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土魔法と氷魔術

森と草原の境目でたき火をしながら細目の包帯を出して袋を作っている。


今回は砦に戻るまでもてば良いので、さほど強度は必要ない。


作っているのは、土嚢袋である。細目の包帯を互い違いに編み込んでいるだけである。


長方形の形に編み込んだら袋状に折って二辺を編み込む。念の為ベタベタ糸で補強して裏返せば完成。それをもう一つ作る。


土嚢袋に小石サイズの魔石、五百五十個程を入れる。

もう一つの土嚢袋に残りを入れる。残りの五十個程は強化固体の魔石であり拳ほどの大きさがある。


一個だけあった最大級の魔石は、腰袋に入れておく。


夕方前から始めた編み物ではあったが、終えたのは日がすっかり沈んだ後だ。


夕飯に森の幸とオーク肉を焼いて食べながら。


この騒動の元である。あのオーク達は何故一週間近く、あの場所にいたのだろう。


ありえないとは言わないが不自然な気がする。


ゴブリンを蹴り散らかし、次は人間が相手だと全オークが集まるのを待っていたのか。


それとも、討伐隊を撃退した事で野営地をオーク本拠地として住み良くするために建設中だったのかも。


それなら納得できるが例え建物があってもドラゴンに踏み潰されている。

何より討伐隊のテントも原型を留めていないからさっぱり分からない。


でもそもそもオーク達は討伐隊をいや人間を襲うために集まって居たのだろうか?


前提条件が違うのかも知れない。


実はあのドラゴンが定期的に現れて、オークを食べているのではないか?


妄想するに、野営地にしていた場所はいつもドラゴンが舞い降りる場所だった。オークはその場所を包囲して今回こそはドラゴンを撃退しようと待ち構えていた。

そこに討伐隊が来てしまい、オークの習性で襲い掛かり占拠してしまった。


すぐに包囲陣を立て直せば良かったが、討伐隊の食料や魔道具、武器、防具などの荷物があった為、長居をしてしまった所で飛来したドラゴンに踏み潰されたと。


そう考えると、辻褄が合う。

討伐隊を撃退する為に集結していたのなら、どうやってその情報を得ていたのか。

人間がオークに教えるなんてしないだろうし、事前情報として噂されていたのはゴブリン退治だ。オーク達には関係無い。



オーク達からしたら、討伐隊との戦いは想定外だったのかもしれない。


だからと言って、オークの戦いを邪魔した気にはならない。


オークのリーダーがどんなに優れた固体であったとした所で、巨大ドラゴンからしたらイワシを率いるリーダーがサンマに代わった程度であろう。


ドラゴンとオークの戦いの結果に大きな違いはないと考えられる。



そんな事を考えつつ、今夜も蜘蛛糸警報装置の上で眠りに付いた。




翌朝、魔石を高い木に縛り付けてから野営地を見に行った。


一晩で食べ尽くされたのであろう、オークの肉片さえ無かった。


ざっと見たが魔石も無い。もしかしたら魔物は魔石を取り込む度に能力が上がるのかもしれない。


アタシも純粋には人間ではないから、もしかしたら魔物に近い存在かもしれない。食べたら能力が上がるかもと思ってしまった。


武器防具も討伐隊が置いていった道具もない。


これはゴブリンあたりが持ち去ったのであろう。


強いゴブリンが増えていないことを祈るばかりである。


再び森の境目に戻り倒木に座った。


これは休憩の為ではない。土魔法を使うためである。


ここに着く間に実験していた結果。恐ろしい事が出来るようになったのである。


以前、土に土魔法を使うことでサイコロを作ることが出来たので違う物質でも実験したところ。


木刀を作ることが出来たのである。サイズはどんなに魔力を注いでもお尻より一回り大きい程度であるがイメージ通りの造型が出来たので驚いた。


元の世界なら土産物屋さんに売っているような木刀を懐かしがって暫く振り回していたが、素材の強度の問題なのか簡単に折れてしまった。


そんな土魔法を使い、木製のソリを造り始める。


ブレード二本と間を渡す板二枚。

ベトベト糸で張り合わせて一日しっかり乾かす。

それでも強度を少しでも上げようと、釘の代わりに固い糸を石で打ち付けておく。


子供用のソリにしか見えないが、土嚢袋を二つ積み重ねるだけなので問題あるまい。


乾く間に、引っ張るためのロープを作る、こちらはいつもの蜘蛛糸だ、柔らかい太目の糸を束ねて編み込んでいく。


握りの部分は太目に編み握りやすくする。


昼過ぎに完成したが、ベタベタ糸が硬化するまで未だ掛かる。


何をしようかと考えていた時に閃いた。


魔石に土魔法で彫刻したら魔道具になるのではないかと。


魔石がいっぱいあるので実験するには事欠かない。


さっそく小石大の魔石をお尻の下に置いて土魔法で『水』と彫刻するイメージをした。


暫くするとお尻が冷たい。


しまったと思った時には遅く、お尻がびしょ濡れになっていた。


またお漏らししたような状態に、がっかりするが誰も見ていないし自然乾燥に任せることにした。


魔石を見ると水が出続けている。実験は成功だ。


魔石は宿っている分だけの魔力を消費しきれば効果は勝手に止まる。


自由に止めるには制御文字が必要になるのだろう。


そうでないと『火』なんて刻んだ直後から燃え始めて止められなかったら危ないことこの上ない。


水が出きった先程の魔石とは別の魔石をお尻の下に置いて『水出水止』と彫刻したら、いきなり水が出ることなく問題なく出し止めする事が出来た。


イメージと共に漢字を土魔法で彫刻するだけで魔道具となるだなんて、なんてお手軽なんだろう。


危険は無いのかしら。


そう思うが、この世界の文字はアルファベット『ABC』である。漢字の意味を知りイメージしながら彫刻しないといけないのだから、正解に辿り着くまでに試行錯誤を繰り返しているに違いない。


だからきっとこんな簡単な事で、この世界の常識が変わってしまう事が分からないのであろう。


ずっと疑問に感じていた。


それは『氷』。


『水』があるのに『氷』は聞いたことも、本に書いてあったこともない。


どこで飲み物を注文しても、井戸水より冷えた飲み物が出てきた事はない。

物を冷やす事が出きると言うのは、生活を一変させることが出来る。


流通には欠かせないし、保存も用意だ。


魔法と科学が融合した真空の金属箱と言う凄い技術の物がある割りには、冷やす魔法が無いという。


ちぐはぐさを感じる。


これは『氷』『冷』と言う漢字の意味が、単に訳せていないと言うことなんだろうか。


技術の秘蔵は出来るが、概念の秘蔵は出来ない。


氷魔術が無いことが、この世界に無いことを物語っている。


アタシは魔石から出た水がそのまま氷り、滴の形で地面に落ちるのを眺めていた。



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