おめでとう、エルシィ
それから数ヵ月が経ち、私は穏やかに生活していた。ルイスの作戦は大当たりで、私への指名依頼や我が家に助けを求めてくる人は激減。ただ、無いわけではない。それでも平穏な日々を過ごせるようになった。
そして、今日。
「エルシィ、綺麗よ…」
「姉様…おめでとう」
母と弟は涙ながらに祝福してくれる。
「ありがとう」
エルシィ=ヒルシュは本日16歳になりました。そして、ついに!メイドインルイスのウェディングドレスに身を包んでおります。これ、製作に何ヵ月かかったんだろう。目立たないけど刺繍がすごい。精密だ。なんかの魔法陣も混ざってるようだが、複雑すぎて解析できないんだけど。
「ふふふ…ああ、エルシィ綺麗だ…僕が世界一綺麗にしてあげるからね!」
そして、私にメイクとヘアメイクを施すルイス。この役は譲れない!とかなり必死に訴えて勝ち取った。
母やマチさんが悔しがっていた。勝ち取ったルイスが嬉しそうだったので、よかった…のかな?何故そんなにメイクがしたいのか…よくわかりません。
「…できた!」
「うぇい?」
すげー。改造手術か!?お姫様みたいに綺麗な私が鏡にうつる。しかも、ほのかに光っているような?
長いまつ毛はマスカラにより更に濃く長く。あくまでもナチュラルでありながら、もはや別人。エルシィは猿からお姫様に変身しました。シンデレラもびっくりですよ。シンデレラはボロを着てても美人だったけど、素材まで改造されちゃったよ!
「長年をかけて開発した、エルシィ専用の化粧品達がついに…!エルシィ、普段も可愛いけど今日は世界一綺麗だよ!!」
ルイスは化粧品まで作ってました。彼はどこまで突き進むのだろうか。
「くっ…流石はルイス君だわ…。エルシィの可愛らしさを最大限に引き出しつつ綺麗めメイク………完敗だわ」
「お母様……」
しょんぼりする母。親孝行としてメイクをしてもらうべきだっただろうかと思ってしまう。
「私のメイクもしてくれないかしら!」
「お任せを」
あっさり了承したよ!?
そして上機嫌な母をエスコートして出ていった花婿。それを呆然と見送る私たち。
「姉様、嫌になったらいつでも戻ってきていいから」
「結婚式当日に言っちゃう!?まあ、近いから遊びに行くよ」
「…約束だよ?」
「…うん、約束」
あれ?何か似たようなやりとりをしたことがあるような?あ、あれだ。小さなルイスとやった結婚式ごっこだ。まだ幼くて可愛いルイスと大人になったら結婚しようねって約束した。当時ルイスは女装してたから、私が花婿役やる気だったんだよね。
あの日の約束を、これから果たすんだ。
くすぐったい気持ちになってクスクス笑ってしまった。
ルイス、遅いなぁとぼんやりしていたら、、ついに時間になったらしい。
「エルシィ…ついに嫁に……よかったな。お前はヒルシュのため…大半はルイス君のためにどれだけ傷だらけになろうとも努力をやめなかった。そして、ルイス君もお前に平穏な生活をさせるために奔走した。お前達は本当にお似合いだよ。結婚おめでとう、エルシィ」
「涙を見せるのが早すぎだよ、父様。ほら、笑って。笑って私の門出を祝ってよ」
ついもらい泣きしそうだったから、少しおどけて話した。
「そうよ。今日はエルシィの結婚式なんだから、笑顔でいなきゃ」
「母様…………えええええ!?」
「んなっ!?」
「えええええ!??」
母の声がする方を見たら、ほのかに光る肌の美女。若い!母様元から年齢不詳だったけど、これなら20代でもイケそうだよ!
「どーお?ルイス君すごいわよね~」
「母様、若い!美しい!」
「いや、惚れ直した。流石は我が妻だな!」
「いや~ん」
とか言いつつ悪い気はしないらしくクネクネする母。
「母様、綺麗!美魔女!年齢詐欺!」
「んんん?」
「ギブギブギブ!!」
弟の年齢詐欺辺りがお気に召さなかったらしく、母はハンドクローをかましていた。美女なのに、どこか残念。流石は我が母上である。
「………行くか」
「……うん」
気を取り直して父のエスコートで歩き出す。教会に入ると、たくさんの人や魔族達が祝福してくれた。
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「エルシィちゃん、別れたら俺と結婚ぐふぅ!」
最後の人が肉屋のおかみさんの肉厚なケツ圧により吹っ飛んだ。
※恰幅のいい肉屋のおかみさんがヒップアタックで男性を吹き飛ばしました。
ありがとう、おかみさん。最後の人が人生強制終了にならなくてよかった!!
「…まだあんな命知らずがいるのだな」
父は呆れていました。多分酔っていたか調子に乗っただけではないかと思います。
「おめでと……本当にエルシィか!?」
マオ君から微妙な祝福をされました。
「そもそも私の偽者とかいるわけ?あ、お兄ちゃんが居たわ」
「偽者がいるのか!?」
「いや、とてもそっくりな従兄ですよ。会ったことあるでしょ?」
マオ君はけっこう天然だと思います。
「そんな奴、いたか?」
「呼んだかい?」
タイミングよくお兄ちゃんが……お姉ちゃん?おにねーちゃん?あねにーちゃん??とにかく女装していた。私とお兄ちゃんを見比べて頷いた。
「確かに似ているな。しかし、何故ドレスなんだ?」
「お忍びだし、似合うからね!」
お兄ちゃんはピンクのフリフリドレスを着ていた。
「「確かに似合うが忍んでないだろう」」
私とマオ君の心がひとつになりました。父は頭痛がするらしく、ため息をついていました。
変態美形はどの辺りがツボだったのかは知らないけど笑いすぎて痙攣していたので踏んでやったら悦んでました。やべぇ、変態ランクが上がってるよ。
「……エルシィ、頼むから友達は選んでくれ」
「大丈夫、友達じゃなく変態です」
「どの辺りが大丈夫なんだ?それは」
「友達はある程度選んでます」
「なるほど」
納得されちゃったよ。変態は新たなステージに上ったらしくクネクネしてるので見なかった事にした。
「主!おめでとう!!」
「ありがとう、ドラン君」
元気に両手をブンブンするドラン君に手を振る。父が微妙そうな表情になった。
「…ドランとは、エルシィの飼っているドラゴンではなかったか?あれは人に見えるが……」
「ドラン君は飼いドラゴンじゃなく野良ドラゴン…略して野良ゴンですよ。小回りきいて便利だから、人化術を覚えたそうです」
わりと最近の話で、本人大喜びだった。外見?赤毛でツンツンした固い短髪のヤンキー風お兄ちゃんだったよ。
「……どこからつっこんでいいのかわからんが…彼は大人しいドラゴンなんだな」
「いえ?ルイスを殺そうとしたので倒したら、忠誠を誓われました。今では遠方に行く場合、背中に乗せてもらって移動してます」
「………………………」
父が微妙そうな表情になりました。顔色が悪いですが、きっちりシメたからドラン君はもう人を襲わないと話したら納得してくれました。
「エルシィちゃん!おめでとう!!」
マチさんが花を降らせながら笑顔で手を振っている。
「ありがとう!」
マチさん、私を祝福してくれるのは嬉しいんだけど隣にいる店員さんがなんか多分告白してるっぽいから聞いてあげようよ。
「行きなさい。幸せになりなるんだよ」
そして涙ぐむ父の手から、私を待つ愛しい人の手へとバトンタッチした。




