ジェリーちゃん家出➡迷子
「いやあ、流石は勇者様だねぇ……あれ?エルシィちゃん??」
王様はご機嫌だが、私のテンションは完全に低下している。
「………はい」
「…………大丈夫?」
「大丈夫じゃないんです!ジェリーちゃんがどこにもいない!私の可愛いジェリーちゃんがあああああ!!」
私は泣き崩れた。ルイスが頭をナデナデしてくれたので、ちゃっかり抱きついて頬ずりした。すべすべだった……だと。ルイスは美肌ですべもち肌でした。
素晴らしいもちもちぶりなので、甘噛みしたらキャアッて言われた。私なら間違いなくギャアと言う。いや、多分殴る。ルイス相手なら寸止めになるはず。叫び声や反応にも女子力の低さが溢れております。解せぬ。
「エルシィちゃん、ルイス君が死にそうだからやめてあげなさい」
「え?」
ルイスは全身を真っ赤にして倒れました。
「ルイスうう!?」
最近のルイスはやたらシャイなのですが、どうしたのでしょうか。キスのせいなの??私を丸裸にする大胆さはどこに行ったのでしょうか。
あまりにも私が嘆いたので、面倒見がいい魔王様が来てくれました。
「スライム達に話を聞いたけど、家出じゃないみたいだよ」
「え??」
「はぐれたって言ってる」
「つまり、ジェリーちゃんは迷子!?さ、探さなきゃ!!」
「エルシィちゃん、このイケメン誰?」
「魔王のマオ君です」
「魔王のマオリュートリアマナルフィードだ」
「まおう?」
おじ様ったら、真っ青だね。どうしたのかな?冷汗すごいよ。
「エルシィちゃん、こちらのお方は」
「だから魔王のマオ君です」
「魔王のマオリュートリアマナルフィードだ」
「エルシィちゃん!そういうとんでもないお方を呼ぶときはおじ様に先に教えといて!おじ様ガラスみたいに繊細なハートの持ち主だから、びっくりしすぎたら死んじゃうから!!」
おじ様は必死である。
「…はい」
私は素直に頷いた。しかしマオ君は呼んだわけではない。おじ様、ごめんなさい。おじ様は心臓に毛が生えてる系だと思ってました。案外繊細だったんですね。マオ君を見ただけで死んじゃうなんて…
じゃあ、うちの庭のドラゴンとかは黙っとこうと私は思った。
しかし、おじ様はその卓越したコミュ力ですっかりマオ君と酒呑み友達になっていた。ガラスみたいに繊細なハートはどこいった。
ならばと庭のドラゴンについて話したら、オブラートを要求された。魔王に比べたら、ドラゴンなんて大したことないだろうに。おじ様は変わっているんだと納得した。
さて、脱線したが迷子のジェリーちゃんを助けにいかねばならない。
私は情報収集することにした。
「何の用だ」
「おっさんに聞きたいことがあるのよ」
牢の中には疲れた様子の傭兵がいる。何度か敵として遭遇したことがある。あのメンバーの中ならば、実力的にも周囲を見る余裕があったのはこの男だろう。
「虹色のスライムを知らない?」
顔に傷を持つ男はキョトンとした。
「素直に答えたら、牢から出してまともな仕事を与えてもいいけど?」
「…本当か?」
「私が嘘をついても仕方ないじゃない。チャンスを逃すの?」
「……間違いなく戦ったから、あの場にいたのは確実だが、気がついたらいなくなっていた。だが、タイミングからするともしかしたら転移で逃げた奴に巻き込まれたんじゃねーか?」
「ジェリーちゃああああん!?」
私は牢に倒れ臥した。
「…大丈夫か?」
「大丈夫じゃないよ!こうしちゃいられない!ジェリーちゃんを助けなきゃ!」
「まさか、独りでか!?無茶だろ!」
「大丈夫!こないだはほぼ単身で魔王城制圧したから!人間の方が弱いから問題ない!!」
「………………………は?」
牢に取り残された傭兵は、固まっていた。帰ったら出してあげよう。それより今はジェリーちゃん!!
まっててね、ジェリーちゃん!!お母さんが助けに行くからね!!
ただ、面倒なのが人間の世界です。制圧だけなら私一人でどうにでもできるけど、いきなり攻め入れば他の国から非難されるわけです。下手をすれば、周辺諸国に脅威と判断され、包囲攻撃をされてしまう。いや、下手をしたら兵糧攻め?経済制裁もありえる。私は大丈夫でも、罪のない町人や商人なんかが傷つけられては困る。
人間と国交がなかった魔族討伐とは違うのだ。というわけでシルス・ルイスと公爵の名代として攻略対象であるアイザック=ストーンズと共に隣国に行くことになった。
表向きは国内を荒らした部隊がお前の国の奴みたいだよ、どうしてくれんだゴルァ!という理由での訪問です。
しかし、通達を出したが返事が来ない。
しかも、確認したらある日から突然返事が来なくなったらしい。
え?ホラー??ホラーなの??仕方ないから返事がなくても行くことになりました。
アイザック=ストーンズは残念な悪役令嬢の残念なヒーローです。次から絡んできます。
ちなみに身分的にはアイザックが1番上でエルシィ・シルス・ルイスは護衛としてついています。




