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2019/08/28 校正+加筆

2019/11/07 修正




「――はい、採寸はこれで終了です。お疲れ様でした」

「ありがとう」

「シャルティエ様は、ウエストが細くいらっしゃるのでコルセットもそこまで無理にきつく締め付け無くても良さそうですわ。愛らしい容姿でいらっしゃいますからドレスも良くお似合いになるでしょう」


 仕立屋が訪問に来て採寸を済ませると、上機嫌で手放しに私の事を褒めてくれるのは良いのだが、私はそれよりもデザインとかその類の話がしたい。人生で一度きりのウェディングドレスのデザインを知りたくてそわそわしながら愛想笑いをする。

 だが、そんな話題は微塵もなく、用件を済ませてそそくさと道具を片付けて、私もニーアに手伝われて着替えを済ませると、腑に落ちない私にどう悟ったのか分からないがふと耳打ちをした。


「シャルティエ様、ドレスに関してはクリストファー様にお任せ下さい」

「え?それって――」

「それでは、お送りして参ります」


 言うだけ言ってさっさと出て行く彼女の背中を唖然と見送る。

 誰もいなくなった部屋で、一人着替えてソファに腰掛けニーアの真意を考えていると、ノック音と共にこちらから返事をする前に入って来たのはクリス様だった。

 私の顔を見るなり、どこか安堵した表情になりこちらが小首を傾げると近付いてきた。


「お疲れさま」

「クリス様、あの……」


 私が端に寄るとその隣に腰を掛けるクリス様。

 先程ニーアの言っていた台詞の真意を確認したかったが、空気を読んで聞かない方が良いのではないかと思い至って黙り込んでしまう。

 私の意を汲んだのか、くすりと笑うとぎゅっと手を握りさらりと片手で私の下ろした髪を掬い取った。その動作があまりにも紳士的で見入ってしまう。

 掬い取った髪には、唇が添えられて上目遣いでこちらを見た。目と目が合い、その瞬間胸の高鳴りが激しくなる。

 こういう行為は人生でも殆どない経験だから鼓動が落ち着かなくなる。乙女ゲームやロマンス小説でよくある行動だが、心臓に悪い。

 恥ずかしくなって目を逸らすと、その髪は解放され今度は頬に触れた。


「まだ恥ずかしい?」

「ま、まだ慣れなくて……」

「じゃあ、こういう風に触れられるのは僕が初めてなのか?」


 強い熱視線を浴びせられて居たたれなくなり、素直に頷くと嬉しそうに微笑んでこめかみにキスをした。

 クリス様に押され気味になり、かぁっと赤面した私は顔を覆って隠す。


「クリス様、今日は積極的すぎて……あの……っ」

「もっと僕の行動でドキドキして欲しい」

「えっと……」

「シャル……、こんな事を聞くのはタブーかも知れないから答えなくても良い」


 顔を覆う私の手を掴んで、強引に離させて目を合わせるとそのまま続けた。


「前世では恋人はいた?」


 私の記憶の中の男の影でも感じたのだろうか、過去――つまるところ前世の男性経験の話を聞いているのだと理解すると、赤い顔のまま真っ直ぐと見つめ返す。


「私は……心から人を好きになったのは――愛しているのはクリス様です」


 愛してるなんて重かっただろうかと、柄にもない事を言ってしまい気恥ずかしくなりながらも目を逸らさずにきちんと告げれば、クリス様の顔に浮かんでいた不安が取り払われたようだった。

 しかし、そのその勢いで唇を塞がれて戸惑い気味に目を閉じた。

 最初は唇を這うように舐め、次第に唇を割って中へと舌が侵入してくる。受け入れるように少し口を開くとそのまま私の舌も絡め取られてしまった。


「ん……」

「シャル……もし嘘でも嬉しい」

 疑っている訳ではない事はよく分かっているからそれに対して不快に感じることなく、一方的な口付けを受け入れ続ける。

 次第に激しくなっていくキスに、ぎこちなく服にしがみつきながらこちらからも応えた。


「んっ……くりす……さ、ニーアがっ……」

「……大丈夫、二人きりで話がしたいと伝えてあるからしばらく誰も来ない」


 キスの合間にそう告げられると、箍が外れたようにお互い口付けを続けた。

 一頻り落ち着くと、酸欠になった私はクリス様の肩に倒れ込んでそれを受け止めてもらう。肩で呼吸をする私を優しく抱き締めると「ごめん」と言われてしまったが、首を横に振った。


「幸せです……。幸せ過ぎてどうかしてしまいそうです……」

「――本当に歯止めが効かなくなりそうだ」


 肩を抱いて引き寄せると、頭にちゅっと口付けを落とす。

 内心、いっそ歯止めが効かなくなっても構わないと言いたかったが、まだ私は二人の時間を大事にしたいと思いそれ以上は何も言わなかった。

 その代わり、擦り寄って私の出来る限りで甘えた。


「恋人はいましたけど、恋人と言いますか……ただお付き合いをしただけと言うか。人生経験になっただけです」

「心から好きにならなかったのか?」

「はい、なんだか違うなって思ったんです。友人というか、そんな感覚から抜けませんでしたね」


 ふふっと笑いながらそう伝えると、クリス様は私の髪を指に絡めて弄んだ。



報告をいただき82話が紛れ込んでおりましたので切り落としました。

対応が遅くなり申し訳ございませんでした。

ご報告くださいました方本当にありがとうございました。

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