ルイスのラブラブ大作戦
アイザックは天才カリスマスタイリスト・ルイスの手により別人になりました。どんな感じって?なんというか、ゴリラから人に進化した。いや、ゴリラから貴族っぽい筋肉になった。
※あくまでもエルシィの主観であり、客観的にはたくましいイケメン(5割増)です。
「アイザック様………尊い……」
月の女神が貴族っぽい筋肉を拝んでいる。愛が無いせいか、どの辺りが尊いのか理解不能だった。あと、わりと月の女神が残念女子であることがわかり、私の親近感と好感度が上がった。
「…行ってくる」
月の女神の頭を撫でて階下へと歩いていく貴族っぽい筋肉。カッコつけてんじゃねーよと言いたいが、マチさんのために我慢する。
さて、階下は完全に修羅場というか…マチさんに男がいるかいないかでもめている。
そこに現れた、がたいのいい筋肉。とりあえず、ルイスからの指示が出た。
「そこにいるハニーブロンドの美女にこう言ってください」
『マチ、何か問題があったか?』
アイザックはルイスの指示にしたがい、そう言った。
見覚えがない筋肉にキョトンとするマチさん。アイザックが小綺麗にしているからわからないのだろう。わかっていても身に覚えがないからキョトンとしただろうけど。
男がいるんだろうと疑いながらも、実際現れたら超ショックを受けているマリオット。こちらもアイザックに気がついていないようだ。確か学年も違うし、筋肉まみれの騎士科と普通科だから接点がないのかも。
「ええっと…『なかなか戻らないから心配したぞ』
「はい???」
ルイスの指示にしたがい、台詞を言ってからマチさんの手を取るアイザック。微妙に棒読みだが、普段から喋らない男だから上出来の部類かもしれない。
「アイザック様…」
はっ!女神が悲しげ…
「素敵…………」
ではなかった。後で同じことやってってねだれば?と言ったらキラキラしていた。
「まあ!流石はエルシィだわ!頭がいいのね!」
「…イオリアたんはもー少しワガママになっていいと思うよ。それが長く仲良くする秘訣。我慢せず、お互いのやりたいことを言うのが大切なんだ」
そのおかげか、ルイスと私はほとんどケンカにならない。一個お願いをきいたら、一個お願いをきいてもらう…という関係になっているので、ケンカしようがない。
「そうなのね…そうかもしれないわ。頑張ってみますわ」
微笑むイオリアたんはマジ女神でした。ゴリラにはもったいなさすぎる!!
ふと、さらにカオスとなったマチさん達の様子を眺めつつ、ルイスに聞いた。
「ねえルイス、でもマチさんの恋愛を成就させたいなら逆効果じゃない?」
「ううん、大丈夫。これからもっと面白くなるよ」
「………うん??」
面白く?いや、マチさんの恋愛を成就させたいのであって、面白くしたいわけではないよ??
何やら向こうはマリオットがヒートアップしているようです。
「姉さん、この人は誰なの!?どういう関係なの!?」
マリオットがマチさんにつめよるが、答えようがないだろう。正解は知らない…いや、ゲームキャラとしてしか知らない赤の他人だからだ。
「いや、だからこの人は知らない…」
「まだ嘘をつくの!?この人、姉さんの名前も知ってるじゃない!」
あまりにもマリオットが騒ぐので、お店の客が帰り始めてしまった。
「……マリオット、姉さんは嘘をついてない。仕事の邪魔よ」
マチさんは普段チャランポランで適当だが、お店を大事にしている。しかも今は仕事中。マチさんは仕事モードになってしまった。
このままではギクシャクしたままで終わってしまう。困惑してルイスを見ると、ルイスは首をかしげていた。
「ん~、遅いなぁ…あ、来た来た。手はず通りによろしくね」
「え、あれって………」
店に現れたのは、やたらハァハァしている糸目の冒険者…キールだった。なんでも私がイオリアたんとまったりトークしている間に依頼したらしい。
「マチの恋人は、この私です!!」
「「ええええええ!??」」
「「ええええええ!??」」
ちなみに、上がマチさんとマリオット。下が私とイオリアたん。理解するのが一瞬遅れました。
いきなりすぎるキールの告白。神経が図太い常連客達は、もはや騒動を楽しんでいるみたいだ。
「マチ、来なさい」
「ふぁ~い……」
ふらふらとキールに近寄るマチさん。あれってもしや……
「魅了?」
数えるほどしか見たことない、レアな精神攻撃の一種。相手に恋愛感情を抱いていると錯覚させ、意のままに操るえげつない魔法だ。
「うん。補助の魔具がないと使えないみたいだけどねぇ。こないだキールを鑑定したら、スキル持ってたから作ってあげたんだ」
キールに魅了…だ、大丈夫なのかなぁ……でも最近はすっかり丸くなって新人潰しをしなくなったらしいし、大丈夫…かな??
「ふへへ、糸目腹黒…しゅてきぃぃ……」
マチさんは元々キールが好みなのか魅了が効きやすいのかは不明だが、キールにメロメロです。しかし、一目で腹黒を見抜くとはスゴいね!
「アイザック様、巻き込まれると厄介だから退避してください」
「…アイザックは要らなかったんじゃ?」
「ただの時間稼ぎだよ。アイザック様に演技なんて無理だしね。貴族っぽい相手なら、マリオットも強気になれないから、時間稼ぎにはうってつけだったでしょ?ついでにマリオットを疑心暗鬼にできたし」
「流石ルイスだね!でも、疑心暗鬼にしたらまずいのではないかと思います」
アイザックの扱いが超雑な気がしなくもないけど、アイザックだから問題なし!!それよりマチさんが不利益を被るかもしれないのが不安だ。
「大丈夫。絶対にうまくいくから」
「ルイス…」
自信満々なルイス…頼もしい!!ああん、私の旦那様が素敵すぎる!!
「…戻った」
「おつ」
「お疲れ様でした」
と言いながら階下の様子を見守り、アイザックの方を見向きもしない私達。
「…結局、何をさせたかった」
「時間稼ぎありがとうございました」
「最初からあんたには期待してなかったんだって」
「………………」
アイザックが殺気を出しているが、ルイスは私が守る!アイザックごときが私に敵うはずがない!
しかし、アイザックは予想外の刺客にアッサリと陥落した。
「あ、あの……アイザック…じゃなくて、ご…御主人様、お帰りなさいませ…は、恥ずかしいですわ…」
ルイスに磨かれ輝きを増した月の女神(可愛いミニスカメイドさんバージョン)が迎え撃ったのだ!
「ぐはっ!」
効果は抜群だ!くそ、うらやましいぜ!
「イオリア様がお願いを聞いてくださったアイザック様にお礼をしたいそうで、いかがですか?」
「さ…最高だ…」
アイザック改めチョロいゴリラは女神の美しさと愛らしさに怒りから魅了状態になり、室内に平和が訪れたのだった。
アイザックがうざいので、メイドさんなイオリアたんと一緒に別室へ行ってもらいました。
「イオリアたんは大丈夫かなぁ……」
「相手が無防備過ぎると案外手を出せないから大丈夫」
旦那様が遠い目をしていました。
「ご、ごめんなさい……」
何故か謝罪する私でした。
一方その頃……
「あ、アイザック様の紅茶に私の愛を込めさせていただきますわ…も、萌え萌えキュン!」
「ぐはっ!!」
イオリアたんが凶悪なまでに可愛すぎて、悶えるしかできないアイザックであった。




