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漆黒の青山  作者: 山田遼太郎
メインエピソード
12/22

第五話~追憶の青山②~

日付が変わってからの投稿となってしまいました。お待ちくださってた方がもしいらっしゃいましたら、申し訳ない気持ちであります。


さて、前回の意味深な夢から覚めた晶くん。彼を待ちうけていたもの、それは……。


最近、ある御方から、『漆黒の青山ってサービスシーン少なくて、ものたりねー!』とのありがたいお叱り&アドバイスをいただいて、読者サービスの重要性とはなんたるかを深く考えさせられた次第であります。この場を借りて感謝を。ありがとうございます!


それではどうぞ!

[side:青山 晶]


 四月二十七日 十六時三十五分 青山邸一階


 勢いよく上半身を跳ね起こし、荒い息を吐く。

 いやな夢だった。

 真っ暗闇の世界で、ぼくと瓜二つの顔をした人間が、ぼくの過去を自分の事のように語っていたのだ。

 有り得ない状況のはずなのに、相手の体温や息づかいといった存在感を間近に捉えられるような、奇妙な現実味が胸に残って気持ち悪い。


「あ、れ? ここ家? いつ帰って……来たんだっけか」


 自分の今いる所が、リビングのソファの上だという事を遅れて認識する。

 電気街から戻ってすぐ、うたた寝してしまったらしい。

 意識も視界も霞がかったように判然としない中、瞼をしばしばさせながらソファを探って、手近な位置に置いてたはずのケータイを求める。

 すると、


『もにゅんっ』


 という擬音の似合うやわらかな物体に、手が沈み込む。

 何かと思い、右側に視線を落とすとそこには、


「すぅすぅ、すぴぴよ」


 などと安らかな寝息をたてる美しい女性がいた。

 戸籍上の母親である蒼樹 うみが、ぼくと同じソファの上で、寄り添うようにして眠っていたのだ。

 で、今ぼくの手が思いっきり触ってるのは、たわわに実った彼女の双丘。

 弾力も質量も、以前事故で揉みしだいた宇佐美の胸とは比較にならない。これが大人の力か。

 今月に入ってのラッキースケベカウント、ただいま三回目。ぼくの人生の中で最高頻度である……!


「って喜んどる場合かァーッ!」


 慌てて声を上げ、飛び退こうとした。だが次の瞬間、海さんの手が伸びてきてぼくの腕を掴む。

 意外な力になす術もなく引き寄せられ、両腕でがっちりと抱き締められてしまった。

 花の蜜にも似た甘い香りに包まれても、楽しむ余裕などない。胸が……胸が顔に押し付けられて、息ができぬ!


「うにゅ~っ、つよしさぁん……すきぃ♡」


 寝言で親父の下の名を呼び、がばっと覆い被さってきた。

 あろう事か、幼児みたいに甘えた笑顔を浮かべながら、グラマラスな肢体をすり寄せてくるではないか。

 人違いです海さん! ぼく一応あんたの息子! まずいですよ!


「ね~え? おねがい、今日も『ほらほら』してほしいな~♡」


 ほらほらってなんだー! もしかしてチョメチョメですかーッ? いつも海さんに何してんだよ親父ィーッ!

 こちらの焦る様を堪能するように寝ぼけまなこを光らせる義母は、ついに、すべらかな指をぼくの下半身の色々危ない部分に這わせてゆく。

 それ以上、いけない!


「海さん俺です晶です起きてくださいィーッ!」


「あんっ」


 渾身の力で押し返すと、海さんはソファの下に転がり落ち、ペタン座りの体勢でカーペットへと着地した。そこでようやく、完全に覚醒したらしい。


「ふぁ? 晶さぁん? おはよぉ」


「おはようじゃないっすよ! まさか義母から逆れ……げふんげふん、襲われるとか思いませんでしたわ! 何で一緒に寝てるんですか!」


「いいじゃない、お母さんなんだからぁ。年だってほんの二倍くらいしか離れてないんだし、大丈夫だよぉ」


「すみません、大丈夫の基準がちょっとわかんないです」


 ていうか、待てよ。

 ぼくの二倍って、海さん三十二なの? 若っ! でもって娘のメメちゃんが十五歳だから、十七の時に産んだって事か!?


「それに私ね、ずっとオトコノコ欲しかったのね? だから念願の息子ができて嬉しくて、夢だった添い寝をさせていただきましたぁ~」


 寝癖のついたふわふわカールのロングヘアーをかきあげて、事も無げに言い放つ海さん。

 ああ、この人もメメちゃんに負けず劣らず色々ずれてるわ。

 呆れ返ったぼくは、後ろ髪を掻きむしる。


「そうだとしても限度ってありますよ。もうちょっと距離感大事にっていうか、俺ら血の繋がりもなくて、ひと月前まで他人だったわけで……」


 とっさに口を閉ざすも、遅い。和やかだった海さんの表情に陰が落ちる。


「ごめんなさい、迷惑だったね、晶さん。でも、うなされてたから悪い夢でも見てるんじゃないかって……ほっとけなくて……」


 少女の面影を多分に残す美貌が、泣く寸前みたく、くしゃっと歪む。

 ぼくはすぐさま土下座して謝ろうと身を沈めたが、


「あ、それはそうとね~、剛さんから伝言あったの忘れてた~」


 一瞬にして能天気な笑顔に転じた海さんの姿に、勢い余ってズッこける。

 ダメだこの人、掴み所が全くなくて、行動が読めない。


「もぉすぐゴールデンウィークでしょ? まとまった休みがとれるから、みんなで温泉旅行でも行こうって~! 楽しみね~!」


 え? と壁掛けカレンダーに目をやったぼくは、今さら気付く。

 ホントだ、もうそんな時期だったのか。

 これまでは連休があったとしても基本的に一人で過ごしてばかりいたので、気にも留めていなかった。

 それにしてもあの堅物親父が家族サービスとはね……。まァ九割型メメちゃんと海さんのためだろうけど。

 今頃は定時帰宅のために、オフィスにて残務処理をハイスピードでこなしているだろう親父の働きぶりを、しみじみ思い浮かべる。

 流線形のスタイリッシュな体型に黒スーツを着こなす、鋭い三白眼の男。ちなみに彼の職業は、葬儀屋でもキナ臭い自営業でも宇宙人監理局でもない。

 驚くなかれ、結婚コンサルタントである。あの強面で、だ。

 大手結婚相談所に長年勤務し、結構な業績を叩き出したりしてる。


「ただね、さっきメメさんに聞いたんだけど……あの子、最初の休みは用事があるっていうの。予定変わっちゃうから、剛さんにも相談しなきゃ」


「えっ? そうなんですか?」


「なんでも、同じクラスのとお出かけするんですって!」


 その言葉を聞いた直後、ぼくの中だけで時の流れが静止する。

 お出かけ?

 メメちゃんが?

 男と!?


「最近その子の事で凄く悩んでる感じだったのね、メメさん。元気ないし、ため息増えたし、ご飯三杯しかおかわりしないし。心配だなぁ」


 顎に手を当てて何かしら考え込む海さんをよそに、ぼくはほとんど放心状態で虚空を眺めるのみだった。

 ちょっと待ってちょっと待って。

 元気ないって……二人でエロゲ探し回ってる時、そんな素振りなんか全然見せてなかったじゃんか。どうなってんだ?

 男の事で悩んでるって言ったら、邪推はしたくないけど、つまりは『そういう事情』じゃないの?

 むしろ、それしかないんじゃないの?

 うえぇえー? 聞いてないよォーッ!


 混沌渦巻くぼくの心境を具現化するかのように、窓に映る空は、怪しげな黒い雲を纏い始めていた。

いかがでしたでしょうか。

ご意見ご感想、全裸逆立ち腕立て伏せでお待ちしております。


次回はヒロイン・メメちゃんに男の影であります! どーすんだ晶! やべーぞ相手イケだぞおい!


という訳でご期待くださいませ。

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