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新しい能力

真ん中を川のように水が流れ出る、洞窟の壁際に、

白い繭玉(まゆだま)が、ゆさゆさと揺れている。


しばらく、揺れていたが、唐突に靴下を履いた足が一本出てきた。


すぐに二本目が出てきて、おしりが出てきて、そうこうするうちに、真紀が現れた。



「出られて、よかったわ」


目が覚めたら、どこ見ても、真っ白なんだもん。

びっくりしたわ。


たしかアタシは、地面がゴツゴツしているから綿糸を敷いて、その上で寝ていたはずなのに。



目が覚めて、起き上がろうとしたら、天井?に頭ぶつけるし、左右にも壁?があるから、あまり腕も動かせないし


どうなってるのと足も使って暴れていたら、脆いところがあったみたいで、

偶然にも、足が外に出せたの。



これ以上、変なことは、勘弁してよね。


と、思い、辺りを見渡せば、艶やかな黒い岩肌はなく、

どこでも普通に見かける様な岩肌、更には水のせせらぎがある。


いたって普通の心地よい風景。


寝る前と起きた後との違いに、思わず頭を抱えた真紀であったが、

心地よい風景を台無しにする物体が目に入った為、

思わず身構える。




それは、バラバラの虫。

長い後ろ足と思われるものや、羽の感じから、

ものすごく大きい虫だと考えられる。




心地よい風景を見て、もしかしたら日本に帰れたのかもと、膨らんだ期待は、しぼんで儚く消え去った。



と、同時に恐怖心が芽生えた。


大きい虫も怖いけど、その大きい虫を食べる存在が、この場に居たこと。



ここは決して安全な場所ではないと、気がついたからだ。



周囲を見回したが、今は近くに何も居ないようだ。


自分を襲うような生き物が近寄ってくる振動も感じない。



振動?



疑問に思った真紀であったが、次の瞬間に理解した。


蜘蛛の本能。


誰にも教わっていないのに、

八本足を絡ませずに歩き、糸イボから糸を出し、風に乗って空を飛び、

同じ形の罠をはり、獲物を捕らえて食べる食べ方。


長い長い間、蓄積し、進化していった

どの蜘蛛も知っている当たり前の、本能と言う魂に刻まれた記憶の一部が、真紀の記憶に流れ込んだ。



蜘蛛は本来、対象を目で見て判断している訳ではないのである。


判断の基準は振動。


地面から伝わる振動を、八本の足や身体中を覆う毛で受信し、

対象の大きさ、進んでいる方向を識別しているのである。


意識を集中しなくとも、足の裏から伝わる振動だけで

近くを小川が流れている為、その大いなる振動により、分かりづらいが、

周囲五メートル程の範囲に居る、アリやダンゴムシの様な小さい生き物の動く振動を

確かに感じとることが出来た。



意識し始めると、そこいらに居る、大量の虫の振動を感じ取れた。



目に見えていないから、まだましだけど、こんなに判ると、ちょっと気持ち悪いな。



でも面白い。


あの石の下に、三つほどの、反応あり。

あそこは、集まっているなぁ、十個も反応がある。



「どれっ、合っているかな?」



答え合わせをしようと、石をどかしてみる。


ダンゴムシ 五匹、ミミズ 三匹、 ゲジゲシ 二匹。


合計十匹で、正解だね。



意気揚々としている真紀だったが、新たな能力が判明した。



今まで、動いているものがあるな、くらいしか分からなかったが、動く生き物達を直接見た瞬間に、

振動で生き物を特定出来るようになったのである。



それに気がついた時には、当然、見てしまったあと。



周囲にダンゴムシ、ミミズ、ゲジゲシが、それぞれ何匹いるか把握できてしまった。


幸いにも、小さな生き物は、振動も微弱なので、意識しても数十センチの範囲程度しか把握出来ないが。



迂闊に座れば、おしりの下に、ダンゴムシが何匹居るのか分かってしまうのは、精神衛生的にきついことである。


せっかくの能力だが、

今の真紀には、不要に感じた。


範囲、五メートルの索的能力。

……目で見渡せば、もっと遠くもわかるよね。



範囲、数十センチのダンゴムシやミミズやゲジゲジの数。

……どうでも良いことだよね。




興味を失った真紀は、新しい能力のことは、ほっといて、これからどうするか考え始めたのであった。





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