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2019/08/25 校正+加筆

 


 とうとう、学園祭当日を迎えた。

 ここまでに色々あったが、本当に感慨深くなる程の盛況ぶりに私も頷いて誇らしくなる。

 一般人の出入りも可能としているが、身分確認を入園前に行っている事も相まって、今の所大きなトラブルも無いようだ。

 この学園内で問題起こせば、王家の管轄でもあるから不敬になりえないし、人生を棒に振りたくないだろうから問題起こすことは少ないと信じたい。


「シャルティエ様、当日着で手配していた氷が届きません!」

「ストックが事前に用意してあると思うので、そちらを使ってください。他の方で手が空いている方が居れば、業者と連絡をとって確認してください」

「はい! ありがとうございます」


 小さいトラブルはあるがこれくらいなら問題ない。

 事前に対処出来るように入念にチェックも入れて来たから〝最悪のフラグ〟を回避しているはずだ。

 私も、慌ただしく学園内を回っていると、前方から私の姿を認めるなり小走りでこちらに近寄ってくるのはベルンリア領から来て貰ったメイドのアリッサだ。


「シャルティエ様、息災でしたか?」

「もちろん、実行委員会で忙しくしてるくらいだから」

「お体は壊されていませんか? 旦那様も奥様もとても心配してらしたので……」


 彼女は私の幼い頃によく遊び相手をしてくれた侍女で、焦げ茶の髪を後ろで結って団子にして一つに纏めている。

 瞳は空のように澄んだブルーで、そこがまた心を落ち着かせる作用でも秘めているかのようだ。

 顔立ちも美人な方で、シャルティエが大人しくなってしまってからも寛容に優しく寄り添ってくれた人物だ。

 彼女は、第二の母のような存在だから気兼ねなく接する事が出来る。

 ベルンリア領で、スティと二人きりで話をしていた時もお茶を用意してくれたのは彼女だった。

 両手で大きなトランクを持ちながら、平然とした表情でわざとらしく「心配だわ」と言う姿には重さを示すような素振りが一切見受けられないが、学園内をうろつくのであればそれは邪魔になるだろう。


「私は大丈夫だから。……それはそうと、アリッサはどこに泊まるの?」

「はい、旦那様がわざわざ私のために宿屋に一室を借りていただきましたので」

「治安がいいとは言っても、女性一人で大丈夫?」

「問題ありません。何かあればすぐに人を頼らせていただきますので」


 鼻息を荒くして、ふんっと得意げに言う彼女はこう見えて護身術を身につけているらしく力も強い。たくましい女性だ。

 しかし、男性相手になるとどうなるかは分からないから少し心配になった。

 何事もないのが一番だが、彼女がそう言うならきっと大丈夫だ。


「そのトランクは?」

「こちらは後夜祭にと、旦那様がシャルティエ様にご用意してくださった物ですよ。後で少し調整をしたいので、どこか場所をお借りできればと思うのですが……」

「わざわざ仕立て屋に頼んだの!?」


 部屋にあるパーティードレスで構わないと告げていたのだが、父が私からの頼まれ事が余程嬉しかったようで、張り切って作らせたらしい。

 大きいトランクは、それが一式入っているのだろう。

 それを想像しただけで、アリッサの大変さが不憫に思った。


「それに、去年見た時よりお体がふっくらされたように見えるので、ご実家に置かれているドレスは全て奥様が慈善活動の際に寄付してしまわれました。今日は一新するための採寸も行います」

「えぇー……」

「あぁ、太ったと言う意味ではございませんよ。健康的に戻られて嬉しいのです」

「え、えぇ……うん……、ありがとう」


 アリッサの手に持ったその重いトランクをどうにかしてあげたくて、今なら多目的室に行けば誰も入ってこないだろうとそちらへ案内した。





「あ、シャル!」

「クルエラ、多目的室使ってもいい?」

「良いけど……。あ、こんにちは」

「ご機嫌よう。夏期休暇の際に遊びに来てくださって以来ですね。クルエラ様」


 多目的室へと連れてくると、丁度中から出てきたクルエラを発見して声をかける。

 クルエラはアリッサに気付いて会釈をした後、どうしてここにフェリチタ家のメイドがいるのだと首を傾げた。


「アリッサは、今日から学園祭の間だけ滞在するの。後夜祭のダンスパーティーの着付けとかも手伝った貰う予定で」

「なるほど! 私も、お父様にお願いすれば良かったかなぁ」


 クルエラは十六回ここで過ごしているのに、その発想に至らなかったのは何故だろうと考えた。

 しかし、よくよく考えると、誰も教えてくれなかったか、グラムや攻略者がそれらを手配してくれたりしていた事の方が多いのだろう。

 自分で、どうにかすると言う事がまだ慣れていないに違いない。

 そう悟った私は、アリッサの方へ視線を向けると、それに気づいてニコリと愛想よく笑う。


「アリッサ」

「はい、クルエラ様がよろしければ。ただ、シャルティエ様の方を優先させていただきますので、その後になりますが」

「え、いいよ! 自分で出来るし、ジャスティンも居るから」

「良いの良いの、私も気付いてあげられたら良かったんだけど。貴族なんだからちゃんとした方がいいよ」

「ありがとう……シャル」


 歓喜のあまりに、クルエラは私の体をギューッと強く抱き締める。

 こうやってみると、クルエラは私より背が高い。

 スティは、クルエラよりも少し高い。

 この世界の女子は、とにかく背が高い……ずるい。

 それに応えるように、私も背中に手を回して抱き合った後、多目的室の使用許可をもらって鍵を閉め、アリッサにドレスの調整をしてもらった。


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