奪われた者
前にも、自己紹介したけど、僕は人間に蜘蛛とかスパイダーとか言われている生き物です。
名前はないですから悪しからずです。
真紀は僕のことを知らないけど、僕は真紀の事をいっぱい知っているです。
だって、真紀の記憶を共有しているからです。
あの時、真紀の口に放り込まれた瞬間。
僕は、楽園を作る前に、食べられてしまうなんて、残念だなと思いつつも、弱肉強食だから、仕方がないと諦めていたです。
そしたら、白く光ったと感じたら、ここに居たです。
初めは、真紀の胃の中かと思ったです。
でも、すぐに違うことに気がついたです。
僕には身体がなかったからです。
真紀の記憶で言う、魂と言われる状態だったです。
そんな事を認識する間もなく、僕の身体の構成?作り方?
良くわからないけど、設計図と真紀に記憶されている図が浮かび上がってきたです。
そしたら、次に真紀の設計図も浮かび上がってきて、融合したです。
どんな風に融合したのかわからないです。
でも基本は、より複雑な構成を持つ、真紀の身体になったみたいです。
そしてここにある黒い岩が、一斉に白く光ったと感じたら、今の真紀の身体があったです。
僕は、真紀の身体に吸い込まれたです。
真紀の身体なのに、僕の身体も感じられて安心したです。
次の瞬間。
真紀の記憶が流れ込んできたです。
産まれてから四十年以上の記憶です。
さて、問題です。
魂は間違いなく僕のです。
そこに、注がれた産まれたばかりの僕の記憶と、
膨大な量の真紀の記憶。
僕のちっぽけな記憶は、膨大な量の真紀の記憶に押し潰されて、片隅に追いやられてしまいました。
今では、考え方も、行動も真紀の記憶通りです。
僕は僕なのか、それとも僕はアタシなのか、どちらでしょうか?です。
真紀の記憶は、今日行動した記憶を整理する為、休息に入ったから、
今なら僕の意思(記憶)で真紀の身体を動かせるです。
真紀の記憶が混ざった僕なので、厳密には、もう僕とは言えないけどです。
真紀と僕の記憶が混ざりきって、僕と言う意志が消えてしまう前に、
したいことがあるのです。
僕、産まれてから何も食べていないです。
自分の力で狩りをして、お腹いっぱい食べてみたいです。
そう考えていると、真紀の身体のお腹がぐぅとなった。
「お腹がすいたです。」




