化けたなら騙したくなる
メイドインルイスの素敵な素敵な冒険者用服。私のための一点モノ。なんと素敵な響きだろう。朝の失態が喉元過ぎた私はルンルンだった。ルイスはまだダメージがあるらしく、こっちをチラチラ見ている。かわゆい。
しかも、ルイスがカッコいい系メイクを施して髪も緩くまとめてくれたので、可愛い系からちょいクールスレンダー男装の美人系にクラスチェンジした新エルシィなのですよ!お姉さんエルシィなのですよ!
騙してやるためにルイスを連れて冒険者ギルドに行くことに。ルイスは渋ったが、この素晴らしすぎる装備を自慢したいの!とおねだりしたら、折れた。ルイスは私に甘いのです。
他に素材を売るとかせっかくだから装備の機能検証のために依頼を受けたいとかの用事もあるけどね。
これだけ化けたから、騙したいじゃないか!
そして手を繋いだまま冒険者ギルドに入ると迷わずカウンターに行き受付のわんこ獣人さんに買い取りを依頼しようとした。いらない素材を換金しとかないとね。
「……………………(ぽ~)」
あれ?いつもなら、いらっしゃい!エルシィさん!とか言ってくれるのに、ボンヤリしている。目の前で手を振るが、気がつかない。以前もこんなことがあったような……
※ありました。
「綺麗なお姉さん、依頼ですか?」
「………………は?」
たまにパーティ組んで依頼を受けるボーデンが、寝ぼけたことを言っていた。私は依頼する側ではない。基本的に依頼をこなす側である。しかし、前にも似たようなことがあったような…
※ありました。
「はっ!い、いいらっしゃいまへ!!冒険者ギルドへようこしょ!!」
犬獣人君がようやく再起動したが、盛大に舌を噛んだ。痛そうである。
「……大丈夫?」
「らいじょーぶでひゅ!」
大丈夫では無さそうだが、本人が大丈夫というならいいんだろうか。
おかしいな、前にも似たようなことがあったような…
※くどいですが、ありました。
「あのさ、人の婚約者をジロジロ見ないでくれません?」
「ルイスさん!?」
わんこ獣人さんとボーデンが、ぎぎぎ…とゆっくり私を見た。
「まさか…」
「エルシィさん!??」
「エルシィでっす」
『ええええええええ!?』
その場にいた冒険者ギルドの全員から叫ばれた。あっはっは。私も今回は前回より化けた感がスゴかったよ!騙された!とか、くっそ美人だな、悔しい!中身はミニゴリラ…いや、ドラゴン的なナニかのくせに!とか色々言われている。
最後言ったやつ、後でちょっとツラ貸せや。
「エルシィ様」
「なに?」
ん?様??あれ??
「ボーデン君、可愛いわねって言ってください!!」
土下座された。そんなにか?そんなにそれは言ってほしいの?マジで??何が楽しいの?と思ったが、ノッてみた。お姉さんぽく足を組んで、土下座するボーデンを見下して余裕綽々って感じで。
「…ボーデン君、可愛いわね」
「ぬああああああ!!ありがとうございます!ありがとうございます!!」
めっちゃお礼言われた。ナニコレ。
「エルシィ様、この愚民が!って言ってください!」
「踏んでください!」
「ひざまづけって言ってください!」
「…えっと…」
何故皆してそんな罵られる系をチョイスするの?それ、何が楽しいの?皆のテンションがすげぇ。踏まれたいとか意味わからん。新品とはいえ、土足は汚いよ?
「も~、なんだよ~。うるせ~な~。朝寝できね~だろ~」
ボサ髪に不精髭のやる気が微塵も感じられないギルマスが、上から降りてきた。いや、働けよ。冒険者ギルドは開いてるんだから。
「…………」
ギルマスがこっちを見てフリーズした。
「おそようございます」
嫌みを込めた挨拶をしたが、ギルマスはまるで巻き戻しみたいに直立姿勢で後ろ歩きをして建物内へ戻ってしまった。
「え?」
そして、数分で走って戻ってきた。私はギルマスが走ったことに驚いた。普段ちんたらしていて機敏な動きができるようには見えなかったからだ。見たことないくらいに身なりが整っている。案外イケメンだ。全く好みではないけども。
「初めまして、美しいお嬢さん。お名前をうかがっても?」
「あ、えと……」
なんか、以前もこんなことがあったような?
※くどいですが、ありました。
「エルシィは僕の婚約者です!触らないでください!変なことをさせないでください!……貴様らの命が惜しければな…」
最後はよく聞き取れなかったけど、ルイスブリザードにより一気に鎮圧されました。めでたしめでたし!
あれ?私、なにしに来たんだっけ??
周りの異常なテンションに、目的を忘れるエルシィでした。
頑張れルイス、敵は多いぞ。




