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嘘つきは勇者の始まり。  作者: 夜音わど
ごめんなさい
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プロローグ

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

僕は、また罪を犯してしまった。もう、両手がいくつあっても数えきれないほどの罪を。

嘘をついてしまった。

「嘘つきは泥棒の始まりだ」と大人は口をそろえて言う。

それは、僕が小学生だったときも、中学生だったときも、高校生になった今も、だ。

悪いことだ、とは分かっている。でも、やめることは出来なかった。

他人を傷つけるため?否、自分のためだ。

自分で言うのも恥ずかしいのだけれど、僕の見た目は女の子のようだ。

「朝陽 斗真」という何とも男らしい名前に反して、身長は、160センチ、二重で、ものすごく童顔で。

そんな顔を見せたくないがために伸ばしていた前髪が、自分をもっと女の子っぽく見せていると気づいたのは最近のことだった。

しかし、最近はそんな前髪の長さを心地よく思い、切ろうとすら思わなくなっていた。

また、自分の顔に嘘をついてしまった。

罪悪感に酔いしれる間もなくポンポンと口をついて出る嘘たちは、いつの間にか僕の体を蝕んでいたようで。感覚が麻痺して、嘘をついた後に「ごめんなさい」と謝るのはやめないものの、その行為がうわべだけになっているのを、僕は薄々自分で気づいていた。

 中学生のころ、内申点を上げるためだけにクラス委員に立候補したとき、あのときは、僕にも「ごめんなさい」の意識はあったのに。

 一年後、高校生になった今、先生からの評価を上げるためだけに風紀委員に立候補したとき、僕には「ごめんなさい」の意識はもうなかった。

 こんなにも薄汚い僕を罵ってくれる相手は、僕にはいなかった。

他人と関わるのを、できるだけ避けたい、そう思っている僕には当然ながら友達という存在は、一人もいなかった。クラス委員をやっていたときは、少しくらいは話すこともあったが、最低限しか話さなかった。

 友達は要らない、ただ僕のやっていることを間違っていると、そう言ってくれる人がほしい。

これが、嘘つきな僕の唯一の願望。でも、叶うことはない。だって行動していないから。

そのくせして、偉そうなことばっか言う。だから、薄汚いんだ。

 そんなことを考えながら、テスト週間なのにサボって駅前をぶらついている僕はやっぱり嘘つきだ。

本当は、良い点数が取りたいって思っているのに、勉強をすることを自ら避けているんだから。

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