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国王の命令により、無血開城は問題なくなされた。先頭にいたのは我がお兄ちゃん、王太子ことエルサール=ビルド殿下。いつも通りにニコニコしていた。
「流石は我が妹だね。おや?シルス君も……」
陽気なお兄ちゃんが冷たい瞳になった。
「エルシィ、それは?」
「それ?」
首をトントンされる。首を…首、には、聖剣を封じるアーティファクト!!
実はこのチョーカーは神の力を宿した聖遺物だったりする。聖剣は神の力に属するらしく、通常の手段では封じられない。だが、聖剣は悪用が可能だ。だからその対抗措置として神が遺した品なのだろう。
外すの忘れてた!!!
顔面蒼白になりながら、フォローしようとする。いや、ギリアクセサリーに見えるかも??
「あ、アクセサリーかな?」
「それは聖剣を封じる聖遺物でしょう?何も知らない私の従妹に…罪人のような枷をつけるなど…許せないね」
あまり怒ってないなんて気のせいでした。お兄ちゃんも激おこでした。表情は笑顔だけど目が笑ってないぃぃ!!
クソにはよ外せ!と目配せしたが、時すでに遅し。
「…エルシィに、枷?」
「もちつけ、ルイス!エルシィはうっかり刺しても死なないぐらい元気だぞ!」
いや、シルスが落ち着きなよ。自分よりテンパってる人を見ると、人は案外冷静になるものです。
でも、目をギラギラさせて両手に輝く鉈持参の弟を見たら無理もないかもしんない。どこのホラーゲーですか?これ、恋愛ゲームの世界じゃないの??え?スプラッタしちゃうの??
「エルシィ、無事?」
大好きな大好きなルイス。鉈は放り投げ、駆け寄ってきた。さっきジェリーちゃんに見せてもらった時は遠目でわからなかったけど…
痩せてない?
鉈も問題だが、ルイスの健康状態が心配だ。ルイスの頬に触ってみる。肌が…ルイスのもちすべ肌が…かさついている…だと!?
「ルイス、最後いつご飯食べた?」
「ん?ん~??忘れた…」
「水!食料…あ、これ食べかけ…えっと…こっち!こっちは食べてないよ!」
「エルシィだ…」
差し出した食料を食べてほしいんですが!?ルイスは食料に目もくれず、私の無事を確かめる。いや、服のなかに手!?拒否したら脱がす!?た、耐えるしかないのか!?
「エルシィエルシィエルシィエルシィエルシィエルシィエルシィエルシィエルシィ…これなに?」
「あ、アクセサリー?」
これとは聖剣を封じる聖遺物。どうも魔力認証型らしく、私では外せない。物理で壊すか?と思ったが、無理だった。全力なら壊せるかもしれないが、こういうやつは壊すと呪いが出てきたりもするから壊したらダメってルイスが言ってた。
「えい」
ルイスが聖遺物に触れた。ぺきりと軽い音をたてて聖遺物はあっさり壊れた。そして、砂になって消えた。
「……ルイス、こーゆーブツは壊したらダメってゆってませんでした?」
「解析した上での破壊だから問題なし。で、僕のエルシィにこんな枷をつけやがった馬鹿はどこ?」
「ルイス!外してくれてありがとう!ルイスが足りないから補充させて!!」
ルイスに抱きつき、全力で誤魔化す私。いや、ルイスが足りないのは本当!
「…エルシィ…」
「ルイス、ルイス!会いたかったよぅ!!」
「エルシィエルシィエルシィエルシィエルシィエルシィエルシィ…」
シルスが『よくやった、エルシィ!そのままルイスを封じておけ!!』と合図を送っている。
ルイスに見えないよう親指を立てて応えた。
しかし、ルイスはやはりルイスだった。私達より上手だった。そもそも、脳筋よりの私達が頭脳派ルイスに勝てるはずもなかったのだ。
「!?な、何!?」
私の内から膨大な魔力…あ、怒ってる。私の聖剣が怒ってる!そりゃそうだよね。私の意思で封じたならまだしも、部外者から無理矢理封じられたなんて…怒りますよね?
エクステリアさ~ん、エッ君?ちょっと落ち着こうか?え?無理??滅ぼす??
「総員退避!エクステリア…聖剣が暴走します!!」
咄嗟に城にいた人間・魔族を全員町の外に強制転移させた。ただしルイスは私の伴侶だからかエクステリアの攻撃も干渉も受けなかった。また私と離れたら何をしでかすかわからないので転移しなかったのは良かったと思う。
そしてこの日、聖王国エリューシオンの王城が完全消滅した。
「あーすっきりした」
焦土と化した城跡地には、私とルイス以外に数人がこう…一昔前の爆発コント姿になっていた。髪はアフロで黒こげ…生きてはいる。見た目ほど重症ではないようだ。気絶もしていない。
エクステリアもすっきりしたらしく、ご機嫌だ。ルイスもスカッとしたご様子。
「…楽に死なせてなんかやらない。少しずつ、少しずつ…落としてあげるよ」
それは笑顔だったけれど、その瞳は凍てついていた。一時的にちょっと発散しただけで、ルイスは激おこでした。
「ルイス、スプラッタは……」
「大丈夫。切り刻むなんて芸のないことはしないよ。相手をよく調べて、最高に嫌がることをするから」
それ、どの辺りが大丈夫?エルシィわかんない。
「うん?」
「二度と僕のエルシィにちょっかいかけれないようにしてやるからね」
「うん」
「もう絶対関わりたくありませんよ!」
王太子が泣いた。私の所業は奴にトラウマを植えつけられたようだ。是非もう関わらないでくれ。
「…お前が、首謀者?」
ルイスがピカピカに磨かれた鉈を持ってクソに歩み寄った。
「い、いやああああ!?」
あまりの迫力に失禁するクソ。乙女ゲーが裸足で逃亡して18禁ホラーゲーになってしまうよ!現時点でもモザイクが欲しいよ!
「ノースプラッタ!ノーグロ!」
「…ちょっと指を切り落とすぐらい、いいんじゃない?ああ、この間拷問用に頼まれた試作機を使おうかな。爪の内部を傷つけて、ショック死手前で止まる優れものだよ」
「おう……」
ルイスが闇…いや、病み属性にクラスチェンジしてしまいそうだ……いや、もうしているかもしんない。
「エルシィ?止めないよね。僕が拐われたらどうする?」
想像してみた。今回と逆の場合。囚われの姫と、クソ。そして、清楚可憐な姫を手ごめにしようとするクソ。
私と違い、ルイスでは抗いきれない………ああ、姫!!ご無体な!!
※そんなことないです。これはあくまでエルシィの妄想です。実際に拐われたら、魔具と魔法を駆使してエルシィ並みに暴れます。エルシィより容赦なく暴れます。
「…拷問用魔具ぐらい、仕方ないね!」
笑顔で親指をグッと立てた私。絶望するクソ。
そして聖剣により強制転移させられた皆が戻ってくる頃には、クソの悲鳴が枯れていました。
黒アフロ達は皆死んだふりをしていました。次は我が身だからです。
「エルシィ!ルイスを止めろって言っただろう!!」
そして、シルスに私が叱られました。解せぬ。
皆様はおわかりかと思います。ルイスはかなり前から病み属性です。エルシィが知らないだけです。




