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2019/08/25 校正+加筆

 



 学園祭二日目も無事に終了し、私達は最終日の三日目の早朝に多目的室に実行委員会のメンバーを集めた。

 何事だと緊張感でピリピリしている中、私とクルエラ、そして最終日は実行委員会のサポートに徹すると申し出てくれた生徒会役員全員が彼らの前に立っていた。

 生徒会役員が、ここにいる段階で彼らにとってはただ事ではないと思うだろう。それくらい緊張通り越して卒倒してもおかしくない存在なのだ。

 それが、突然前触れもなくそこにいれば落ち着きもなくなるというものだ。


「皆さん、朝からわざわざ集まっていただきありがとうございます。今日集まって貰ったのは、委員長のクルエラの意思ではなく、私がお願いした事です」


 一歩前に出て立ち、周りを見回してから微笑んで緊張感のある空気を緩和させる。

 それだけで、少しピリついた空気が和らいだ。


「今日は最終日です。沢山、ご迷惑をおかけして不愉快な思いをした事かと思います。――七不思議によるトラブルも沢山ありましたからね」


 くすっと笑ってみせると、それにつられてハハハと笑い声が生まれた。

 掴みも良い所で、私は変わらず笑みを崩さずに続けた。


「本日は、生徒会の方々もサポートして頂く事になりまして、主に学園内の巡回を中心にやっていただきます。皆さんは、各持ち場のいざというトラブルに対処する準備は整えておいてください。ミスコンと、腕自慢大会は、思ったより観客が多いようなので、国王陛下から派遣された方に頼りきりにならないように気を配ってください」

「はい!」


 全員の気持ちいい返事を聞いて、満足げに頷いた。

 そして、双子であるグレイスディア姉妹の方を見ると、二人はどきりと何か言われるのかと身構えた。


「グレイスディア姉妹は、昨日迷子のお子様の面倒を見て下さったそうですね」

「は、はい!」

「ご両親がくれぐれも貴女達によろしくと仰っていました。大変良い事しましたね。私がやった訳でもないのに褒められてしまったので……」


 昨日はあれから二日目が終了した後、学園長に呼び出されてディオの事後報告を受けて、そのついでに彼女達の善行を褒められたのだ。

 実行委員会としての教育が行き届いていると褒められてしまい、照れくさくなったためそのはけ口にグレイスディア姉妹を褒める事にしたのだ。

 案の定、彼女達も嬉しい半分照れくさいのか姉妹二人手を繋ぎ合って「やった!」と笑い合って、周りはそれを賞賛するように拍手を送った。

 ここで、あからさまに嫉妬せずに拍手できるのも素晴らしい事だ。

 普通なら、嫌な顔一つでもする人間がいていいものだが、ここまで実行委員会を続けられている段階で人間性がわかる。

 私も、誇らしい気分になった。


「他の方も、沢山の方を助けてくださったかと思います。報告に来ていなくとも、皆さんの行った事は今後に役に立つ事もあると思います。無駄だと思わず最後まで努めてくださいね」


 私の言葉で締めくくり。

 その場は解散したが、生徒会役員と私、クルエラは残った。

 スティは、今日は国王夫妻に呼び出されてしまったようで不在だ。

 最終日だというのにどういう事だろうと考えたが、グラムがすぐに戻ってくると言う為渋々ながら頷いた。


「……ディオ・フランチェスカの件ですが――」

「何かあったのか」


 視線を逸らしながら、言い辛げに言葉を詰まらせると、グラムが急かすように尋ねた。


「……一先ずは、朝に警備隊に連れられて王宮に連行されたようです」

「そうか、とりあえず安心という事か」

「マーニーの暴走からの兄の暴走なので、正直まだ終わっていないような気がするのですが、今日一日無事に終われば安心かと思います」


 あんなに押しの強い男に絡まれた事があまりなかったせいで、動揺して腰を抜かしてしまったが、こういう事にもなれていかなければならないなと気が遠くなった。

 貴族社会の方が、もっと泥沼状態だろうからだ。


「マーニーの件は、俺がちゃんと止めておけばこんな事にはならなかったはずなんだ……」

「そうですね。反省してください」

「マルシェー!」


 俯いて自分の行動を深く反省しているホースに、マルシェは容赦のない言葉を投げかけ場の空気がまた和んだ。

 この二人はなかなか相性がいいようだ。


「以前のマーニーのようにディオが逃走する可能性もあるので、最悪の事態に備えていただけると幸いです」


 ペコリと頭を下げて頼むと、クリス様はポンポンと大きな手で私の後頭部を撫でる。

 顔を上げると、皆はにこやかに笑って頷いてくれる。


「よほど怖かったんだな。今日は、一日一緒に居ようか?」

「じゃあ俺が……うぐっ!」

「貴方は、空気が読めないんですか? そこまで頭悪いんですか? いっそ死にますか?」


 ホースが申し出ようとした瞬間に、その鳩尾に拳を殴り付けるそのまま床に崩れ落ちる姿をゴミを見るような目で見下ろすマルシェの顔は、もはや信用ゼロだ。

 これはこれで、いい関係を築けているのではないかと客観に思っている自分がいる。


「二人は仲いいですね」

「シャルティエさん止めて下さい。こんな下劣な男と仲が良いなんて、死んでも嫌です。むしろこの男を殺したいです」

「そこまで!?」

「ははは、随分嫌われたな」


 和みきった多目的室でしばらく笑い声が響いた。



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