ドキドキ 宿屋の親父からの告白
昨夜の内にジャムモドキのビンは空になった。一ビンなんてあっという間である。
最後にケニーさんが指をビンに突っ込んでなめて「姉御は凄い」と言っていたのが印象的であった。
ちなみにシロップは、原液をなめるとアウトだが、ほんの少量をお茶に混ぜるとエグ味が気にならなくなり甘くて美味しい。癖になりそう。糖分を取ると脳の働きが活発になることは、元の世界なら当たり前の常識だ。
もちろん取りすぎは良くないけどね。
翌朝、いつも通り朝の体操をしながら、今日は昨日の事を忘れてギルドの依頼を受けにいこうと考えていると、親父が声を描けてきた。
朝御飯が出来たと思って食堂に行くと。
確かに朝御飯が準備されていたが、親父付きである。普段ならさっさと厨房に戻ってしまうのになんだろう?
何やら思い詰めた表情を浮かべている親父を見ていると、元の世界での、告白前の男子を見ているようだ。
当時もガリチビであったアタシに告白だなんて疑わしくもあったが、ドキドキしながら話し出すのを待っていた。
結果は妹の振りしてプールに行ったグラマーな友達にラブレターを渡して欲しいだった。
直接渡せば良いのにと思いつつ伝書鳩になったが、そんな根性無しは予想通り振られたようだ。
その後はアタシを見かければ愚痴を言う。
しつこく絡んでくる男子が鬱陶しくなりそれ以後は男子に関わらなくなった。
その後は両親が亡くなり、生きるために働き続けた人生は、チャンスはあったと思うがアタシが向き合わなかった事もあるので、まったく男っ気無し。
気がつけばアラフォーとなっていたが、何故か若返ってこの世界に居る。
実年齢で言えば、アタシは四十歳、宿屋の親父は見た目から、五十歳にはなっていないと思う。
そうなると釣り合っているとも考えられるが、この世界のアタシは十二歳設定だ。
告白してきたらロリ○ン決定だぞ。さぁどうなんだ。
妄想が膨らみすぎて暴走しそうになった時に、親父は話しを切り出した。
結果、まさかのロリ○ン親父が発覚した。
だか、妄想とは違って至ってまともなロリ○ンではあったが。
宿屋の親父は、なんとアタシより年下でした。
とは言っても一つしか変わらないけどね。
親父は十八歳の時に十五歳の嫁を貰ったそうだ。
いくら親父が十八歳とは言え、十五歳の嫁さんて異世界とは言え中○生ですよ。ロリ○ン認定して良いよね?
子供は三人居て、男男女だそうだ。
長男は十五歳になった日に料理人になると言って、この国の王都に修行に行った。
次男は冒険者になると言って、ブラン砦からも旅立ち消息不明。
長女は怪我をした親父の奥さんと実家にいる。
って、奥さん生きていたんだ。妄想が暴走しなくて良かったわ。
奥さんの名前はマリーで、長女の名前はエリーである。
マリーさんが怪我をしたのは、冒険者ギルドから依頼を受注した砦の南に広がっている畑の手入れに来ていた時である。
その日は朝から良い天気で手入れ作業は捗った。
昼飯を食べて、午後からの作業に入ろうとした時に、それは起こった。
いきなりゴブリンの集団が現れたのである。
集団ではあったが、こちらも農家の依頼で来ているだけで冒険者の端くれがまざった集団である。
手に武器を取り戦える人達がみんな退治に向かった。
マリーさんも戦えるが長女のエリーと一緒に手入れの依頼を受けてきていたので、ほっとく訳にもいかず畑に残った。
マリーさん親子と戦えない人達は、周囲に散らばり畑の手入れを続けていた。
暫くするとゴブリンを退治しおえた戦える人達の姿が見えてたので一安心しているところで。
オークが現れたのである。
はぐれのオークだったので一頭だけであったが、オークと戦うには実力のある冒険者が最低でも三人は必要だ。でも戦える人達がここまで戻ってくるにはもう暫くの時間が必要となる。
普通なら逃げの一手なのだが、オークが現れた位置が悪かった。
エリーが草抜きをしている場所のすぐ近くである。
その事に気が付いたマリーさんは走った。
エリーはオークの姿を見て恐怖に囚われたのか、身動き一つしない。
オークが持つこん棒がエリーを打ちつけるかに見えた瞬間、ギリギリ間に合ったマリーさんがエリーを突き飛ばした。
オークの一撃目は空振りさせる事が出来たが、突き飛ばすことによって体勢が崩れているマリーさんには二撃目をどうにかすることは出来なかった。
かろうじて腕でガード出来たが、そのまま吹き飛ばされた。その間にエリーは逃げることが出来たが、オークの三撃目が倒れているマリーさんの右足を潰した。痛みで動けないでいるマリーさんは止めをさされるだけであった。
だが止めの四撃目はなかった、それは戦える人達が間に合ったからである。
オークは退治されたが、マリーさんは重態。
回復薬や聖水での治療を施されたが、完全回復とはならずに命を取り止めただけであった。
歩くことも儘ならないのに、働き者のマリーさんは宿の手伝いをしようと無茶をする。
それを見かねた宿屋の親父は、自分のせいでお母さんが大怪我をしたと引き込もってしまったエリーとマリーさんを、しっかり休ませようと実家に送った。
それから宿屋の売上の一部を毎月実家に送り続けていたところ、十六歳になり精神的にも回復したエリーがお母さんの為にも働きたいと、戻ってくることになった。
マリーさんの治療費を捻出する為に、宿屋の親父の生活はカツカツである。
宿代を上げれば良いとも思えるが、ここには冒険者用とは言え格安の施設がある。宿代を上げれば宿泊客が居なくなる。
対象を代えて高級宿にしようにも、リフォームする為の先立つ物がない。
そんなカツカツな宿に、娘が来てもまともに給料を支払うことが出来ない。
ここでやっと思い詰めた表情に繋がるのだが。
エリーにジャムモドキの作り方を教えて欲しいと、更に宿で販売させて貰えないかと言うことであった。
アタシは自分の考えを伝えようと口を開きかけたが、宿泊している冒険者達が降りてきたので
「疑問なことが色々あるので、続きは昼過ぎにでもしましょう」
と宿屋の親父を厨房に戻した。
すっかり冷めた朝食のスープは、親父がすぐ交換してくれたので、美味しく頂けたが
さて、どうしたものかねぇ。
宿屋の親父の悩み事を聴かされてしまい考え悩むマッキーであった。




