も髪型変えてみようかな……」

「クルエラはそのままでも可愛いわ!」

「あはは……、ありがとう」


 今夜もケヴィン様にエスコートして頂けないからと、スティがわざわざグランツ様に私のエスコートを頼んでくれたおかげで貴族として恥ずかしい思いもせずに会場に入る事が出来た。ダンスパーティーの時はどうしようもなかったけど……。

 貴族は普通の社交界だと、エスコート無しで会場へ入ると何を言われるかわからない。厄介な制度というか風習というか……。

 講堂のステージで、もう十六回も見たケヴィン様の学園長の挨拶と乾杯の音頭の捻りのなさに笑い、その後に始まったダンスをぼんやり眺める。

 すると、跪いてシャルに踊りの相手を求めるクリストファー様を見て「幸せそう……」と無意識に呟く。

 誰かと適当に踊るかどうか悩みながら周りを見てみるけれど、グランツ様はもう既に人だかりが出来ていて割って入れそうにない。

 ダンスに誘われるためにうろつくか、適当に見つけるか迷って結局講堂を出て散歩する事にする。


「……クルエラ、踊らないのですか?」


 講堂を出てすぐの庭園のベンチに座ろうと歩いていると、背後から後を追ってきたドレス姿――ではなく、燕尾服姿のクロウディアが声を掛けてきた。

 今日は男の装いで、今までと違い少し背が高くて黒い濡鴉のような真っ直ぐ伸びた髪は、肩から流すように束ねられている。切れ長の目は愛想よく笑みを浮かべていた。

 容姿だけは、間違いなく女性受けするだろう中性的な彼は、どういうわけか私を追いかけてきた。


「……踊る気分にもなれなくて」

「では、私と踊りますか? …と言うか、少しの間ここで一緒に踊って下さい」


 口角を持ち上げてにこりと気さくに笑い、こちらへ手を差し出すクロウディアに、私は戸惑い気味に見上げる。


「少しの間って?」

「少ししたら元の姿カラスに戻ってしまうので、私の思い出作りにでも付き合って下さい――と言う事にして下さい」


 意図が分からず、眉間に皺を寄せながら怪訝そうにその手を取って仕方ないと講堂から漏れる楽団の演奏に合わせて踊った。

 彼は一応、ダンスの心得はあるようでリードも上手く、彼の手は女性の姿をしている時のそれとは違う。

 シャルが言うには、首元は男性的な太さがあるといっていた。首元は年齢を偽れないと聞いた事があるが、性別もそうなのだろうかと踊っている最中も首元に目が行く。

 ただ、そうしていると不思議と寂しかった気持ちは多少和らいだような気がして、少しずつ笑みに戻っていった。

 しばらく機嫌よく踊っていると、クロウディアが「あっ」と声を漏らし、突然淡い光を放ってカラスの姿に戻ってしまった。

 カラス姿のクロウディアは、私の肩に乗り、頬擦りをして「ごめんなさい」と言っているような気がしてその嘴をツンツンと指で突いた。


「いいよ、私こそありがとう」


 クスクスと笑っていると、草木が少しざわめき立つ。

 ケヴィン様の張った結界の中だと言うのに落ち着きの無くなる不思議な感覚に周りを見渡すと、そこは先程居た講堂の外ではなく、学園校舎の屋上にある庭園に来ていた。


「――え、ここは……どうして?」

「私が転移魔法を使ったんだ」


 きょとんとしていると、背後から声がして振り返るとそこには正装をしたケヴィン様が目を細めて微笑んで立っていた。

 先程まで学園長としてのいつもと変わらない装いだったのが、ここに来るまでに着替えたようで髪もしっかり整えられていた。

 あまり見ない格好に見惚れていると、困った表情へと変わり私の方へと歩み寄ってくる。


「あの、正装しているケヴィン様があまりに素敵で……見惚れてしまいました」

「ははは、本当に素直だね君は……」


 肩に乗っていたクロウディアはいつのまにかどこかへ飛んで行ってしまい、二人きりの屋上で私は目の前に立つケヴィン様の手を握った。


「ケヴィン様のいないパーティなんて、つまらなくて寂しいです……」

「生徒と学園長が、流石に会場で入るわけにはいかないからね。申し訳ない事をしていると思う」


 きゅっと手を握り返しながら申し訳無さそに憂いを帯びたように影を差した。しかし、それを頭を振って否定する。


「でも、仕方ないですから。それでここに呼び出したのは……?」

「勿論、私の可愛くていじらしい恋人のために着替えもして来たんだ。ダンスの相手をして貰えるかな?」


 一度離れて、スッとスマートに差し出してくる大きな手にドキンと胸が高鳴る。ドクンドクンと激しく脈打つ鼓動で耳の鼓膜が震える。

 しかし、気を遣ってここで人目に付かない場所でも踊ってくれるのだと分かると嬉しくて視界が涙で歪んでみえた。

 早く返事をしなきゃと慌ててその手を取ると、にこりと微笑んで引き寄せられた。

 講堂での楽団の音楽が屋上でひっそりと流れ始め、それに合わせてゆっくりとステップを踏んで行く。ダンスは十六回も踊り続けている、もう慣れたものだった。

 ただ、初めて踊る相手に少しだけ落ち着かない胸の高鳴りは、どうしても慣れることはなかった。


「ケヴィン様」

「ん?」


 踊っている最中、名を呼ぶと慈しむようにこちらを見下ろしてくれる。

 優しい眼差しにどんどん引き込まれそうになる私は、目を閉じて言葉を続けた。


「私の十六回目の聖夜祭、いい思い出にして下さってありがとうございます――ケヴィン様、大好きです」


 顔を赤らめたまま思うままに告げ、そこで目を開き彼の顔を見ると、目を見開いて驚いた表情をしていた。

 いつも余裕たっぷりの笑みを浮かべる彼にしては珍しい顔だ。

 少ししてやったりな気持ちになり、満足げに笑うとステップを踏む足が止まり、ケヴィン様は黙り込んだ。


「……? ケヴィ――んぅっ」

「っ……これでもいい大人を演じ続けていたのに、君と言う娘は……可愛らしい事をしてくれる」


 唇を強引に奪われて言葉を紡ぐと、ペロリと舌で唇を舐めずった。

 こんな野生的な一面を見てしまい、心臓が爆発しそうなときめきを感じて一度失神してしまうかと思った。


「今夜は、朝まで私と踊って貰おうかな」

「――たくさん踊らせて下さい」


 再び口付けをした後、フッと庭園にいた私達は姿を消した。


一応このお話、「クルエラがゲーム外の人物と結ばれる事が目的」だったのでクルエラとケヴィンの話も書きました(*´v`*)


スティは今頃部屋の窓から羨ましそうにむくれてると思います笑

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