表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/134

やり過ぎは誰にでもある

朝御飯を食べ終えてギルドへ向かったが、朝の事を考えると依頼を受ける気になれない。


そのまま通りすぎると、当然だが大広場にでた。


二百人程の守備兵達が訓練をしている。先日のオーク戦の反省からかお互いの攻撃を避けながらの戦闘訓練であった。


こういうところは流石に最前線の兵隊である。


弱点があれば克服する為に訓練にすぐ取り入れられる。これが王都とかではそうはいかないであろう。


冒険者は自分の売りである長所を活かせる戦場を依頼として選ぶことが出来るが、苦手な戦場は明白で更に突発に弱いというのが通例である。


アタシも、戦うなら遮蔽物の少ない場所を選ばざるを得ない。その基準は対オーク戦なので、ゴブリンやコボルト相手ならどこでも問題無いけれどね。


兵隊は自分で戦場を選べない為にどんな所でも戦える様に訓練する為、突出した強さは無いけど粘り強い。その強さは集団戦闘の時に一番発揮される。多分、兵隊百人と冒険者百人が衝突したら、初撃さえ耐えきれれば兵隊が勝つことになると言われている。


そんな兵隊も先日のオーク戦では耐えきれなかった為、撤退を余儀なくされた。


だが今やっている訓練が実を結べば、オークからの脅威は格段に減るだろう。


と思いつつ、訓練している脇を通りすぎようとしたら、声を掛けられた。


訓練中は私語厳禁だと思っていたのに、誰かと思えば。


討伐隊副隊長のマールさんであった。

慌てて姿勢を正して、過大な評価を頂いたことについてお礼を言い、後日挨拶に伺いますと伝えたのだが不要だと断られた。


兵隊は冒険者も含め、すべての人を魔物から守るのが仕事であると、その際に協力してくれた人達の評価を正当にするのは当たり前のことだと言うことであった。


偵察力、洞察力、魔力、気転、気配り、短い間ではあったが標準以上の能力があるのに星半分だなんてありえないから、そう言ったまでらしい。


面と向かって誉められるのは、恥ずかしいけど嬉しくて余計な事を言ってしまった。


「お礼の代わりに何か手伝いましょうか?」


何やら思案しているマールさんを見て『ここは普通なら断るところではないの?』と内心焦りながら後悔していると。


「『残像少女』じゃなくて『白い風』のマッキーさんの実力を見せて頂けませんか?」


なんかまた妙な二つ名を聞いたような気がするが、自分から言ってしまった手前断ることが出来ないので承知した。


具体的には、兵隊達の間を駆け抜けてくれれば良いとのこと。兵隊達には突破されないように捕まえる様、指示をするとのこと。



捕まえられなくても見るだけでも訓練になると言うことであった。


アタシは再び承知して号令を待つ。


兵隊達はマールさんの指示の元、少し不満そうだが陣形を取った。


いきなり現れた子供に、自分達を突破する指示を出したマールさんとやる気のアタシを見れば、嘗められたものだと思うのは仕方あるまい。


これはアタシにとって重要なカードの一枚ではあるが兵隊達の為では無く、この砦に住む人達を守る力の一つになる為に『残像少女』の実力を見せましょう。



マールさんが片手を挙げた。

陣形を整えた兵隊達が身構える。当然武器は持っていない。だが遊びみたいな訓練とは言え失敗は許されない。真剣な表情である。


アタシと兵隊達の距離は三十メートル程、一度見ていたとは言えアランさんやケニーさんは反応出来た距離だからアタシも集中力を高めて合図を待つ。


マールさんは始めの合図と共に手を振り下ろした。


アタシは高速反復横跳びをして、駆け抜けることが出来る隙間を探す。


高速反復横跳びの効果で、アタシが分身しているように見えてしまった兵隊達は動揺して、陣形が乱れた。


二百人居るとしても、横に二十人並べば、縦は十人程、ラグビーのスクラムのように肩を合わせて隙間無く組んでいる訳ではないので、陣形が乱れれば小さいアタシが抜ける隙間は沢山ある。


兵隊達の背後の壁が見えた瞬間、そこを最速の一歩を踏み出し駆け抜けた。


実際は一歩で抜けたので、正確には跳び抜けたのだけどね。


減速する為に滑走した跡を追うように砂埃が舞いアタシの視界を遮っていたが、一瞬後に吹いた風により散らされて兵隊達を見ることが出来た。


さっきまでの引き締まった真剣な表情はどこにもなく、顔の筋肉の力が抜けた虚ろな表情でアタシを眺めている。


知っていてやらせた上に、すべてが見えていたであろう、マールさんは顎の筋肉が無くなったかのように口を開けている。


やり過ぎたかしらと思い、マールさんにアイコンタクトをするが反応がない。


しかたなくマールさんのところまで普通に走って行き声を掛けた。


それで漸く我に返ったようだが反応が鈍い。


焦れったくなったので

「これで良かったでしょうか?」

と聞いたら、漸く完全復活したようで

「ありがとう。兵達に良い経験をさせることが出来た。感謝する」

と言うので。

アタシは片手を挙げてから

「では、この後も訓練頑張って下さいね」

と兵隊達に向かって言いながらお辞儀をした。


そして大急ぎで門に行き、門兵に開けてもらい砦の外に出た。



門の外に出たアタシは、マールさんの反応を省みて、やはりやり過ぎたと猛反省するしかなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ