食べ物探し(グロ注)
森に入る前に、おしりから細い糸を出して、道しるべの代わりとした。
糸をたどれば、帰ってこれるようにと。
そして周囲を警戒しつつ入った森に圧倒された。
森は命の宝庫。
たくさんの存在感、
動植物の伊吹を全身で感じたからである。
顕著なのは足下、足の踏み場も無いほど、ダンゴムシとミミズの存在を感知した。
「いや、だから、どうでも良いから」
そうつぶやきつつも、どうしても足下に意識をとられてしまい、うつむきながら進んでいると。
頭の上から、鳥の鳴き声が聞こえた。
見上げるとそこには、日本で良く見掛ける、
スズメくらいの鳥が周囲を警戒しつつ、
リンゴのような果実をついばんでいた。
足下ばかりに気をとられていた事に、反省しつつ。
鳥が食べられる果実なんだから、アタシも食べられるはず。
食べ物発見に心を踊らせ、木登り開始。
壁登りも楽に出来る身体なのであっという間に、果実のなっている枝に到着。
まだ青い果実をもぎ取り、お腹は空いていないが、味見だとばかりに、かじってみた。
見た目と変わらず、リンゴの味がした。
薄味の上、酸味が多いが食べられないことはない。
道しるべ用に、おしりからだしていた糸を樹にくくりつけ。
迷わず、ここに来れるようにした。
果実は二個ほど、もぎ取り、新たに出した糸で腰にくくりつけた。
その後、しばらく探索を続け、果実や木の実がなっている樹を数ヶ所みつけ、
その中からオレンジみたいな果実を二個ほどもぎ取り、
同じように、腰にくくりつけてから道しるべをたどり、洞窟に戻ることにした。
森を抜け洞窟が見える場所についた時に、アタシの人生観を根本的に変えてしまった、アイツがいた。
それは、まばらに生えている草を食べている巨大バッタだ。
バッタは、アタシに気が付かずに、草をモリモリ食べている。
その大きさに驚き、バッタを観察していたアタシは、とんでもない感想をつぶやいてしまった。
「美味しそう」
あれっ?と考える間もなく。
魂に刻まれた本能の疼きに突き動かされ、身体が勝手にバッタから背を向ける。
そして、四つん這いになり、おしりが付きだされる、股のあいだから顔を出すことになったアタシは、バッタを誘うような恥ずかしい体制に、内心あせりまくり。
でも、身体は勝手に動き、バッタに向けて、糸を大量に出した。
バッタは身体についた糸を嫌がり暴れるが、暴れれば暴れるほど、糸は絡み付き、バッタはすぐに動けなくなる。
真紀の身体は、四つん這いから立ち上がり手慣れた用に、糸を巻き取り、バッタを手繰り寄せた。
そして、口から消化液を出し、溶けたバッタの身体をすすった瞬間に、我にかえった。
抱えていたバッタを投げ捨て、洞窟にかけ戻り、繭玉に飛び込んだ。
真紀は自分が自分でなくなると言う恐怖から、身を守るように、膝を抱えて寝転がった。
襲いくる、さまざまな感情。
バッタを見て、美味しそうと思ってしまった感情。
恥ずかしい体制だけど、捕らえるためなら、無理のない体制だと思ってしまった感情。
糸に絡まるバッタを見て、狩りが成功したと喜んでしまった感情。
そして、溶けたバッタの身体をすすった瞬間に、やっぱり美味しいと思ってしまった感情。
気軽に『異世界転生ならアタシのチートは蜘蛛の能力』と考えていた自分の考えにあきれた。
糸を出せて、壁を登れるだなんて、芋虫にだって出来る。
壁歩きだけなら、出来ない虫の方が少数派だ。
そして、新たに考えてしまった、このまま蜘蛛その物になってしまうかもしれないと言う恐怖の感情。
様々な感情や考えの波に飲み込まれ、真紀はそのまま意識を失った。