脳震盪は気持ちよい?
変なことを考えていたせいなのか。祈りは届かなかったようだ。
戦闘の振動は続いているのに共闘パーテイの剣士二人が森から弾き出される様に吹き飛ばされて出てきた。
遠目で見ても判る。頭が潰されていて生きているわけがない。
アランさんとケニーさん、共闘パーテイの剣士一人が、森から押し出されるように出てきた。
その後、全身血だらけだが、闘志の衰えていないオーク一頭が森から出てきた。
どうやら、共闘パーテイの剣士三人と引き換えにオーク一頭を倒したようだ。
アランさんの指示の元、魔術師達が再び火の玉を打ち出した。
直撃してオークは火に包まれたが、それだけだった。
以前見た事のあるシーンと同じだ。
まさかと思った時には、オークは魔術師達に突っ込んでいき、三人は避けることが出来たようだが、一人をはね飛ばした。
宙に浮いていたのが、ジェニファーさんと理解した時、身体が勝手に動き出した。
アタシが潜んでいた場所から戦場まで百メートル少々。
草原なので、障害物はほとんどない。
気を込めた最速の一歩を踏み出し、わずか三歩でオークにたどり着き、そのままの勢いで気をまとわせたホウキを振りきった。
手応えあり。
アタシは勢い殺しきれないまま、五十メートル先まで滑走してしまったが、横目でみるとオークの動きは止まったようだ。
すぐに反転して、倒れて動かないでいるジェニファーさんの状態を確かめたら。どうやら体当りの衝撃で気絶しているだけのようだ。
念の為にと思い。ジェニファーさんの頭を包帯で巻いてみると薄く光って消えた。もう一度巻くが、今度は消えない。
これできっと問題は無いだろうと判断して振り返ってオークを見ると。まだそこに立っていた。
剣士三人と魔術師三人は、オークに対して身構えていて、こちらを見ていない。
どうやら包帯治療はオークに気を取られている上、アタシが影になっていたので、見られていないようだ。
その間も動かないオークに、アランさんの支持で魔術師三人が火の玉を放つと、オークは燃え上がり黒焦げになって倒れた。
簡単に黒焦げになったオークを見て呆けていたがケニーさんがいち早く我に返り「ジェニー」と愛称を叫びながら走りよってきた。
あまりに必死な形相に、気絶しているだけだよ。と声もかけられずにいたら泣き叫びながらジェニファーさんを力強く抱き締めて揺さぶっていた。
慌てて揺さぶりを止めさせて、状態を教える。
ケニーさんは、あからさまに安堵の表情を浮かべてジェニファーさんを、今度は優しく抱きしめ直していた。
アランさんと共闘パーテイの剣士は、その間に森の中に入っていき、三人の遺品を回収してきた。
話を聞くと、生き残りの剣士はカーチスさんと言いパーテイ名オークバスターのバックアタッカーだと言う。
火の玉の魔術を打ち込んだ後、二頭のオークにパーテイ単位で斬りかかったが、噂の強化個体だったらしく、普通に斬りつけたくらいでは攻撃が通らない。
森の中なので大振りが出来ないこともあって、少しずつでもダメージを蓄積させる戦闘に切り替える事にしたと、
青い閃光組は一撃離脱を交互に繰り返すことで、出血を強いていく方法をとり、
オークバスター組は前衛二人がオークの攻撃をしのぎ、隙を見てロングソード持ちのパーテイリーダーとカーチスさんがダメージを稼ぐ方法を取った。
その戦術には優劣はつかないが、オークバスターの前衛の一人が、木の根っこに足を取られてしまった。それが大きな隙となってしまい。オークのコンボウの一撃を頭にまともに受けて吹き飛ばされてしまった。
仲間が殺られた事により、動揺してしまったもう一人の前衛が大きな隙を見せてしまい、それをフォローしようとリーダーが必殺の突きを放った。
リーダーの突きは見事にオークの胸を捕らえて貫通させたが、変わりに脳天に一撃をまともに受けその場に崩れ落ちた。
オークはまだ死なずに胸にロングソードを刺したまま回転してきた。
前衛は胸に刺さったロングソードの握りに気付かず顔面に直撃、次に横殴りのコンボウで吹き飛ばされていったところでオークは力尽きそのまま倒れた。
カーチスさんは、流れを掴んでいるアランさん達を邪魔しないように、斬りかからずに牽制を行っていた。
だがアランさん達も常に全力で動き続けていた為、疲労し始めてきてしまった。
聖水による体力回復をするために、森から一旦離脱したが、間髪入れずにオークもすぐ出てきてしまい。時間稼ぎの魔術攻撃をしたと言うことだ。
後はアタシも見たので解るよと、アランさんに言って話を終わらすと。
カーチスさんが、アタシにオークに何をしたのかと聞いてきたので、ホウキで叩いただけだよと、厳密には違うけど言っておいた。
実際、手応えを感じていたのでたぶん、オークの頭を輪切りに出来たと思うけど、火の玉の魔術で頭は完全に焼けてしまったから良く分からなかったりする。
ホウキで叩いただけで、オークが立ち尽くすのは納得いって無さそうだったので、脳震盪でも起こしたのじゃないかなと追加しておいた。
「「脳震盪?」」
そしたらアランさんまで知らないと言う。
えっと。殴りあいの喧嘩で顔面にパンチをうけた時に頭がくらくらしたことがあるでしょって言ったら納得していた。
それでも、くらくらするだけで棒立ちになるのは、おかしいとカーチスさんが言い張るので、実践してあげた。
アゴ先をかする高速パンチ。それを見て引いていたアランさんに何秒で返ってくるか数えてもらい。
きっかり二十秒後にカーチスさんが返ってきた。
アランさんから立ったまま二十秒くらい気絶していたぞと伝えられて納得していたけど。どうやらその間は気持ちよかったようだ。さっきボソッと呟いていたもの。
と言うことで、アタシはここに居なかったし、何もしていないと、外出禁止の砦からこっそり抜け出してきた事を正直に伝えて、内緒にしてもらった。
アランさんも外出禁止の事は忘れていたらしく。カーチスさんと共に引いていた。
そんなみんなに別れを告げて、真紀は先に砦に戻ることにしたが、去り際に、ケニーさんに支えられたジェニファーさんから感謝されたのが嬉しかった。




