思い出日記
私に物語は紡げない。
道徳の時間が嫌だった。
先生たちは、教えなくてもいいことをさも満足げに話す。
他のクラスメイトは何も考えずにその話を聞く。
ああ、先生。そんなことして意味ないでしょ?
空っぽなんだからわかるはずがないじゃないですか。
人は自分の鏡です。
だから相手を批判するより、見て学びなさい。
先生、自分にできないこと人に言わないでください。
第一、人を見かけだけで表現するなんて最低じゃないですか。
小学校の頃、けんかになって彫刻刀を向けたことがあった。
先生がいさめて、あとで言われた。
「なんで刃物向けたの?脅そうとしたの?」
その質問には答えようとはしたけれど、のどが委縮して何も答えられなかった。
怖い。ただそれだけの感情がとぐろを巻いていた。
その時、私も空っぽだったと知った。
自分は違うと。
自分だけは理解できるのだと。
お前らなんて知らないと。
高慢ちきな知ったかぶりはこの私だった。
中学の教頭先生が言っていた。
その人は道徳の授業の先生で、質問が活発化しない私たちを見て、一言。
「あなたたちは、自分が苦しいと思うときに大事な人のことを思い出したりしないんですか?」
もっともだった。
この文章は、私の過去とお別れするために書いた。
遠い場所に行くために書いた。全部じゃないけれど、要点だ。
私に物語は紡げない。
読んでくれてありがとう。