イラストとSS
以前友人の吉原世さんに描いてもらったイラストです。千歳とイリス、カーメル公です。
まだ彼女が未読の時で、私の説明も適当だったため細部が違っていたりしますが、雰囲気は十分出てますよね。
作品中に登場してはいませんが、プテラノドンも悪くないですね。うーん、飛竜のビジュアルはこっちがよかったかな?
↓のSSは以前活動報告に書いたものです。ファイル残してなかったかなと思ったらありました。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
《悩ましき朝》
小さな身体は抱きしめてしまえば、腕の中に完全におさまってしまう。どこもかしこも華奢で幼げで、女の色香などまだ少しも感じさせない。
だがたまらなくいとおしい。柔らかな髪に頬ずりをし、そのまま白くなめらかな頬に口づけを落とせば、恥じらいながらもすり寄ってくるのがいじらしかった。
丸い顎に手をかけて唇を重ねる。瑞々しく柔らかな果実を味わえば、幼い姿には不似合いな艶めいた吐息を漏らした。それが自分の男に火をつける。
おびえさせないように優しく、けれど逃げを許さぬ強さで組み敷けば、うるんだ瞳が見上げてきた。その奥に自分と同じ熱が灯っていることを知り、誘ってくるまなざしに理性など軽く遠ざかる。
夢中で抱きしめ、柔らかな肌に手を伸ばした――
――ところで、目が覚めた。
「……………………」
落胆と自己嫌悪に朝っぱらからため息が出る。
毎朝毎朝、同じことの繰り返しだ。十代の若造ではあるまいに、三十路も目前で何をしているのか。
これが欲求不満というものか。これまでの人生で、ついぞ縁のなかった現象だった。必要な時には相手を見繕い、それなりに楽しんできた。だが今は、他の女ではとても満足できそうにない。
「公王様、お目覚めでいらっしゃいますか」
「……ええ、起きています」
侍従の呼びかけに返事を返せば、帳の向こうで「はうっ」とうめき、次いで倒れる音がした。他の者がバタバタとやってきて、急ぎ部屋から運び出すのが薄絹越しに見える。
「あ、あの、公王様……」
「何を騒いでいるのですか。もう起きます。支度を」
寝台から下り立ち帳を開けば、その場にいた侍従たちが次々に倒れ、または崩れ落ちた。それにもため息をつき、小卓の上のベルを鳴らす。
入ってきた秘書官は、床で悶絶する侍従たちを一瞥し、疲れた顔で息をついた。
「公王様、申し上げにくいのですが、もう少し抑えていただくことはできませんか」
「……何をです」
夢の残滓を振り払い、前髪をかきあげれば秘書官もそっと目をそらす。このところ、寝起きの自分と目を合わせる者が一人もいなくなった。そんなにひどい顔をしているのだろうか。
「今日も彼女のいない一日が始まるのですね……辛いこと……」
胸に溜まった熱を吐き出す。秘書官のこぼした声は小さすぎたため、彼の耳には届かなかった。
「つらいのはこっちです……もういっそ彼女をさらってきてしまいましょうか……」
主君の色気に当てられて、侍従が一人のこらず使い物にならなくなる前に。色気の発生源に責任取って生贄になってもらいたい。
主従のため息とともに、カルブラン宮殿の朝は始まる。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
本編中に萌え要素がまったくない時に書いたんでしたっけ。お遊びSSですので、しょうもないネタなのはご勘弁。




