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従兄妹の会話

 空き教室へ私、お兄ちゃん、ルイスが移動した。お兄ちゃんは床に正座している。


「お兄ちゃん、どうして私がここに来たか…わかってるよね?」


「………はい……………」


 床に正座して項垂れるお兄ちゃんの前に、護衛のお兄さん達が現れた。


「すいません、エルシィ様!」

「我々の監督不行き届き…いや、わかってても止められないんです…どうしたらいいですか…?」


「「…………………」」


 何故だろう。特に後半、護衛さん達の苦労と悲しさと辛さが感じられた。


「お兄ちゃん、あまり護衛のお兄さんを困らせないで」


「別にわざと困らせているわけではない。凡人には私の思考が理解できないのだよ!」


 まぁ、確かに私にもお兄ちゃんの考えはよくわかんないけども。


「だが、我が従妹であるエルシィならば解るだろう!」


「いやいや。モノによるし、よくわかんない事もかなり多いよ」


 お兄ちゃんの発想は基本的に予想の斜め上辺りをブッ飛んでるからなぁ。とりあえず、最悪のちょい上ぐらいを想定しとくと予測できることも稀にある。そのせいか、私はお兄ちゃんの理解者であると本人に認識されている。


「エルシィ、早速殿下のペースになってるよ。目的を忘れちゃダメ。何しにここに来たんだっけ?」


 ハッ!そうだった!ついついお兄ちゃんのペースに巻き込まれて…んもう、お兄ちゃんたら天然なんだから!


「チッ、余計なことを」



 おいいい!わざとかぁぁぁい!!



「お兄ちゃん、反省してないね?」


「フッ、私は常に自覚はあれど、反省はしない!!」


「開き直った!」

「タチが悪いな…」

「くそ主!」

「だから嫌なんだ……」


 ついに護衛のお兄さん達が泣いた。うちのお兄ちゃんがすいません。


「お兄ちゃん、反省しないなら私が同じことをしていいんだね?お兄ちゃんの姿で、男性をメロメロにしてお兄ちゃんが男色なんだと世間に広めてやる!!」

「大変申し訳ありませんでした!!誠心誠意謝罪いたします!全身全霊で反省いたしますので、お許しいただけないでしょうかアアアアアア!!」


 お兄ちゃんの判断は早かった。血涙を流しながら謝罪した。


「ええと…なんでそんなに必死なの?」


「だって、エルシィは本当にやらかすだろう。ただでさえ私は中性的な美貌の持ち主…そんな噂がたてば………(ガクガクブルブル)」


 お兄ちゃんに何があったんだ…?その疑問に護衛のお兄さんがコッソリ答えてくれた。


「実は昔、殿下は男性に性的暴行をされかけまして…筋肉質な男が生理的にダメなんです」


 だからアイザックが死ぬほど嫌いだし、騎士団に絶対行かないんだ…妙に納得した。


「とりあえず、とある男性にお姫様抱っこしたことを謝罪しておく!」


「すでにやらかしているだと!??」


「…あれ、ノリじゃなくて意味がある行動だったのか…」


「エルシィ様、素敵!!」

「もっとやって、殿下をガチで反省させてください!!」


 お兄ちゃんの人望の無さよ……いや、別にやってもやらなくてもいいけど、開き直って報復行動されると嫌だからこの辺りがおさめ時かな。


「まぁ、私はちゃんと反省すればこれ以上はしない。ただ、何やらかしたか報告と、今後はしないと約束して遵守する事が条件」


「…わかった。実は………」







「エルシィ、とりあえずゴツいの何人かメロメロにしてきなよ」


「…そうしようか」

「話が違う!!!」


 思った以上にやらかしていたよ!大丈夫か、次代がこんな人で!!

 女生徒を何人も口説き、覗きに痴漢行為、調子こいてる男子生徒を口説いて男だとバラす…のはまぁいい…かな。情報を探っていたのも別にいい。私の姿なら相手も油断するだろう。

 何人も女生徒を口説きまくったから、私が同性愛者だとの噂が広まった模様。唯一の救いは、既に一部の生徒が『エルシィは王太子』だと認識してるってこと。

 人の口に戸は立てられないから、私が同性愛者という噂は時間経過とともに消えるだろう。


「も、もうしない!私は唯一を見つけたからな!」


「…月の女神はアイザックのものだよ?」


「正々堂々彼女を口説く!」


「ならいい。でも、彼女は私の友人だ。権力なんかの搦め手を使ったら…どうなるかわかるよね?」


 私は殺気をこめてニッコリ笑った。


「「「怖ぇ……」」」

「エルシィ、カッコいい…」


 怯えるお兄ちゃんと護衛のお兄さん達。そして、逆にうっとりするうちの(ルイス)


「君達は本当にお似合いだよね……」


「「ありがとうございます」」


「ほめてないからね!」


 知ってますが、ルイスとお似合いなら誉められなくても別にいいです。


「それから『本物のエルシィ=ヒルシュ』を探している者達がいるようだ。気をつけなさい、エルシィ」


「え?はい」


 この時、私は選択を間違えた。もっと深刻に捉えていれば…と後悔することになる。

 私が学園(ここ)に来たことで、物語(ゲーム)が動き出してしまった事を、私はまだ、知らない。


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