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パニクる親父は誰得?

宿屋に着き、やや遅めの昼御飯を頂く。


食べながら確認する内容を整理する。


ジャムモドキの作り方を教えるのは良いけど、そもそも商売として成り立つのか?

防腐剤どころか冷蔵庫もないのだから日持ちもあまりしない。

果物が普通に美味しいのだから尚更である。

たとえ売れたとしても材料があれば簡単に真似が出来るのだから、恒久的に売り続けることは難しいと思われる。

特許みたいな概念があれば、その辺りはクリアできるけどね。

更にそもそもエリーさんがジャムモドキで商売する気があるのか?

その辺りを確認する必要があると考えを纏める。


昼御飯の時間帯が終わり、宿屋の親父が後片付けの食器を洗う音がする。


その音を聞きながら待つアタシって。


誰かが見ていたらどう思うのだろうか。


思わずため息をもらす。



親父がお茶を持って厨房から現れたので、さっそく朝の続きだ。


先程纏めた考えを話すと、親父もその辺りは検討済みなのか、淀み無く答えてきた。



まず間違いなくジャムモドキは女性に売れるから商売にはなる。

保存が難しいなら小売りすれば良い。どのみち大量に作れないのだから。

特許と言うのは知らないが商人ギルドに通知すれば勝手に真似されることはない。

本人のやる気は関係無い、やらなきゃ仕送りすることも出来ないのだから。


やる気は重要だと思うが、エリーは長男と一緒に率先して料理をしていたくらい料理が好きだから、問題など起きないだろうと言うことだった。


でも来たときにアタシが最初に確認するから、親父さんは言ってはダメだと話した。

親父さんが言ったら命令になってしまう。

嫌々作る料理は、買ってくれるお客さんに失礼だ。

そんなことにならないように、本人のやる気を確認するのはアタシの方が都合が良いはずである。



最後にお金の話しになった、親父さんは売上の半分と言ったが、流石にそれは貰いすぎと言うか、儲けが無くなってしまうだろうからと言ってなんとか五%とした。


お金の受け渡しは商人になれれば、ギルドを通してどこでも入出金出来るそうだ。商人ギルドは銀行みたいな組織でもあるらしい。


冒険者が商人ギルドに加入できないことはないのだが、あまりいないらしい。

それは、身元保証人がいること、

計算の知識があること、

商売の知識があること、

最低でも金貨一枚を保証金としてギルドに預ける必要があり、年度毎に更新する必要があるので最低でも銀貨十二枚、年間金貨二枚を越える利益がでるなら十%をギルドに支払わなければならない。これは冒険者ギルドから支払われた分も含まれる。


その為、利益を自分の武器装備に使う冒険者は、商人ギルドにあまり加入していないらしい。



宿屋の親父は、当然商人ギルドに加入している。



どうやら、先程の会話だけで商人と計算の知識があることは分かったから、提案したと言うことだった。



やることが増えてしまった。



その後、商人ギルドに提出するギルドに加入しやすくする為の紹介状と、ギルドに見せる簡易レシピと親父に渡すレシピを書きあっていた。


そこに店の扉を開けて誰かがやって来た。


ここは宿屋だからとうぜん客だと思って、親父にまかせてアタシはもう少しで終わるレシピの続きを書いていた。


親父は静かに立ち上がったあと、微動だにしなかったが息を飲んだあと。


「マリー」と一言もらした。


「ただいま。帰ってきたわよ」

「私もいるよ」

二人の女性の声が聞こえる。


「エリーも一緒に?いやエリーが帰ってくることは聞いていたがマリーまでなぜ、しかも……」


最後は良く聞き取れなかったが、宿屋の親父は混乱を通り越してパニックになっているようだ。


それより『マリーとエリー』って奥さんと娘さんの名前だったよね。


「ななななな、なんでココに来ている?」


流石にそれは、パニクり過ぎだぞ、それではまるで浮気の現場に踏み込まれた、ろくでなしな男だぞ。


そこはクールに行かなきゃ立派なナンパ師になれないぞ。って違うか。


「帰ってきたからココにいるのだけど。迷惑だったかしら?」


マリーさんの言葉に、アタシは悪いことは何一つ無いのに、何故か背筋に緊張が走ってしまった。



まぁあのパニクった様子と、親父と知らない女が二人きりで顔を付き合わせて椅子に座っていたら疑わしいよね。


親父は、アワアワ言っているだけで役に立たない。


普通に感動の再開の場面なんだから、奥さんを抱き締めに行けばいいのに。


何が混乱させているのだろう?



振動感知で分かっていることは、店に入ってきたのは三人、店の入口の外に三人の計六人居ることだ。



奥さんと娘さんに疑われているのは間違いないから、そこから処理しよう。


アタシは立ち上がり、三人の顔を見て

「アタシは宿泊客でもありますが、冒険者『白い風』のマッキーと言います。今は仕事の件で打合せをしているところですが、急ぎの用事であるならば席を外しますが、どう致しましょうか?」


三人に自己紹介と今の状況を話し、最後はパニクり親父に向かって言ったつもり。


改めて三人を見ると、美人系と言うより可愛い系の年の離れた姉妹かと思うくらい若く見える親父の奥さんのマリーさんとそっくりな顔立ちのエリーさん。どこにも親父のパーツが無いのが問題と言ったら問題だけどそれは置いといて。


最後の一人は、おじいさん?


宿屋の親父もおじいさんを見て顔をひきつらせていたがアタシの横に来て、続きは後にしようと言ってきた。


それを聞いてアタシは片付けを始めたが、おじいさんに止められた。


仕事なら優先するべきだと、でも取り合えず部屋に案内してくれと言うことであった。



アタシを席に待たせて受付を行う。宿泊者は四人。マリーさんとエリーさんは、奥さんと娘だから宿泊客扱いではなく。おじいさんと外に居た三人が宿泊客である。


三人は見たことがあると思ったら、勇者パーティと追われていた少女であった。エリーさんも見たことがあると思っていたら、勇者を追いかけてきていた女の一人であったことを思い出した。


おじいさんは会話の節々で「義父さん」と聞こえるところから、奥さんの父のようだ。


そうすると、三世代親子の護衛に勇者パーティ(二人)が雇われて、麦畑で助けた少女が先程加わったと。だからあの時点ではハーレムパーティではなく、これからハーレムパーティが始まると言うことか。


ハーレムパーティって成り立つ物なのか興味はあるが所詮他人事、どうでもいい事である。


それよりも、目の前に座っている宿屋の親父の奥さんであるマリーさんの対応をどうしたら良いのか悩むマッキーであった。




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