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2019/08/16 校正+加筆

 


 いじめの典型的な洗礼を受けたその日は、スティと寮に帰り昼寝をして次に目が覚めると日が沈んでいた。

 ぼんやりとベッドの上で上半身を起こして窓の外を見ていると、扉が開かれて入って来たのはスティとクルエラだった。


「あ、起きたのね。体調はどう?」

「別に病気じゃないから大丈夫。クルエラも心配かけてごめんね」

「全然! クリストファー様とグランツ様が随分心配してたけどね。お見舞いするって聞かないから大袈裟だって言っておいたよ」


 水をかけられて着替えがないと、女の都合で帰っただけだからわざわざ見舞いなんて大事なことをされてしまったら申し訳ないから、お見舞いなんてやめて欲しい。

 昨日の酷い頭痛が引いてからは、結構体は楽な方だ。

 ベッドから出て身なりを整えると、ソファに腰を掛けるなり目の前にはスープとパンが置かれていた。

 ここに戻ってくる時に持ってきてくれたのだろう、取っておいてくれた事に感謝して「いただきます」と告げて早速口に運ぶ。


「寝起きだからそんなに食べられないかと思って、これだけにしたんだけど、足りるかしら?」

「十分だよ。ありがとう」

「足りなかったら、ジャスティンに頼んでお菓子を作ってもらうから言ってね」

「二人共、本当にありがとう……」


 二人の優しさが心に染みて、昨日はマーニーに殺されなくて本当に良かったと安堵する。


「……おいしい」

「……ふふっ」


 食事をする私を見て、嬉しそうに笑う二人にちらりと視線を向けると、何故か微笑ましげにしている。


「……なに?」

「うん、シャルって可愛いなって」

「へあ!?」

「あぁ、スプーン落ちるよ」

「クルエラが急に変なこと言うから……!」


 さらりといきなりの可愛い発言に、心の準備ができていなかった私は手元が緩んでスプーンがスープの中に危うく沈みかける。

 それを慌ててクルエラが支えてくれたおかげで事なきを得たが、私もなぜ人の食事シーンをみて『可愛い』としみじみ言われて困惑した。


 ――そんな事を言うのはクリス様くらいだから油断してしまった。


 気を取り直して私が食事をしている間に、二人はノートを広げてテスト勉強を始めたようで、それをちらりと横目に見ながらそれとなく自分も頭に入れていく。

 テスト範囲が今日公開されたらしく、聞いていない部分は教えてもらった。

 結構今回は何とかなりそうだと少し楽観して、頭の片隅には実行委員の進捗と、クルエラとケヴィンの恋の行方の進捗が気になって仕方が無かった。

 寝起きなのに、脳内はフル稼働だ。


「クルエラ、お勉強中に悪いんだけど進捗報告お願いしてもいい?」

「うん、言われると思ってちゃんと報告の準備もしていたの」


 何て優秀なんだと心の中でスタンディングオベーションしながら、残ったスープも平らげた。

 寮の料理長が作る食事は、いつも美味しくて残した事がない。

 後で聞くと、今日はハーブチキンのローストだと言われて少し落ち込んだ。聞いただけで食べたくなる。

 クルエラは、勉強用ではない別のノートを取り出すと、広げて上機嫌に「まずは実行委員の方ね」と語り始めた。


「えっと……、マーニーの関係する生徒達は一応ちゃんと準備活動はしているみたいで、あとは夏期休暇を終えてから手をつけて大丈夫そうだから、明日からは一旦実行委員はお休みして試験に向けてに時間をあてるように指示したの」

「結構予定通りで良かった。必要な物を揃えるのは夏期休暇の後でいいね」

「エストアール様が私の分からない部分の助言を下さるから、本当に安心して進められました! ありがとうございます」

「大したことはしてないわ。殆どクルエラがやっていた事だもの」


 楽しげに笑いながらクルエラは、スティに頭を下げるとスティは謙遜をしたあと少し不服そうな顔をした。


「……ねぇ、そのシャルにだけ愛称でなんてずるいわ。私もスティって呼んで。あと敬語なんかで次話しかけたら怒るわよ」


 スティは拗ねた顔をしてクルエラに抗議すると、慌てて「わかった! スティ、ごめんね。ありがとう!」と可愛く謝罪すると、あっという間に仲良くなった。

 なんて素晴らしい友情の芽生えなんだ。

 先日までピリピリしていたのが、嘘のようだと微笑ましくパンも平らげた。

 いつの間にか用意をしてくれていた紅茶に口をつけながら、実行委員は明日からお休みという事を了承し、コトンっとティーカップを置いて「……で?」とクルエラを見つめる。


「……学園長先生の方なんですけど……」


 そう言って、クルエラは少し頬を染めながら目を伏せた。

 何だその恋する乙女みたいな仕草は。

 あまりにも反応が乙女で、彼女が可愛すぎて一枚絵として保存させて欲しいくらいだった。

 カメラを今すぐ開発して欲しいと叫びそうになった。


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