プロローグ
私ことエルシィ=ヒルシュが4歳の時、池に落ちて高熱を出した。この時、不思議な記憶を思い出すことになる。
広瀬 絵里衣
かつての自分の名前と、ここではない…いわゆる異世界で暮らした記憶。そして、この世界が熱愛☆魔法学園というゲームと酷似していること。さらに、自分がこのゲームのヒロインであることを思い出した。
しかし、大事なのはそこじゃない。
私には、ルイス=クレバーという幼馴染がいる。彼は私が14歳……つまり、ゲーム開始時に死んでしまう。そして、それをきっかけに聖女としての力に目覚めて熱愛☆魔法学園の舞台である魔法学園に通うわけだ。そして、攻略対象と魔王を倒してハッピーエンドなわけなのだが………
ルイスは私の初恋…どうしても死なせたくはない。ならばどうするか……答えは簡単。私が強くなり、ルイスを守ればいいのだ。ルイスは私を庇って死ぬのだから、私がルイスに庇われなくても大丈夫なぐらい強くなり、逆に敵を倒せばいい。
幸い我がヒルシュ家は聖女を輩出していることもあり、武家貴族。鍛えるにはうってつけだ。さらに、父は剣聖とも呼ばれている。強くなるには恵まれた環境と言えよう。
「おとーさま!わたしをきたえてください!」
かくして、私の戦いの日々が始まったのである。訓練は苛烈を極めた。父に容赦というものは存在せず、両親が教育方針で離婚の危機になるぐらいスパルタだった。しかし、私が頼んだのだ、どうしても強くなりたい…いやならねばならないと母を説得してどうにか離婚は回避した。死にかけたこともたくさんある。やはり、強くなるには実戦あるのみ。リスクもしかたない!
ヒロインポテンシャルなのか、私は確かに強くなった。有名な女冒険者となり、世界中を飛び回って武者修行にあけくれた。
もちろんルイスへのアピールも忘れない。綺麗な宝石や獲物を貢ぐのだが…
「エルシィ、無理はしないでね」
優しい瞳で心配される。高価な宝石は受け取ってくれないが、獲物はおいしいご飯にしてくれるし、保存食なんかも作ってくれる。怪我をしていれば甲斐甲斐しく手当てをされ、世話をされる。
一度大怪我をしたときなど、寝ないで看病してくれた。恋心は膨らむばかりである。病弱なルイスは、とても気配りが行き届いた看病をしてくれた。ちなみに今は栄養がいいからか健康体である。
こんなお嫁さん…じゃなかった、お婿さん欲しい。
ちなみに彼が1番喜んだプレゼントは私の刺繍だった。唯一の女性らしい趣味である。母に教わりました。夜営で寝ずの番をする時や馬車での移動中などにしている。針は武器になるし、ウトウトしたら指に刺さるから丁度いい。しかも針は特別製で壊れにくく、竜をも倒した業物だ。
針でどうやってって?この針は魔法で伸びるので、眉間に打ち込み、脳にダメージ与えたら一撃でした。
ちなみにルイスは攻略対象ではない。モブである。攻略対象なのは、彼の兄であるシルス=クレバー。彼とはよく冒険者としてパーティーを組んでいる。正直、恋愛感情はお互い皆無で親友である。
そして、14歳…運命の戦いが始まる。