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大混乱ですぞ!

 とある偉い神官視点です。

 聖王国・エリューシオン。聖地エリューンにより恵みをもたらされ、神の寵愛により発展した地である。


 聖王国の象徴だった聖剣が失われて100年以上が経った。今代の王太子殿下は聖剣奪還に熱心で、聖剣…聖女の行方を探しておられた。


 蛮族の国・ビルドの王族達は狡猾で、聖女を無理矢理孕ませ自分達に取り込んでしまった。さらに聖剣の返還を要求したが、聖女は王族だからと返還をつっぱねた。聖剣を奪い聖女を無理矢理孕ませたくせに、図々しいにもほどがある。


 そんな中、今代の聖女であらせられるエルシィ姫が見つかったという情報があり、秘密裏に殿下がお迎えに行くことになった。しかし、学園にいたエルシィ姫は偽者。殿下は聖剣の魔力を感知できるゆえ判明した。

 まったく、卑怯で小賢しい。だが学園で調査を続けていたところ、本物のエルシィ姫が学園に現れた。殿下がまだ学園にいらしたために判明したのだ。やはり神は我らの味方なのでしょう。


 そこからは早かった。エルシィ姫は森のあばら家で質素な暮らしを強いられており、一刻も早く救出をしなくてはと大規模な救出作戦を実施した。その際にエルシィ姫をたぶらかしたばかりか使用人のようにこき使う男を捕縛し、無事エルシィ姫を救出したとの報告を受けた。


 ついに聖なる地に帰還した聖剣を宿す聖女のエルシィ姫。姫は悲しいことにビルドの蛮族から洗脳をされておいででした。

 凛とした佇まいの清楚で可憐な姫君は、己を騙した男の安否ばかりを気にかけておいででした。しかし、誠意を持って接すればいつかは姫にもご理解いただけるはずです。王太子殿下も姫を気遣い、愛していらっしゃる。姫はいずれ、真実の愛に気がつかれることでしょう。






 そんなある日、事件が起きました。





『エルシィを、僕のエルシィを返せえええええ!!』





 その声は、若者のようでした。ビルドの蛮族が姫をまたしても拐いに来たのでしょう。しかも、信じられないことが起きたのです。


『エリューシオン王都は、ヒルシュ軍と魔王軍が完全に包囲した!命が惜しければ、エルシィ…聖女を返せ!!』


 魔王軍!?遠見の魔具で確認したところ、人間だけでなく魔族もたくさんおりました。蛮族はついに魔族に魂を売ったのです。聖なる乙女をこのような悪魔どもに渡せるはずがありません。

 しかし、愚かな貴族達は姫を返して命乞いをしようと言い出しました!なんということでしょう!彼らに神に最も愛されし国の民としての矜持はないのでしょうか。嘆かわしいことです。


『ルイス落ち着け……あー、私は魔王…元魔王である。聖女エルシィ=ヒルシュをビルド国へ返還せよ。さもなくば…王都は焦土と化すだろう。余計な仕事をしこたま増やしやがって…むしろ返還しなくていいわ!貴様ら全員まとめて滅ぼしてくれる!貴様らが汚い手段を用いてエルシィを拐ったせいで、魔族はこの国を滅ぼしたいと望む輩ばかりだ……この俺も含めてな。あれは魔王すらも倒した女。姑息な手段で負かされたなど、あってはならぬ!!愚かな人間どもよ、死でその罪を償うがよいわ!!』


 魔王が生きていた?いや、聖女が魔王を倒した?聖女の聖剣に選ばれた勇者ではなく?

 混乱しているうちに、別の人間が話しだした。少しでも情報を得なければと耳を傾ける。


『私にも喋らせてくれ。うちの娘を拐いやがった馬鹿野郎に告ぐ。ただちに投降せよ。いや、投降すんな。皆殺しにしてやる。うちのエルシィに手ぇ出して、五体満足でいられると思うなよ!?地獄をみせてやらあああああ!!』


『どこまでもついて行きます!!』

『うちの姫さんと町に害を及ぼそうとした馬鹿を許すな!!』

『ぶっ壊せええええ!!』


 聞く価値もない蛮族の叫びにうんざりするが、愚かな人間達への効果はあったらしい。

 聖女を返し、投降すべきではないかと提案する愚か者もいた。


『はっはっは、落ち着きたまえ。無関係な民もいる。いきなり蹂躙するのでは、無関係な者達が可哀想だろう』


 蛮族にしてはまともな思考の持ち主…と思った。


『…うちの可愛い妹を拐ったのだ。楽に殺すなど、ぬるい』


 蛮族は蛮族だった。王太子殿下と違い、国王は気弱な男だ。神への信仰も薄い。みっともなく怯えている国王に、愚かな貴族達に語りかけた。


「恐れることはありません。我らは神に守られ、最も愛されし民なのです。神は必ずや愚かな魔王どもに鉄槌を下すことでしょう!」


 私の言葉で落ち着く者もいたが、信仰が薄い貴族の青年が声をかけてきた。


「……だからおやめくださいと王太子殿下に進言したのです!陛下、投降すべきです!どう考えても平和ボケした我が国が、何度も戦をしているビルドに…魔王軍に敵うはずがありません!戦力差は歴然です!!」


 私と貴族の青年は睨みあう。魔王などという悪しき者に屈するなど、あってはならないのだ!


 睨みあうことしばし。遠くから、何かが聞こえてきて………私は白い閃光と爆音に包まれて気絶した。


「あ、やべ。やり過ぎた」


「馬鹿!加減しろっつっただろうがああああ!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい息しててすいません存在しててすいません」


 聞こえてきた三つの声は、どれも聞いたことがあるような気がした。

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