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漆黒の青山  作者: 山田遼太郎
メインエピソード
1/22

~序~

肩の力を抜けるまんがTIME風のコメディーを目指して書きました。今回ははじめての投稿ということで、序章だけ。お見苦しい箇所があったらすいません。

[side:蒼樹 メメ]


 四月二十二日 七時十五分 登校路


 わたしのお兄さんは闇の工作員エージェントです。

 一見、普通の高校生ですが、それは仮の姿。邪悪を従え、邪悪を葬る、この世でただ一人の存在だそうです。

 正体がバレないようにと常に周りの目を気にして、他人との必要以上の接触を避けて生活してます。たとえば今だってほら、電信柱の陰から陰へ、いちいち身をひそめながら移動してるんですよ。しかも、塀とか植木とかポストとか、何らかの遮蔽物を背にしていないと落ち着かないみたい。


「お兄さん、どうしてそんなに警戒してるのです?」


 わたしが訪ねると、お兄さんは、脂汗を浮かべて答えます。


「お前には視えないのか? そして聴こえないのか? そこらを漂う邪なる怨念の嘆きが!」


「えっ! もしかして何かいるんですか? やだ、こわい!」


「下がっていろ、相手は俺ほどの特級討魔師でも滅多にお目にかかれない、カテゴリA+。お前ごときでは直視しただけでミンチになるぞ!」


 そんな簡単に挽き肉ができてしまったら、精肉業の皆さんが路頭に迷ってしまいます! わたしが自らの想像に身震いをしていましたら、一軒家の前で立ち止まったお兄さんは、「来るぞ」と身構えました。

 すると、その数秒後、正面の植木ばちに咲くアジサイ目掛けて、真っ黒な蛾がひらひら舞い飛んできたではありませんか。


「奴の眷族だ! くっ、ここまで嗅ぎ付けられていたとはな!」


 見えない力に押さえつけられるみたく、膝をつくお兄さん。苦しげに眉を歪めて、たいへん辛そうです。

 わたしにできる事はないのでしょうか? ああ、まごついている間に、邪悪な使い魔がお兄さんの肩にとまって!


「ぐああ、きもちわる!」


 悲鳴をあげて、お顔がみるみる青ざめていきます! がんばって!


「お前は逃げろ!」


 お兄さんはわたしの肩に震える手を置いて、必死にそう促します。


「でも、お兄さん!」


「いいから行け! お前は学校に行って、普段通りの日常を謳歌するがいい! 俺だけで、俺だけでたくさんだ……こんな呪われたカルマを生きるのは……」


「わかりましたお兄さん……ごめんなさいっ!」


 わたしは涙ながらに走り出します。決して振り向かないように。

 孤独な戦いの使命を背負う彼の覚悟を、せめて無駄にしないようにする事しか、今の無力なわたしにはできないとわかったからでした。

 ありがとう、お兄さん。わたしは忘れません。この世の全ての人があなたの気持ちを理解しないとしても、わたしだけは味方でいると誓います!



 その日、わたしは一人で高校に向かい、お兄さんはついに追い付いてくる事はありませんでした。

 お昼休みにLINEで連絡をとったところ、『なんとか奴を退けたが、危ないところだった。力を解放した反動でお腹が痛くなったから今日はもう休む』との返信がありました。

 お兄さん、おいたわしや。

 今はどうか、ごゆるりと傷を癒してください。わたしはいつまでも、あなたを待っていますから……。

お読みになってくださった方がいらっしゃれば、最大限の感謝を捧げたいと思います。更新はできるときに行おうと思います。

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