戦場のホタル
オークが来たとの一報を受けて、慌てて防具を装備しはじめる冒険者はいない。
何故なら、冒険者達は寝るときも常に防具を装備しているからだ。
アタシ達は、寝る準備だけで横にもなっていなかったので、傍らにおいてある武器を手にし、テントから飛び出した。
オークは何処から来ている?と思い周囲を見渡していたが。
戦闘の気配が無い。
あれ?と思って、オークが来たと言っている砦兵のところに行き状況を聞いてみると。
未帰還だった三パーティの一部が帰って来たのだが、多数のオークに追われての帰還になっているとのこと。
この戻ってきていない三パーティはソロやコンビ、トリオ等の少人数パーティの集まりである。
少人数だけあって個人の能力が高い上に我が強い人が多いから、誰も他のパーティの下に着きたくないと、ひともめあったらしい。
仕方なくギルドが強権をふるって仮リーダーを割り振ったのだが、内部的にはバラバラだ。
そんな統率の無いパーティであった為、数人が調子に乗り深入りしてしまった。
そのせいで、五十頭以上のオークの集団に見つかり追われることになってしまった。
比較的後方にいた、足の早いソロパーティが野営地に先に着き、救援を求めたところだと言うことらしい。
戦力の逐次投入は避けたいところであったが、緊急性も高く、冒険者の利益に繋がることなので準備が出来たパーティからバラバラにむかって貰っていると言っている。
通りで、振動感知にオークの反応が無いはずだ。
いくら人が密集していると言っても、オークの反応ぐらい感知出来ると思っていたのに、
オークが来たと言われてからの行動になってしまったので
アタシはイラナイ子になるのではと内心焦っていたのだが
野営地近辺に厳密にはオークは来ていない。
人が密集していると振動感知が効きづらいのかと心配したが、そんな事は無さそうだ。
その場で反応を確認すると、円を描くように配置されていた冒険者達が、西側を中心に居なくなっていた。
そして次々に、北西にむかう冒険者達の反応がある。
アタシは自分の考えをまとめる。
オークの集団にどれだけ強化個体が居るか分からないのと、乱戦みたいな戦いになるとアタシの場合攻撃後に、滑走距離が必要になるので大きな隙になってしまう、出来ればアタシは行きたくないな。
アランさんはどうするつもりかな?こう言う時は、聞かれれば先程の事を言うが、クランとしての行動を決めるのはリーダーのアランさんだ。アランさんの考えがまとまったのか、おもむろに口を開いて
「俺達は……」
アタシ達は、オークとの戦場から離れた地点で、待機している。
戦場では七つの冒険者パーティ五十人程度が戦っている。
普通のオークなら百頭居たとしても余裕で討伐することが出来る人数だ。
アタシ達は消極的だが、戦場を突破したオークを相手にしようと言うことにしたのだ。
まるでハイエナだが、騒ぎの元の三パーティは、負傷者が多く野営地で治療中。一パーティは野営地で待機している。
砦兵達も居るので野営地の守護は十分だ。
そんなこともあって、アタシ達は中間位置に来ることにしたのだ。
この位置なら一撃離脱が唯一の攻撃方法のアタシも戦力になれるから問題無しである。
戦場は明るく、その中で光が揺れている。夜間戦闘用に光の魔道具が使われているからだ。
冒険者としては当たり前の道具なので、アランさん達、四人は当然のように、光の魔石付きの魔道具を肩パットの上に取り付けて視界を確保していた。
アタシは夜目が利くので持っていないと言うと、驚き半分、納得半分と言うような顔をしていた。
光の魔道具は持っていないが、いざとなれば明かりを確保することは出来る。
ご想像通りの光魔法である。もれなくホタルになることが出来ると言う、すばらしい特典付きが泣けてくる。
恥ずかしいから誰にも話していないし、出来れば使いたくない魔法の一つでもある。
地面に座って振動感知をしているが、戦闘を抜けてくるオークは今のところいない。
みな緊張しながら戦場を見つめつつ警戒しているので、無口になっている。
時折、強い光が飛んでいく、火の玉魔術の光だろう。
戦場に入り込んでしまい、慌てて右往左往するホタルの様だ。
今夜は長くなりそうな予感を感じつつ、アタシも戦場を見つめていた。




