9話
「うさぎ、説明終わったか?」
そう言ってリヒトさんがベランダから出てきた。
ほんの少しだけするタバコのにおいが僕の鼻を掠める。
「はぁ・・・。終わったよ」
「ん、そうか。じゃあ、次はここにいる奴らの説明をしてやってくれ。俺はシャワーを浴びてくるから」
リヒトさんはお風呂場があると思われるところに行ってしまった。
少し不安になった。リヒトさんが僕を避けているような気がしたから。鋭いリヒトさんのことだから僕が嘘つきなことに気づいてしまったんじゃないか。
もし、うさぎさんがそのことに気づいたら彼もリヒトさんのように僕から離れて行ってしまうかもしれない。
僕は今まで自分から人を遠ざけていた。
でも、リヒトさんとうさぎさんには僕の近くにいてほしい、とそう思った。
こんな風に思うのは初めてかもしれない。
それに何だか心の中がほわほわする。こんな気持ち初めてだ。
泣きたい。自分の心の中を得体のしれない感情が支配したからだろうか、無性に怖くて泣きたくなった。
そんな僕の気持ちを汲み取ったのか、うさぎさんは目を細めて僕の頭をクシャっとした。
「大丈夫だよ。僕は君からは離れない」
なんだか、ものすごく心の中がほわほわする・・・。