魔族達と聖剣とルイスさん
やってきました、魔王城。しかし、外見はわりと普通のお城です。いばらが覆ってたり、空気が湿っぽかったりはしません。魔族が太陽を好まないので黒いドームに包まれた、黒を基調にした美しいお城…それが魔王城です。
「ふふふ…魔王の名の下に、全ての魔族長を呼んでおきましたよ。広間で待っているはずです」
「…え?」
「はあ?おま、いつのまに!?つうかあんな血の気が多いやつらを待たせたら…」
爆発音がしました。ちゅどーんとか、ずどーんとか。
「「「……………」」」
「こうなりますね☆」
テヘペロしやがった変人美形。誰得というか……後でしばく!!
「城を破壊するんじゃない!!」
マオ君の真空飛び膝蹴りが炸裂した。爆発させたと思われるナイスミドル魔族が吹っ飛んだ。
「腰抜け魔王様、待っておりましたよ。我々を待たすとは、偉くなったものですなぁ」
数を揃えりゃ勝てると思ってるのかしら?ムキムキ髭マッチョ魔族がニヤニヤしながらマオ君に話しかけた。マオ君がキレそうです。
私はこっそり変人美形に話しかけた。
「マオ君、なめられてない?」
「魔王様、見た目弱そうですし…流石にこの場の全員相手じゃ負けますからねぇ。1対1なら勝ちますけど」
ふむ。なるほど。あながち数を揃えりゃ勝てるは間違いじゃないわけか。
「…魔族は力が全て。強いものが頂点なんだよね?」
「はい。そうです」
変人美形はにやりと笑う。うわぁ、絵になるぅ。そうか、強ければいい。なら、簡単じゃないか。
「こんにちは、魔族さん達」
私はニッコリと魔族達に話しかけた。この中に、いるのだ。
「私は勇者にして聖女のエルシィと申します。魔王様は腰抜けなどではありません。私が貴方達を皆殺しにしないように呪いまで受けて貴方達を護ろうとした英雄です」
「小娘風情が戯れ言ぐほぇ!?」
「まだ、話は途中ですよ?」
私の話を遮ろうとした魔族にナイフを投げて黙らせた。魔族は痛みで転げ回ったので凍らせて動けなくした。静かになったね。おや?他の魔族さん達顔がひきつってるよ?魔族は丈夫だから、ちょっとナイフが刺さって半冷凍ぐらいじゃ死なないよね。なんで?私、笑ってるよね?
「…さて、私は大事な幼馴染みに手を出した魔族を全て殲滅するつもりでした。しかし、魔王が必ず魔族を抑えて2度と手を出させないと約束したので、殲滅はしませんでした。もし倒しこぼしが復讐だとか言って大事な幼馴染みを狙ったら面倒ですしね」
「……勇者の言う通りだ。しかもこの勇者には、殲滅ができるだけの力がある」
「……改めてうかがいます。服従か、死か。選ばせてあげますよ」
「ま、魔王は臆病風に吹かれただけだ!我々が一斉にかかれば、小娘一人、殺せる!」
魔族が私に殺到する。そうこなくては。私、貴方達に仕返しするつもりで来たんだからさぁ。
楽しい楽しいショーを始めようか!!
「あはははははははは!」
爆音、悲鳴、怒号。
「あはははははははは!」
私は狂ったように聖剣を振るう。一応加減してるから殺してはいない。約束、したしね。
「あはははははははは!」
まあ、骨が折れたり腕がなくなったりはしてるけど、殺してない。体が軽い。私はあれから、聖剣を使いこなせるようになった。
「あはははははははは!」
そう私が『殺したい』と思ってないからこそ、彼らは死なない…否、傷つきはするが『死ねない』のだ。
何故これが聖剣と呼ばれるか。聖剣の正体は、恐らく血筋により使える特殊魔法。斬りたいものだけを斬り、殺したいと主人が願ったもの『だけ』を殺す。
魔族を弱体化させるのも、聖女が『そう思い込んでいるから』にすぎない。人間や魔物の弱体化も実は可能なのである。
そして、私は怒りのままに剣を振るう。殺す気がなければ殺さないのは便利だ。手加減も不要だからね。
「許さない、ルイスを傷つけようとする奴は許さない!お前か!?私のルイスを死なせかけたのはお前か!?それとも…お前か!?」
「ひいい…」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「ゆるしてぇ…」
そして、狂気の時間が終了した。魔族達は、皆正座している。つか、重傷者は倒れててもいいんだけど?魔族って本当に丈夫だなぁ……
「…………怖かった……」
涙目になって部屋のすみに丸まるマオ君。悪いね…怒り狂った私が魔王城に乗り込んだ日の悪夢を思い出しちゃったみたいです。いや、本当にごめんなさい。私は本気でキレてたからさぁ、うん。
「意外と病んでる系だったんですねぇ……ますます好みです。私に乗り換えませんか?」
「やだ。別に病んでないし」
失礼な変人美形に即刻お断りした。私はルイスが好きなんです!いつか…いつか振り向いてもらうんだから!先はあまりにも長いけどね!
「おや、残念。皆様、だから言ったでしょ?彼女は魔族が一致団結して一斉に襲ったって倒せません。彼女に服従するしか、我々に生きる術はない。魔王様は賢明な判断をなさっただけです」
「魔王様…申し訳ありませんでした…」
「勇者……強すぎる。魔王様…魔王様は間違っていなかった。あの勇者ならば我らを容易く滅ぼす……」
「いや、もういいから傷を治せ!内臓はみ出したままでしゃべるな!エルシィ!もういいだろ!?」
内臓はみ出したままで謝罪とか、完全にホラーです。マオ君、ビビって泣いてます。
「あ、はーい。治しますね」
『……………すげぇ』
スゴいよねぇ、聖剣。回復も簡単なんだよ。イメージさえできれば、だけどね。
そして、この場にいる魔族が全員私に忠誠の礼をとった。
「新たなる魔王様、万歳!!」
「魔王様!!」
「いやいや、待って!!」
とりあえず静かになってくれました。舌打ちすんなよ、マオ君。
「私は隠居してます。貴方達が私に従うというなら、マオ君と私は契約を交わしているのでマオ君に従ってください」
「しかし……」
「私に従うなら、命令は2つだけ。ルイスに手を出すな、マオ君に従え。本来ならルイスを狙っただけでも万死に値…いや、死なせてくれと懇願されようが死ぬ手前で永遠に苦痛を与え続けて壊しますが、体を張ったマオ君に免じて今回だけは…そう、今・回・だ・け・は!!許してやると言っているんです!つべこべ言わずにいうこと聞け!!」
『かしこまりましたぁぁ!!』
こうして、無事に目的を果たして魔王城を後にした。
「ただいまー」
「エルシィ!!」
「みぎゃああああああ!?」
血まみれだったので身ぐるみ剥がされました。
「怪我はない…全部返り血みたいだね」
「ううう…恥ずかしいよぅ…」
「はい、手で隠さない…綺麗な色だね」
ぺろんと胸が露出した。
え?胸が………?まるみえ?なまちち?しかも血を拭かれついでに揉まれてないか!?
「いやああああ!?今日はなんで下着まで!?み、みぎゃああああああ!?」
「いや、普段は下着は綺麗だけど、今回は下着も血まみれだからね。傷があるかもしれないでしょ?毒がある魔族もいるし、傷がないかのチェックは必要だよ。はーい、全部よーく見せてね」
「い………いやああああああ!?」
逃げようとしましたが、全裸で逃げるわけにもいかず……結局捕まって縛られて……………いやああああ!な目に……………
わ、私…本気でお嫁にいけません…………い、いや!ルイスに貰ってもらうんだ…!ルイスがある意味キズモノにしたんだから!
「る、ルイス…私お嫁にいけません…あ、あんなとこまで見るなんて…しかもあ、あんな…ひ、広げたり……ひどいよぅ……」
「うん。責任もって僕がエルシィをお嫁に貰うから、大丈夫。そもそも年頃の男女が暮らして何もないとかあり得ないから、今さら今さら。僕のお嫁さんになる以外の選択肢なんか存在しないし、他の男になんか絶対にやらないから」
「え、うん。そう………なの?」
全裸に剥かれたあげく、全身くまなくじっくりばっちり好きな人にチェックされました。とんでもない辱しめですよ!そのショックで私は呆然としており、ルイスの言葉によく考えずにとりあえず同意した。
寝る前になってから、あれ?ルイスは私を嫁にもらうつもりなの!?と気がついてしまいました!!
ルイス!ルイスさん!!ルイス様ぁぁ!!?マジでどういうつもりだったのぉぉ!?どうするつもりなのぉぉ!?
全く眠れませんでした。ルイスが何を考えてるのか、サッパリわかりません。
本日のエルシィの成果
職業レベル
・聖女 99【MAX】
・勇者 99【MAX】
・狂戦士99【MAX】
・真魔王99【MAX】
・覇王 99【MAX】
・魔剣士99【MAX】
・嫁 -99【-64】
・女子-14【-5】
称号
・真の魔王
・魔族のカリスマ
・ルイスの嫁(予定)
・嫁→ルイス以外の嫁にいけない
・女子→血まみれのためダウン。しかしルイスがときめいたのでだいぶ軽減されました。
道のりは………遠い?