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強くて怖がりな僕の婚約者

前話のルイス視点になります。

 さて、そろそろ狩りになるのかなと思ったら、なんだかエルシィの様子がおかしい。


「…ルイス、いつでも結界に籠れるようにしておいて。なんかおかしい。全員、すぐ戦えるように…!」


 エルシィが言うのが早いか、地面から巨大な…蛇っぽい魔物が出てきた。なんてやつだっけな…?


「ルイス!」


「うん!」


 新人にこいつの討伐は無理とエルシィが判断したらしい。敵の注意を引くためにドカドカと足音をたてて走りだした。普段のエルシィは走っていてもあまり足音がしないのだ。

 僕が結界を展開して魔物からの攻撃を防いだ。新人さん達も入れてあげた。


「エルシィさん!?」


 リーダー格の新人さんが結界を叩いてエルシィに呼びかけた。これしきで揺らぐようなやわな結界を張ってないが、結界は内側からの攻撃に弱い。後で注意するべきかな?


「生態系を崩したら困るから、一掃するわ!」


 エルシィの服から耳と尻尾が出た。うむ、可愛い。問題なく身体強化・物理が発動したようだ。相手により適した属性を自動付与する自信作だ。

 

エルシィが地面に聖剣を突き立て、一気に水を注いだようだ。穴から水と一緒に飛び出る蛇もどきをスパスパ切っている。あんなゲームあったな…モグラタタキだっけか。


「すげ…」


 まあ、エルシィの天才的反射神経あってこその戦い方だねぇ。危ないから新人さん達はここから出さない方がいいだろう。ついでに注意しとくか。


「ねぇ」

「えっ!?はっはい!」


「結界は内側からの攻撃に弱いんだ。僕の結界はさっきの程度で揺らがないけど、術者によっては怒るから気をつけて。消耗を防ぐために内の防御を極限まで下げてる場合があるんだ」


「えっ!?す、すいません!」


「いや、僕の場合は違うから大丈夫。ただ魔術師は偏屈な奴が多いから、それでキレて仲間を放り出したあげく転移して置き去りにしたって話があったから、一応ね」


 新人さん達が固まった。


「あの、そのお仲間は無事だったんです?」


 恐る恐る魔術師の女の子が聞いてきた。


「うん。無事だったよ。元気にエルシィと仕返ししに行ったから」


「まさかの本当にあった怖い話だった!?」


 実は結界を内側から叩いて破壊した馬鹿は実の兄だ。僕的には魔術師がキレたのもわからなくはない。うちの兄、馬鹿力なんだもん。エルシィのピンチだったから仕方ない状況だったみたいだけどね。

 残された兄とエルシィは、戻ってすぐ逃げた魔術師をボコりに行きましたよ。あの二人を置いていくとか、馬鹿だよね。


 エルシィはサクサクと蛇もどきを刻んで…ん!?地下から何か…来る!!


「エルシィ、下!!」


「!!」


 僕の声よりも早く、エルシィは瞬時に退避していた。


「ギャアアアアアアア!!」


「アースドラゴンクイーン!こいつのせいで増えてたのか!」


 あ、あの蛇もどきはアースドラゴンだったのか。

エルシィがアースドラゴンクイーンに頭突きをした。うちの婚約者様は何故聖剣を使わないんだろ。エルシィに頭突きをされたアースドラゴンクイーンの頭部がパーンと弾けました。ショッキング映像です。よいこに見せられないスプラッタです。





「るいすぅぅ…」


 とりあえず、アースドラゴンを殲滅したらしいエルシィは悲しげに僕を呼んだ。あのとんでもない強さとのギャップがたまらない。血と肉片まみれでも可愛い。


「エルシィ、すぐ綺麗にしてあげるからね!」


 僕の浄化魔法であっという間に綺麗になりました。


「まだまだ改良の余地があるね。服が無事でも顔とか出てる部分がベトベトに汚れるのは問題だ」


 顔とかも汚れを弾く魔法をつけないとなぁ…何の術式にしようかな?


「それより、これ身体強化に防護結界に…どんだけ術式付与したの!?せめて身体強化は教えておこうよ!そしたら頭突きはしなかったよ!」


「ごめんよ、エルシィ。でも基本的にエルシィは『習うより慣れろ』だからマニュアル作っても見ないじゃない」


「………次からは見ます」


「なら、今度からは作ります」


 前にはりきって使用マニュアル作ったのに読まなかったんだよね。今度は簡単な説明書にしてあげよう。


 魔術師の新人さんが驚愕していた。


「1枚の服にこれだけの付与…」

「なのに問題なく起動している上に魔力ロスがないなんて…」


「ルイスは天才だからね」


 彼女達は頷いた。エルシィが誇らしげで可愛い。

 普通魔力付与は一種類のみだ。複数の方が便利だけど、使える人間が限られる。エルシィは全属性が使えるから、彼女専用ならばどんなとんでもない付与をしようが問題ないのだ。つまり、下手をすればがらくたになりかねない服を使いこなせるエルシィがすごいのだ。


「ところでエルシィ、なんでまだ臨戦態勢なの?」


『え』


 エルシィの尻尾が機嫌よくパタパタと揺れた。うむ、エルシィ可愛い。


「うん、収穫に来るんじゃないかと思って」


「グルアアアアアアア!!」


 タイミングよく上空になにかが現れた。


「ルイス、結界」


「うん」


「エルシィさん、無茶だ!」


 お、リーダー格の少年、今度は結界を叩かなかった。えらいね。


「大丈夫、大丈夫」


 空から降りてきたのは、多分ウッドドラゴンだな。実物を見るのは初めてだ。

ウッドドラゴンは怒り狂った。


「人間の小娘!ワシの獲物を横取りするとは何事だ!!」


 養殖…収穫…つまり、このウッドドラゴンがアースドラゴンクイーンをここにポイして、増えたら食べるつもりだったってこと?魔物にも賢い奴がいるんだなぁ…いや、あれは魔族?ドラン君のこともあるし…どっちだ??


「ここは人間の領地だ。正確には我が家の領地。人の土地に放置したから駆除されたのだ。お前のせいで人が死んだ可能性もある。文句を言われる筋合いはない」


 ここは地図上、ヒルシュ領だもんね。エルシィ、カッコいい!!


「人間ごときが生意気な!」


 キレたウッドドラゴンの尻尾が僕の結界をかすめた。このぐらいならなんともない。しかし、エルシィは泣きそうになっている。


「ルイス!?」


「大丈夫!」


 僕の結界に揺らぎはない。怪我もない。だが、彼女はショックだったらしく泣きそうだ。

 そして、彼女が怒りの闘気に包まれた。



 瞬時にエルシィがウッドドラゴンに踵落としをおみまいした。動いたの、見えなかったよ。今まで本気じゃなかったんだね。


 そして、ウッドドラゴンを物理的にボコボコのベッコベコにしてしまった。ウッドドラゴンは完全にサンドバックだった。


 その圧倒的過ぎる強さに、新人さん達が泣いた。


「ルイスさん、エルシィさんを止めてください!」


「なんで?」


「だって、あんな一方的な…」


 そうか、この子達は安全な場所で育ったんだね。だから、エルシィに預けられたんだ。


「もしエルシィを僕が止めて、彼女がウッドドラゴンに殺されたらどうするの?僕はあのドラゴンを殺して君達も殺すよ。その覚悟があって聞いている?」


「………!?」


 彼らは僕の本気を感じて怯えた。


「君達は嫌いじゃない。だが、情けは時に仲間を全滅させかねない」


「あ……」


 リーダー格の少年が何か言いかけたので待ったが、結局言葉にはならなかった。


「エルシィは殺した分、覚悟をしているよ。だから怖いんだ」


 エルシィの代わりに、僕に報復されるのが怖いんだ。僕が死ぬのが怖いんだ。彼女が強くなった理由を知った今、それは現在も彼女を縛っているのだとわかる。


「…ある冒険者が、魔族に情けをかけた。そいつは強くなって冒険者を仲間ごと殺した。ただし、魔族を助けた冒険者をすぐに殺さなかった。嬲り、遊んだんだ。皮肉にも遊ばれていた冒険者だけは助けられ…その魔族に復讐したよ。魔族はね、自分より弱いものに好き勝手していいと考えているんだ。魔物も、知性がある奴はそういう習性がある。さらに魔族はプライドが高いから、報復する可能性がとてつもなく高い」


 彼らは顔面蒼白になっていた。


「だから、報復する気が起きなくなるまでプライドを粉々にするぐらい徹底的にやるか殺すかの2択しかない」


 あ、報復禁止の呪いもあったから3択?まぁいっか。

 話をしていたら、エルシィが止まった。怒りと殺気を混ぜた闘気を容赦なく浴びせながらウッドドラゴンを睨みつけている。


「…ヒィッ」


 物理的にボコボコのベッコベコにされたウッドドラゴンは怯えていた。

 もういいかな。逆らう気も無さそうだ。


「ごめんで済んだら騎士はいらん!貴様は私のルイスを殺そうとした!ルイスを傷つけるやつは許さない…!結界が無ければルイスが死んでいた可能性もある!ルイスを殺そうとしたということは、私に殺される覚悟があるということだ!苦しみぬいて死ぬがいい!!」


 怯えて丸くなる生き物には、すでに最強種族たるドラゴンの威厳などなかった。エルシィはウッドドラゴンを殺そうとした。


「…エルシィ」


「なぁに、ルイス。結界を解いたらダメだよ、危ないよ。怪我はしてない?大丈夫?ルイスに危害を加える愚かな生き物なんか、私がすべて滅するからね」


 笑顔のエルシィが僕に手を伸ばす。でもその笑顔はいつもと違い、どこか怯えているようだった。僕はエルシィの手に頬擦りした。


「今の僕はそう簡単には死なないよ。エルシィが悲しむから、きっちり魔具で自衛してる。だから、そんなに怯えなくて大丈夫」


「………………え?」


「僕はちゃんと、エルシィのおかげでこうして生きている」


 エルシィを抱きしめた。彼女は震えていた。大丈夫だよ、僕はエルシィの側にずっといるよ。


「ふ……うわああああああん!!」


「よしよし」


 ようやくエルシィが泣き出した。エルシィは我慢強いから、たまに自分の悲しみに気がつかないから、僕が支えてあげなきゃね。


 そしてようやくエルシィが泣き止んだ。


 新人さん達とエルシィが見つめあって固まっていた。言い過ぎたかな?



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