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準備完了

 ルイスの嫁力……いや、女子力は高かった。今ルイスは私のメイクをしている。というか、服を作れて、メイクできて…………女子力完全敗北である。なぜだ!?


「このメイクボックスは…」


「大丈夫!未使用ですよぅ。初心者向けに一式セットを可愛いボックス付きにしたらボックス目当てのお嬢さんとメイク初心者のお嬢さん、両方に売れるんじゃないかってはらぐ…………ルイスさんが考案した商品なんです」


 なんと!売り方のアイディアまで!


「ルイスって頭いいね!」


「別に、普通。エルシィ、おしゃべりしてないでこっち向いて」


 おしゃべりでもしてないともたないんですよ!うああああ…ルイスが近い!まつ毛長い…なんかいい匂いする…シトラスかなんか?うっとりしちゃう。


「……?何?」


「ルイス、いい匂いだなって……」


「…………………え?」


 ルイスが真っ赤になって固まった。


「あ」


 こっそり匂い嗅いでたのがバレたぁぁぁ!?


「い、今のなし!近くにいるルイスがいい匂いだなんて思ってないから!こっそり匂いなんか嗅いでないから!まつ毛が長くて顔立ちもキレイですごくカッコいいルイスが真剣な表情で至近距離にいるのにドキドキして…んむ!?」


 口に何か入れられました。うまうま~。クッキーだぁ。もぐもぐ、ごっくん。

 あや?ルイスは何故部屋のすみに??


「ルイス?」


「ちょっと立て直すから待って!」


「…………?」


「エルシィちゃん、天然爆弾かぁ」


「あ、それよく言われる」


「……誰にぃ?」


「ん~?シルスとか、冒険者仲間」


「………ご愁傷さまだねぇ。大魔王には敵わないよ」


「??魔王なら…むぐ」


 もぐもぐ、ごっくん。おいしい…幸せ。


「はい、お茶で流し込んで。続きするよ」


「はーい。ルイス、クッキーおいしかったよ」


「…うん。エルシィの顔を見たらわかるよ」


 ルイスの頬はまだ少し赤かった。優しい笑顔にキュンとした。




 そしてまた、いたたまれない時間のスタートですよ。


「エルシィ、目を閉じて」


「…………うぅ」


「力、入れすぎ」


 ルイスの吐息がぁぁ……


「だって、ルイスが近いんだもの…」


「意識してくれてるの?嬉しい」


「うあぁ…甘いルイスさんとか、明日は槍ですねぇ」


 雨、雪を通りすぎてまさかの槍。ルイスのイメージはエメルダさんの中でどうなってるのかしら。


「エメルダ、後でシメる」


「大変申し訳ありませんでした!」


 エメルダさんは見事な土下座を披露しました。




「完成!」


「うわぁ、可愛い!小物はこんな感じでいかがですか?」


「髪にリボンを編みこみたいから、持ってきて」


「へい!喜んで!」


 そしてフル装備をした私は、別人でした。


「誰?」


 いや、すっぴんで血まみれになったり汚れまみれな自分しか見てなかったから、違和感がはんぱない。

 でもよく考えたらエルシィ=ヒルシュ…あのゲームのヒロインは美少女だったよ。ゲームでも可愛かったよ。普段の努力がなければ、美少女も…なんというかもっさりするという証拠がここに……!



「行こうか、エルシィ」


「えっあっ、はい!」


 鏡の前で硬直していた私に、ルイスが手を伸ばす。反射的にルイスの手をとった。いやあああ!手汗が気になる!


 ようやくデート、スタートです!

 ようやくデート開始です。なかなか話が進まない…。

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