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25/37

25:姫君の決意

 

 1

 

 二人は蔵の中を調べた。

 蔵の中には五人の若い女性が捕まっていた。

 カヤはあの男が言っていた言葉を思い出す。

 カヤに船を見せた時、あの男は「この蔵の中には大事な商売道具が入っている」と言っていた。

 

「つまり、この女性たちがあいつの『商売道具』ということね……ああ胸糞悪い」

「姫様」

「何よカヤ! 口が悪いって言いたいの!?」

「そうじゃなくて、この人たち」

 

 言われて玉姫は、捕まっていた女性たちへと目を向けた。

 焦燥しきったうつろな瞳が玉姫の横顔を見ていた。

 彼女たちはこの劣悪な環境で、どれだけの『客』の相手をさせられたのか、カヤには想像もつかなかった。

 売春で一番儲かるのは女の子ではない。

 お金の大半を持っていくのは女の子たちと客を引き合わせる店の方である。

 

「あの……」

 

 二人が黙り込んでいると、捕らえられていた女性の一人が声を上げた。

 

「あなたたちが、今日のお客様ですか?」

「え?」

「あたし、アヤメと言います。今日はたっぷり気持ちよくなっていってくださいね」

 

 そう言って、女性は玉姫にしなだれかかる。

 

「バカ! しっかりしなさい! 私はあんた達の客じゃないわよ!」

「え?」

 

 女性は心底不思議そうに玉姫を見た。

 この女性たちにとって、会いに来る相手は皆、客なのだ。

 それ以外の相手が思いつかないほど、長い間、ここに閉じ込められていたのだ。

 

「いい、あなたたちはもう娼婦でもなんでもないの。あなたたちを捕まえていた男はすでにいなくなったわ。これからは自由に生きていいの」

「自由に? でも、どうやってお金を稼げばいいのよ?」

 

 別の女性が訊ねた。

 その声は最初の女性よりもはるかにしっかりしていた。

 

「私たちは学もないし、田んぼも持ってないわ。それなのに、どうやって自由に生きていけるの?」

 

 玉姫は言葉を失った。

 女性は失望したように息を漏らす。

 

「まあ、そうよね……答えられるわけないわ。結局、私たちには体を売るしか――」

「私が作る」

 

 シニカルな女の言葉を氷のような玉姫の声が断ち切った。

 

「私が、この私があなたたちが生きていける場所を作る! この国を私の物にする。そして、こんなことがもう起きないような場所にする! だから!」

 

 もし玉姫の目がレーザーガンかなにかなら、その視線は確実に女の頭を打ち抜いていただろう。

 

「これ以上そんなことを言ったら、怒るわよ!」

 

 女たちは圧倒されていた。

 

「分かった!? 分かったら頷きなさい!」

 

 玉姫の剣幕に女性たちは小さく首を縦に振った。

 

 2

 

 玉姫は女たちに路銀を渡し、とにかくしばらくそれで死なないようにしろ、と命じた。

 姫様のへそくりは結構な額になった。

 これだけあれば5人の女性がしばらく生きていくことは十分可能だろう。

 

「ことが済んだら迎えに来るから! 死んでたら許さないわよ!?」

 

 姫様はすごい事を命じるなあ、とカヤは呆れた。

 

 そして東の空から橙色の日が昇る。

 目の前の竜神川もいつも通り白い波を立てて流れていく。

 

「カヤ、一刻も早く上杉領へ行くよ」

「でも、方法が」

「そうね、もうこうなったら仕方ないわ……」

 

 カヤは何となく嫌な予感がした。

 

「正面から突破するわよ」

 

 玉姫は堂々とそう宣言した。

 

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